第10話 交渉1

ブルーカイザルト商会。総従業員数は優に5000人を超え、農業はもちろん、海運業でも世界トップクラスの規模を誇る商会である。ブルーカイザルト商会総支配人である、パルメザン・ガルムドは、自分が”情報分析"という、情報に長けたスキルを持つだけあり、彼自身が何よりも情報を大切にしており、各国に支部を設立、そこに情報員をつけ、世界情勢に関しての情報を伝えさせていた。そんなある日、ガルムドの手元にとある資料が送られてきた。そこには今から3日前の日付と、情報が刻み込まれていた。内容はシンプルてあった。

・何者かがシャルアイル平野にて、鉄を生産し

ている模様。引き続き監視を続ける。

とのことだった。ガルムドは資料を見ながら目を丸くして驚いていた。

(シャルアイル平野だと!?あそこは不毛の土地、死の土地として恐れられているのにも関わらず、そこで事業をたてたものがおるのか!?それも鉄だと!?そんなものが取れるのか?そんなことよりも、ただでさえ鉄は貴重なのだぞ!?一体何を考えておるのだ。)

と内心動揺しているが、持ち前の冷静さと、賢さをフル活用し、

(ここは、相手に仕掛けるか、それとも相手が仕掛けて来るのを待つかだ。なぜなら、うちの商会は世界各国にお客様がいらっしゃる。ひとつ商会ができたからと言ってそう簡単には潰れん。しかし....)

ガルムドは手元の資料を再度見た。

(”鉄”という言葉に引っかかる。あそこには鉄の反応どころか、生物の反応もなかった。周りの環境が環境だからな。しかし、こいつは見事、”鉄"を掘り出しおった。どの様な手品を使ったかは、知らないが……)

ガルムドは窓の外を見ながらこう呟いた。

「警戒はしておかねば…」

と。


カーン カーン

と忙しなく鉄を打つ甲高い音が響いていた。今は新たに掘った、採掘場及び製鉄所を視察していた。いつもは影中、皆のことを視察していたが、今日は堂々と視察できる。なぜなら…

「旦那!!お疲れ様です!!」

と言うと、みんなが作業を中断し、

「「あ疲れ様です!!!!!」」

と礼までしてくれるのである。作業を中断してもらうのは申し訳ないし、わざわざ出るまでもないと思って陰でコソコソ観て板が、それがアリスに見つかり、

「亭主は堂々としていなきゃ行けません!!」

と怒られたので今に至る。

「旦那!!今日の採掘量です。」

とここの隊長が報告書を渡しに来てくれた。隊長というのは、ひとつの採掘場及び製鉄所に隊長という役職を設置することで、管理もしやすくなるし、報告書を隊長に書いてもらうことで、採掘量が目で見てわかるようになり、いちいち面倒な報告も紙1枚で済むという、俺の仕事場革命の賜物である。俺はお礼を言いつつ、報告書を読む。相変わらず、採掘量と精錬量が向こうの世界と全く違った。なぜかって?1日鉄が900トンから1100トン取れる、という、オーストラリアもびっくりな生産性であり、まだ鉄の原石が底をつくことも無さそうだととのこと。いつか、埋蔵量を調べてみたいなと思った。

鉄の貯蔵について話そう。これだけの鉄を掘って精錬して、保管するとなると、広大な倉庫が必要となり各採掘場が貯蔵するには量に限りがあるのだ。かと言って生産を止めるとなると仕事が無くなる。鉄は重要なので掘れるだけ掘っておきたい。ということは早急になんとかして鉄を貯蔵できる施設を建てなければならなかった。そこで登場するのが鉄骨とコンクリートで作る倉庫だ。イメージとしては、港に鎮座する倉庫だ。この倉庫はひとつ作ってしまえば後はコピペでどんどん作って行くだけなのだが、こっちの倉庫は木製か石製であり、鉄骨なんて作ったこともない。最初の倉庫は創っても時間がかかるだけで問題はない。しかし、俺は色々と準備をしないといけないのでそこまで暇がない。そこで登場したのは、アリスと10人の騎士たちが連れて来た、バンパイアの一族だった。聞く話によると、バンパイアは強さは単体だけでは、パッとしないとの事。しかし、長生きで、それプラス長生きという、超エリート集団だった。この人たちは全員が女性で、みんな整った顔立ちをしていた。すると、朱色の髪の美少女が俺に顔を近付けて、

「へぇ〜。あなたがあのアリスを手なずけている人ねぇ。」

と俺をジロジロと見回して、

「私はバイオレット・スカーレット。誇り高き、スカーレット家第109代家長にして、最も魔力が強い者よ。」

と話した。アリス曰くこの女性はバンパイアの中では最強クラスの実力者だという。しかし、暇を持て余しているとの事。それプラス頭が良く、魔法学から経営学、更にはこっちの世界の科学的存在である魔導神学にまで精通している、今最も求めていた存在だった。しかし、アリスに1度敗北しているとの事。だからアリスについて来たのか。納得である。




その後バイオレットが仲間に入って、色々な物や、俺の向こうの知識を色々と教えたりした。

「すごいは!!こんなもの見たことない!!もっと教えて!!あなたの知識全部!!!!!」

と目を輝かせながら、すごい勢いで迫って来た。

「お、落ち着いてください。」

俺はずっと考えていたあることを提案した。

「バイオレットさんには、"あるモノ”を作って貰いたいんです。もちろん材料はこちらで用意しますし、原理もお教えしますので。」

と俺は提案した。そのあるものとは、物流の要、運送に革命をもたらした、"蒸気機関車"である。これさえ完成してすれば、鉄をせっせとゴーレムを作って運ばせるという非効率なことをしなくて良くなる。さぁ、反応は…。俺はバイオレットの様子を見てみた。

「ね、」

ね?

「願ってもないことよ!!!!!」

おう。すごい元気いっぱい。勢いがすごい。

「で、どんなものなの?早速教えて!!仲間にも共有して…」

と盛り上がっていた。しかし俺は、

「出来れば、使う人材は2人までにして貰えませんか?」

と言った。なぜかというと、簡単に言ってしまえば情報漏洩の防止だ。一応の用心だ。

「分かったは。それでいいから私にまかせてくれない?だけど、他に連れてきた子達はどうするの?1人1人が力になるわよ?」

と言われたので、俺は今考えていることを話した。

「他の人達には倉庫を作って欲しいんです。もう、一つ作ってあるからそれを真似て作って欲しいという感じでお願いします。後は、交渉の手伝いです。そろそろ商人の方々との交渉も始めたいので…」

と話した。

「いいわ。面白そうじゃない。私たち一同あなたの事を全力で支えるは!!」

と言ってくれた。これで基盤は整った。俺はバイオレットのことを手伝いつつ、交渉の準備を整えていくのであった。

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