第333話 生き残り
レイヴァーは、ひたすら城へ向かって走り続けていた。
もちろん疲れも出てきている。
だが、これ以上被害が出ることを考えると今は体が勝手に動いてしまっていた。
そしてついに、
「あれよ!あれが、スパルタの魔王が住む城!」
アーシェの指さす先には、鉄で作られているのだろう高さ30mはくだらない大きな城が。
所々に目に見えるほどの、濃い魔力が充満しており近づきたいとは思えない雰囲気。
「ずいぶんと禍々しいんだな、魔王の城っていうのは。」
「そんなことないわ、あの城はハデスの手によって変えられてしまったのよ。私の父ザインが魔王の時は、白い外壁で絹のように美しい物だったわ。」
「なるほどね、サリア達の目に映っているのは、ハデスの趣味で作り上げられたものってことだね。」
「あそこが僕たちの最終目的地、ここからもう1時間はかからなさそうだね。」
「急ぎましょう、少しでも被害を抑えてアトランティスを守るために。」
「そして、アーの両親を助け、オーガを元に戻す方法も見つけ出す。それが、私たちの最後のミッション。」
6人は改めて決意を口にする。
「ここまで来たんだ、一気に突き抜けるぞ!」
「了解!」
クロウの言葉と共に走り出し、5分ほど経過した所。
目の前には、今までとは違う活気が残っている町が見えた。
「アーシェ、あの町って。」
「ええ、生き残りがいそうだわ。魔力も感じるし、それに。」
「ああ、声も聞こえる。この環境で生き残れるほどの強い魔族達がいるってことか、会っていくか。」
「そうね、情報は少しでも仕入れたいし、もしかしたら力になってくれるかもしれないわ。」
スタッスタッ。
6人は町の中に入る。
すると、
「敵だ!構えろお前ら!」
ダダダダダッ!
辺りから魔族が武器や魔法を練って迫ってくる。
「待って!サリア達は敵じゃないよ!」
「そんな言葉、誰が信じるものか!俺たちを殺しに来たんだろうが!」
「だめだ、この人たちは頭に血が上っている。多分、何度もここを襲われているんだ、僕たちの言葉を聞く余裕がない。」
「かといって、倒すのも違うだろ。俺たちがやることは1つだ。」
スッ。
クロウは両手を上げ、争う意思がないことを表す。
「なんだあいつ、俺たちをだまそうたって簡単にいくと思うなよ!」
「だますつもりなんてない。俺たちは、話がしたいんだ。」
クロウに続いて、残りの5人も手を上げる。
「なんだこいつら、俺たちにビビッて武器もとれないのか!」
「いいさ殺しちまえ!こんな奴らに町を奪わせるな!」
レイヴァーに向けて槍や斧の攻撃が目前にまで迫る。
すると、
「アーシェリーゼ・ヴァン・アフロディテの名にもとに問う!皆の敵は、なんだ!!」
スッ。
武器がクロウ達の眼前で止まる。
そして、
「アフロディテ!?ザイン様のお名前じゃねえか。てことはあなたは、娘さん?」
「そうよ、私はザインが娘アーシェリーゼ。魔王ハデスからスパルタを奪いに戻ってきたわ。」
「そんな、だってアフロディテは1人残らず殺されたって噂が……。」
「それは噂に過ぎないでしょ。嘘だと思うなら、この紋章を見なさい!」
ボアァ!
アーシェは自分の頭上に、火の魔法で麒麟の模様を浮かび上がらせる。
「アフロディテ家の紋章、名家の紋章はその家の者しか出せない。ということは、本物だ。」
「まさか、本当に生きていたとは。大変失礼しました!」
カランッ!
魔族達は武器を手放し、魔力を消す。
「ありがとう、私を信じてくれて。そしてごめんなさい、こんなになるまで助けに来るのが遅くなってしまって。」
「何を言いますか、アフロディテ様!我らは、ザイン様がいなければ当の昔に滅んでいた身、この命はアフロディテ様に捧げると誓った身です!」
「大げさよ、あなた達は生きたいように生きるの。私に命を捧げるくらいなら、自分の新しい生き方を見つけなさい。」
「……尽力致します。」
アーシェは、過去にアフロディテ家が治めていた町であることを察し、場を収めることに成功した。
「事情は大体分かっているわ。ハデスが、新しい世界を作るためにスパルタをこんな状態にしてしまっていることを。」
「はい、我々もアフロディテ様に鍛えて頂いたこの力があったからこそ、何とか生きられております。ですが、力なきほかの町は、もう何個も滅んで……。」
「ごめんなさい、私がもっと早く戻ってきていればこんなことには……。私は、ハデスを止めてこれ以上の被害は出させない、お願い、あなた達の持っている情報を私に頂戴。」
「仰せのままに!少しではありますが、休める場所もございます。お仲間の方もぜひこちらに。」
「あ、ああ。ありがとうな。」
奇跡的に出会えた、魔族の生き残り。
そこで、レイヴァーが耳にしたものとは。
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