第332話 彼の心
レイヴァーが先に進み始めたころ、ハデスとハーデンは城にて状況を伺っていた。
「ハイオーガは、まだ上手く扱えないみたいだな。」
クロウ達が戦ったオーガは、ハイオーガと呼ばれているようだ。
「まぁ、お前の所の媒体が良いという証拠だろう。そう簡単に操れない魔力量に、まだ俺が生み出した力が追い付いていないみたいだ。だが、先の戦いで何が足らないかは分かった、次は十分に暴れてくれるさ。」
「あのハイオーガに何か手を加えるのか?」
「簡単に言えばな。それには、膨大な魔力をもう1度集めなくてはならない。あの2体は、白き世界の道先案内人となってもらうのだから。」
「また魔力を集めるというのか。私とて、そう何度も魔力を集められる方法をもちあわせていないぞ。」
「ご安心ください、ハデス様。」
シュインッ!
闇の中から、ハデスの側近、エレボスが出てきた。
「エレボス、今までどこに行っていた。」
「少し、これから行う作戦の準備をしておりました。おかげさまで、今ハーデン殿がお望みのものを手に入れられるようになっております。」
「魔力の事か?」
「ええ、僕が密かに準備していたものは、試作段階ではありますが広範囲から魔力を得ることが出来ます。加えて、そのまま欲しいところに流しいれることも可能にしております。」
「ハデス、お前の部下はやはり役に立つ者ばかりだな、羨ましいばかりだ。それは、いつ使える?」
ハデスは立ち上がり、エレボスに問いかける。
「最終調整だけしますので、10分、いえ5分で終わらせましょう。あわよくば、余計な存在も消すことが出来るため、白き世界にまた1歩近づくかと。」
「エレボス、さすがだ。魔力の方はハーデンとお前に任せる。」
「ハデス様はどちらに?」
「ハイオーガを見て来よう。レイヴァーとの戦闘で、傷を負っていた。余計な体力の消費であの存在を失うことは白き世界が遠ざかることに等しい。自分のものは、自分で管理しないとな。」
「では、ハイオーガは任せるぞ。エレボス、その場所まで案内しろ。」
スタッスタッ。
ハデスは階段を降り、ハイオーガが閉じ込められている牢屋のような部屋に辿り着く。
「2人とも、生きておるか?」
ズザッ!
回収された2体のハイオーガがハデスのもとに近寄る。
「俺、生きて、います。あいつら、倒すまで、死なない。」
「もう1度、出してくれ。早く、あいつら、殺す。」
「そう慌てるな、すぐにチャンスはやってくる。……にしても、お前たちが合わさった結果これほど強力な存在になるとは、ハーデンは何故こんなものを発明できたのか。」
ハデスは城から外を眺める。
つい数日前は、緑が多くモンスターも多い危険な国であったスパルタ。
だが、今となってはその面影はまったくない。
「この近くの魔力は全てと言ってよほど吸い出した、それがハイオーガに収束されて今の姿を保っている。エレボスは、これ以上何をして魔力を回収するつもりなのだ?」
「ハデス、様。」
「どうした?」
ハイオーガに呼ばれ、ハデスは近づく。
「白き、世界とは、どのような、場所で、しょうか?」
「うーん、そうだな、今より苦労がなく楽しく過ごせる環境だと思うぞ。敵もいない、私たちを襲うものはいない、俗にいう平和な暮らしだ。」
「なる、ほど。じゃあ、平和な世界、では、俺たちは、どうやって、生きればいい、のですか?」
「っ!?」
予想外の言葉に、ハデスは言葉を詰まらせる。
そう、白き世界を作り出したいことに変わりはない。
だが、その先で何を求めるか、自分がどう生きていくのか、そこまで深く考えたことがなかったのも事実だ。
「そうだな、白い世界を作ったばかりは、まだ反乱やいざこざが起こるだろう。それを鎮圧するのが、お前たちの最初の仕事だ。」
「かしこまり、ました。その後は、どうすれば?」
「その後は……あとでお前たちに教えよう。今は目の前にいる、レイヴァーを倒さないことには白き世界が生まれることは絶対にない。2人の力、存分に発揮してくれ。」
「主のため、この、力、使います。」
ハデスはハイオーガから離れ、王座の間に戻った。
(なるほど、白き世界を作った後のことはそこまで考えたことなかったな。力しか持たない者が生きるには、その者のための生きる目的がいる。白き世界で生きる目的、か。)
ハデスは天井を見上げ、これからの事を考え始めた。
そして場所は変わり、エレボスとハーデン。
城の最上階近くまで登り、エレボスが用意したものと対面した。
「こちらが、魔力を集める切り札になります。」
「これは、俺は見たことがないな、いつ使われていたものだ?」
「そうでしたか。これは、血のホワイトデイの時に使われた世界を変える力を持つ代物です。さぁ、準備に入りますのでお待ちください。」
「頼んだぞ、お前に白き世界の命運がかかっていると言っても良い、期待しているぞ。」
エレボスが準備し始めたものとはいったい。
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