#3
休憩時間になった。紘香は他の生徒の目を意識しつつ静かにステイシーに話しかけた。
「大阪育ちなの?」
「ん、わかる? そんなに喋ってないのにな」
こてこてではないけれど、訛りがもろに出ていると紘香はつっこみたかった。
「ちょっと平家物語も暗唱してみて」
「
「かけ算
「ニニンガシ、ニサンガロク、って何言わせるねん!」
「やっぱり。九九も大阪弁なんだ」
大阪育ちがどうかを見るのに九九を言わせる、という話を紘香は聞いたことがあった。
「訛ってるって言いたいんやな?」ステイシーの目が鋭く光った。
「素敵!」
「ん?」
「そのオスカルのような佇まいから放たれる大阪弁が私にはツボ」
「変な奴やなあ」
「それは否定しない」
「にしても……」ステイシーは声を潜め、周囲を気にした。「話には聞いていたけど本校の生徒は休憩時間になっても何にも喋らへんのやな」
「あ、それは東京校もそうだけど。大阪校だけが違うのかな?」
「ここまで静かやないで」
全国に二十校ほどある聖麗女学館は、校舎によってそれぞれカラーは少し違うようだ。
紘香は東京校と長野本校しか知らなかったが、こうして長期休暇の研修会に参加して他の校舎の生徒と交流するといくらか多様性があることはうかがわれる。大阪校の生徒はステイシーが初めてだった。
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