第6話 王国へ2

「本当に…アリスは死んだのか?」

アルバニア王国女王エル・セルム・アルバニアは絶望していた。なぜなら自分が最も信頼していた騎士アリス・ダイアナが殺されたという報告を受けたからですある。女王にとってアリスは家族やどんな重臣よりも信頼出来るものとして、常に隣にいた存在であった。

「女王陛下、お気持ちは分かりますが今は早急に次の騎士団長を決めなくてはなりません。」

1人の白い髭が目立つ家臣がそう発言したとき、

「そのお役目、私めにおまかせくださいませ。女王陛下。」

と、扉の向こうから来たこの男、経済大臣リュボラ・ヘルツは名家の出でよく頭が切れるものとして、1目を置かれている存在であった。

「リュボラ、お前は経済大臣も務めている身。両役職、さすがのお前も兼任はできまい。」

と1人の男の発現に対し、

「皆様お忘れですかな。わたしは元々騎士としてこの国を守ってきた存在。私が今最もふさわしい男であることは誰でもわかるでしょう?」

とリュボラは不敵な笑みを浮かべながら言った。

(これで私がこの国の生命線を担う騎士団長となれば、この国の転覆など容易くなる。これまであの邪魔な小娘に何度も私の国家転覆計画を邪魔されてきた。これで我が家はこの国のトップの地位を獲得することができる。そうすれば、あの女性に成り代わりこの国の王として君臨することが出来る。そうすればあのお方も…)

などを考えながら、女王を説得していると、

「もう良い。リュボラ、お前がやれ」

と女王自らの指名によりリュボラが騎士団団長として就任した。

(ふっ。案外簡単にいくものだ。そう少し手間取ると思ったが……まぁいい。簡単に地位が手に入るのだったら好都合。後はあの方のご命令通りに動けば……)

とリュボラはますます不敵な笑みを浮かべながら、

「はっ、私リュボラ・ヘルツが謹んでお受け致します。」

(あの女王はアリスの死により精神を病んでいる。あの状態ならばこっちが手をかけなくても勝手に死んでいくかもな。)

こうしてリュボラは目的のため、動き出すのだった。


「はぇ〜。こんなところに街道があったなんて。」

俺はアリスの案内によりアルバニア王国への直通の街道”シャンドレア街道”を進んでいた。

「はい。ここは初代アルバニア王国国王陛下が敵国へ進軍するため作らせたと言われている街道です。ここからは馬車で移動しましょう。」

そう言うとアリスは部下に命令を出した。部下の騎士たちは、呪文のようなものを口に出しながら目を瞑り始めた。すると、周りにあった枝が1箇所に集まり始め、あっという間に馬車ができた。

「どうですか?」

自慢げに胸を張っているアリス。やっていた部下たちも息を切らしながら自慢げにこちらを見た。いや、すごい。スゴすぎ。俺はスキルがあるから創り出すことが出来るがこの子達は、魔法で創り出した。本当にすごい。

「凄いです!感動しました。」

と目を輝かしている俺をみてさらに自慢げに、

「これは馬ではなくゴーレムで動かすんですよ。」

と話した。


馬車に乗り込んだ俺らは、ゴーレムが牽引する馬車で王都へ出発した。アリスの話しによると。ゴーレムは疲れ知らずで簡単に作れるため。馬よりも有能だそうだ。しかし、素早さは皆無なのでその点は馬の方が勝っているのだそう。

「マサトさんはなぜ王都へ?職探しですか?」

確かに。人がいるため、いつでも触手につけるためとかいう理由でこの人たちに同行しているが具体的になにかになりたいとかいうことが無い。

「王都ではどんな職業が多いのですか?」

と俺が情報収集のためにアリスに聞いた。

「そうですね…やはり私たちのような騎士が多いですかね。私の一族も代々騎士でした。グルモア。あなたのご両親の職業は。」

とアリスは前方で警戒に当たっていた、黒髪の美女に聞いた。

「はい。私の実家は農家でした。季節に合わせて色々な食べ物を育てていました。」

と笑顔で語った。農家か確かに良さそうだがライバルが多い。

「マサトさんはなにか以前のいた国で職についていたんですか?あの戦闘スキルの高さなんでやはり騎士でしょうか。」

と聞かれたので、俺は、

「貿易会社に勤めていました。」

と言った。こっちの世界にもあるだろうと思ったから、ここは正直に答えた。

「まぁ、商人の方だったのですね。」

とアリスが言った。そこで俺はビビっときた。そうか商人か。悪くない。こっちの文明レベルは、アリスたちの雰囲気を見て中世前期ほど。つまり、俺が持っているスキルと知識をフル活用すればいい成功出来るかもしれないな。となると、他の商人達ができないようなことをすれば国のお偉いさんたちに引っ張られて国のお抱え商人として成功出来るかもしれない。ただそれには伝が居ないと。王国のお偉いさんたちとの伝が…とアリスの方をちらりと見た。そうかありすがいるではないか。王国騎士団団長殿が、そこからどうにか話をつけてくれないだろうか。とアリスをじっと見つめながら考えていると頬を赤らめたアリスが、

