第334話 1つの光
レイヴァーは魔族の町の集会所のようなところに迎えられ、貴重な情報を得ていた。
「本当なの!?ハデスが、スパルタの魔力を全て吸収したというのは?」
魔族から聞いた情報で、1番の衝撃がこの内容だった。
約1か月ほど前、普通に暮らしていた魔族達の国スパルタに、城の方角から眩い光が発せられ、多くの魔族が具合が悪くなり倒れた。
体の異常は数分で治ったが、次の瞬間周りを見ると草木や植物など全ての自然から生まれているものが枯れ果て、生きていくことが難しくなるほどだった。
備蓄を切り崩すことで何とか飢えをしのいでいたが、問題はその他にも多数。
1つに、生物が枯れたことによる魔力の回復が遅くなったこと。
魔力はその人物の中で練られることで回復するが、それはするのと同じく自然と接することでさらに回復を早めている。
だが、その回復源が絶たれたことにより日常生活も苦しくなっていた。
そこに追い打ちをかけてきたのが、モンスターの襲来。
普段は温厚なモンスターや、近くに現れることのないモンスターが突然町を襲い始めた。
最初は魔族達も力を行使し、町を守っていた。
だが、魔力の回復が追い付かず、モンスターは獰猛に変化しており被害は広がる一方だった。
今、レイヴァーがいる町も同じく被害を受けていたが、昔アフロディテ家の領地であったこともあり教養が高く戦闘力も秀でていた。
また、周りから逃げ込んできた魔族も加入し、何とか持ちこたえることが出来ていた。
そんな中、レイヴァーが来たことにより更なる脅威と判断した魔族は攻撃をしようとしたと。
「アーシェリーゼ様、我らの持つ情報は以上になります。あまり多くをお伝え出来ず、申し訳ございません。」
「いいえ、そんなことないわ。魔力を吸い取る魔法又は発明が成されてしまっている、そのせいであなた達が苦しんでいる。ハデスを魔王の座から降ろす理由は十分ね。」
「やはり、ザイン様と奥方様の敵を討つのですね!」
「少し違うわ、私の両親はまだ生きている。あと数時間で、処刑が執行されてしまうけど。」
「そうなのですか!?なら、我らもお力をーー。」
フラッ。
勢いのある魔族が立ち上がると同時に、足元がふらつく。
それをクロウが支える。
「無理するな、あんた達は自分達が生きる場所を守るのが最優先だ。」
「人族……だが、この命はアフロディテ様のお力がなければ当に失われていた物、恩返しをしたいと思うのは当然の事ではなかろうか!」
「だったら、ここで生きろ。それが、アーシェの希望になり力となる。ハデスは俺たちレイヴァーが何とかする。それまでこの国を守ってくれ、あんたたちは強いんだろ。」
「……分かった。お前の目から、並ならぬ意志を感じる。従おう、人族。」
「ありがとうな。アーシェ、これからどうする?」
クロウ達はこれからの作戦を考え始めた。
「ひとまずの休憩は、ここでできたわ。時間がないのは事実だから、この後すぐに城に向かうわ。ただ、道中まだ戦っている町もあるかもしれない、その時はタスクに入りたいのが私の希望だわ。」
「助けるのはもちろんだよ!サリア達がここに来た理由は、ハデスを倒すのもそうだけどスパルタを守りに来たんだから!」
「そうですね、あたし達で役に立てる事なら何でもします!かなり距離も近づいてきました、そろそろハデス達の抵抗もさらに強くなってきそうですね。」
「強くなっても構わない。私たちは、その程度の障害で止まるほど柔でないということを証明するのみだ。」
これからの行動も決まり、魔族に別れを告げようと集会所を出る準備をする。
「アーシェリーゼ様、無理を承知でお願いがあります。」
「なにかしら?」
「スパルタを、あなた様の手で元の形に戻してください。今のスパルタは、国ではありません、国という皮を被った地獄です。」
「ええ、私を、レイヴァーを信じて待っていて頂戴、その間この町の事は任せるわよ。」
「お任せください。この命が果てるまで、戦うことを辞めません!」
レイヴァーが外に出ると、多くの魔族が出迎えてくれた。
皆、何かを待っているようだった。
「アーシェ、お前の役目だな。」
「ええ、分かっているわ。」
スタッスタッ。
アーシェは前に出る。
「ここに宣言する!アーシェ・ヴァン・アフロディテは、魔王ハデスを倒し再びこの国に明るい未来を作り出すと!皆、敢えて言うがこれは命令だ!……こんなところで死ぬな!」
少し間が開き、
「うぉぉ!!!!!」
地面が揺れるほどの歓声が上がる。
「さすがだね、アーシェリーゼの言葉は。」
「そうですね。強くあってそれでいてとても美しい。憧れちゃいますね。」
「さぁ、行くぞレイヴァー!」
クロウの掛け声と共に、レイヴァーは進みだす。
すると、
スパルタの城のてっぺんに、1筋の光が見えた。
その光を見たアーシェは、
「みんな!伏せて!」
その言葉の意味とは。
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