第329話 為すべき事
サリア、ノエル、ミラは隙を見て遠距離攻撃をしてきた場所まで走り抜ける。
「ぐぉぉ!!」
「お前の相手はこっちだ!
ガギーンッ!
2刀のジャンプ斬りがオーガを襲う。
しかし、いとも容易く拳で受け止められる。
「硬いな、鉄でも斬ってる感覚だ。」
「じゃあ、熱ならどうかしら! 爆ぜなさい!
ボァァ!!
バゴーンッ!
大きな火の砲弾が、オーガの顔面を捉える。
だが、傷1つつかない。
「魔法も、正面からじゃ意味がなさそうね。」
「だったら、弱点を探すところからですね。クロウさんは物理、アーシェさんは魔法で多くのパターンを試してください!あたしが、弱点を見極めます!」
「分かったわ、リィンに任せるーー。」
シュンッ!
アーシェの目の前を、大きな何かが通り過ぎるのが分かった。
一瞬目を離した隙に、リィンの目の前までオーガが迫っていたのだ。
「リィン!逃げて!」
「っ!?」
「お前が、一番厄介。死ね。」
槍で防ぐ時間も与えられずに、拳がリィンに迫る。
バゴーンッ!
拳が振り下ろされ、地面が砕けたと共に地面の破片が飛び散る。
「リィン!!」
アーシェの叫び声が届く先には、
「ん?」
オーガはただ地面を削っただけ、リィンの姿はそこにはなかった。
「っ、え、クロウさん?」
「危ねぇ、あと少しでぺちゃんこにされるところだったな。」
クロウの顔には仮面が付けられており、リィンに攻撃が当たる前に抱きかかえて回避したのだ。
「お前が、烏か。」
「俺の事を知っているのか、だとしたらお前は蠢く会側の人間か?」
「俺、は、お前たちを、殺すために、生まれた。」
「何言ってやがる、俺たちを殺すのはお前の役割に過ぎないだろ。生まれた理由なんて誰かが決めるもんじゃない、自分で決めるものなんだよ。」
「お前、何言っている。イラつく、殺す!」
シュンッ!
目で追うのがやっとの速さでクロウに迫る。
「リィン、力を解放しないとこいつに殺される、何分持たせられる?」
「5分、いえ7分持たせます!」
「OK、なら初めからフルスロットルでいくぜ!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
クロウの2刀とオーガの拳が火花を散らす。
1撃1撃の重さが、辺りの枯れた木を揺らしその破壊力を物語る。
「クロウが仮面を解放した、なら私もその場所まで上げていくしかないわね!
フワッ!
シュンッ!シュンッ!
桜のような炎の花びらがアーシェの背中に生まれ、矢のようにオーガ目掛け突き進む。
「うがっ!?」
さすがのオーガでも、多少の衝撃は受けたようだ。
その隙を逃さずに、
「
シュンッ!
ゴスッ!
瞬間移動したかのように顎下に迫り、拳で打ち上げる。
さらに、打ち上げたオーガよりも高く飛び、かかと落としで地面に叩きつけ、最後に拳を腹目掛け打ち抜く。
「ぐはっ!」
「さすがに効いたか、オーガーー。」
「クロウさん!避けて!」
ドゴーンッ!
オーガの体が火の魔法で爆発し、その爆風がクロウを吹き飛ばす。
(クロウさんの吹き飛んだ先に、尖った枝が!)
リィンの目に、クロウが枝に突き刺さるイメージが湧く。
「させない! あたしに宿れ!
リィンの周りを魔力が覆い、龍の化身の様なものが見える。
ズザッ!
そのまま地面を蹴り飛ばし、クロウをキャッチする。
「大丈夫ですか!クロウさん!」
「助かったぜ、リィン。ん?なんか、デジャブだな。」
「そんなこと言っている場合ですか!来ますよ!」
「休みもくれねえのか、リィン、弱点を探すのは任せるぞ!」
ズザッ!
ガギーンッ!
現段階でクロウの物理、アーシェの魔法を受けながらもオーガは戦うことが出来ていた。
そう、現状最大火力に近い2人を1人で相手しているのだ。
(このオーガ、今までのどの生き物よりも強い、クロウさんの仮面の力があっても攻撃は上手く通らない、アーシェさんの多種類の魔法もダメージは負っているようだけど致命傷には程遠い。だったら、2人が生み出せる一瞬の隙をあたしが狙えばいい!)
リィンは目を凝らし、オーガと2人の攻防の隙を探る。
「ぐぉぉ!!」
「遅ぇよ!
ザザザザッ!
ガギーンッ!
オーガを駆けあがりながら斬りつけ、最後に斬り落とす。
続けて、
「足元がお留守よ! 動けるかしら!
パリーンッ!
オーガの足元が氷で覆われ、動きを封じる。
その瞬間、右横腹に赤い光が。
「見えた!
スッ!
ジャギンッ!
音を置いてくるスピードで突き出された槍が、赤い光を捉える。
「うがぁ!」
ドスンッ。
オーガは膝をつき、苦しみ始める。
「さすがだな、リィン!」
「クロウ、油断しないで。まだ倒し終えてはーー。」
「お前ら、ふざけるなーー。」
シュインッ!
闇のオーラがオーガを覆い、その場から消え去る。
「ちっ、逃がしたか。」
「でも、この3人ならどうにかできる。それは、大きな収穫ですね。」
「サリー達の応援に行くわよ!」
クロウ達3人は、オーガを退けることに成功した。
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