「あ、あのなにかありましたか?」

と恥ずかしそうに聞いてきた。

「いや。実は私は国のお抱え商人なのですよ。今回出張としてアルバニア王国に商会を作ろうと向かっていた最中でして…」

今考えたデタラメにしては筋がしっかりと通っている。これはもらっただろと思っていると、

「まぁ。そうでしたの。でしたら私が経済大臣に話を通しておきます。」

おぉ〜。想像以上に上手くいった。思わず心の中でガッツポーズをしてしまった。


「マサト様、アリス様。見えてきました。」

とグルモアが言ってきた。指の方向を見てみると、20mほどの城壁が見えた。

「ようこそ、マサトさん。あれがアルバニア王国へ。」

圧巻だった。アリスの顔パスで厚さ1mほどの鉄の扉が開いた。そこには、綺麗に敷かれた石畳の道と高さが均等な建物、そこの先には、全然で見たベルサイユ宮殿を思わせる建物が構えていた。

「わ私もあそこへ?」

俺が恐る恐る聞くと、

「はい。もちろん。私達の命の恩人であるあなたを一度女王様にご紹介致します。そうすればこの国での自由な商いが出来る許可を直々にくださるかもしれません。」

にこっと笑顔でそう語るが、今になって緊張してきた大丈夫だろうか。


宮殿の前まで着くと、1人のの女性が大勢の兵をゾロゾロ引き連れてやってきた。誰だろうと見ていると。騎士は全員跪いた。

「アリスーーー!!!!!!」

とアリスに飛びかかる女性。するとアリスが、

「ただいま戻りました。女王陛下。」

と言っていたので俺は悟った。この国女性こそこの国の王なのだと。


(ま、まずい。)

経済大臣であるリュボラは絶望していた。なぜなら死んだと報告を受けた、騎士団長が生きて帰ってきたのだ。

(クソ。あの女を始末するためわざわざダンジョン変動を引き起こしたというのに……)

と頭を抱えた。

(あの方からのご命令通りにしなければ、大いなる目的を達成できない。どうすれば…)

そんなリュボラに考えが思い浮かんだ。

(そうだ。女王を衰弱にし、政治の実権を全て一時的に私に移行してしまえば、せいぜい、準備までの時間は稼げる。そのためにはこいつを使えば…)

リュボラは不敵な笑みを浮かべながら手元にある小瓶を眺めていた。そしてリュボラは作戦を実行に移すのである。


「本当にありがとうございました。マサト様。」

と深々と頭を下げるこの国の王、エル・セルム・アルバニアと俺は話していた。

「様はやめて下さい。女王陛下。わたしは当然のことをまでで」

と俺は言うが、

「いえ。私の頼れる忠臣を救ってくださったのです。なんでも褒美を取らせますのですなんなりとお申し付けください。」

という。おぉ〜。これはチャンス。ここで商人の話をすれば許可は確実。やっぱ助けておいてよかった。

「それではこの国のお抱え商人として迎えてくれないでしょうか。私実は商人の端くれでして。」

と言うと、

「そんなのでよろしくって。それでしたら今すぐにでも…」

と言いかけたその時に、バァーンと扉を開けズカズカ入ってくる男。

「お待ちください。女王陛下。そんな簡単にするものではございません。」

という男。誰だろと思っていると、

「良いではないですか。リュボラ。この人はアリスの恩人。恩を返すのは当たり前のことでしょう。」

という女王陛下。なるほど、この人があのアリスが言っていた経済大臣の人か。と俺は察した。

「恩人殿。後日改めて決議の結果をお話するので、今日はお引き取り願います。」

と礼儀よくお辞儀をしていた。

「分かりました。ではまたご連絡があった際に参上致します。」

と言いここを後にした。その後俺はアリスの紹介する宿で休んだ。こうして俺、龍宮寺雅人の王国での生活が始まった。




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