第328話 2体の強敵
レイヴァーは先に進みながら、アンジュから聞いた情報を整理していた。
スパルタから各国に向けて、宣戦布告とすら取れる内容が発信され、各国が不安に駆られ、焦りのあまり暴動を起こす者もいた。
だが、テーベではサリアの母リューネが指揮を迅速に取り、大きな問題を起こさせずに国をまとめ上げた。
また、レイヴァーがスパルタに進行すると予想したリューネは、アンジュ王女を筆頭にレイヴァーに助けられた者達が力を合わせ、スパルタの町を防衛していた。
獰猛なモンスターが襲ってくる中、陣形を組み遠距離の弓攻撃と植物魔法を活用し魔族を守っていた。
「はぁぁ!!」
ジャギンッ!
アンジュのレイピアがアサルトビーを斬り裂き、町の防衛も着実に進んでいた。
「ここにいるモンスターは通常個体よりさらに上の力を持っている!皆、3人1組は絶対に崩さないで!」
「了解!」
モンスターが襲ってくれば、植物魔法で防御し、隙が生まれたところを矢で撃ち抜き、怪我をした者を即座に治療する。
これまでテーベで積み上げてきたものが、成果を上げていた。
(よしっ、これならスパルタ国境近くの町はなんとか守れそうですね。ただ、私たちにできるのはこの程度のこと、お願いします、レイヴァー。この世界を、救って。)
アンジュはスパルタの魔族を守るために、全てを懸けていた。
ところ変わり、テーベの城。
「リューネ様!」
1人のエルフが、サリアの母リューネに手紙を持ってくる。
その手紙を開くと、
「っ!!良かったですわ、これでもう少し彼らの力になれますわね。レイヴァーに未来を託すことしかできない私たちでも、やれることはやりましょう。すぐに支度を!」
その手紙の1番下には、
アトラース。
の文字が。
クロウ達は、アンジュの援護のおかげで先に進むことができていた。
「今回はアンジュ王女が来てくれたから、サリア達は助かったけど、この先まだ多くの壁があるよね。」
「助けが来る前提で動くことはできないね、僕らの独力で乗り切るのが必要になってくる。」
「だとしたら、今までとそう変わらないな。俺たちは追放された時点で、多くの仲間がいるわけじゃない。ただ、俺たちを信じてくれる奴らは助けに来てくれる可能性はあるかもな。」
レイヴァーはテーベ、エリュシオン、アテナイと多くの地で活躍した。
蠢く会を止めるためとはいえ、多くの被害が各国ででていた。
根本的な解決のために動いてるレイヴァーに対して、力を貸したいと思う者はまだいると信じよう。
ズーンッ!
城まで走って残り1時間を切ったところで、膨大な魔力を感知する。
「待って!みんな!」
「分かるよ、アーちゃん。何か、ここに向かってきてる。」
「新手か?」
「そうね、そして今まで感じたことのない魔力が2つもある、このままだと2分で会敵するわ!」
「ハデス達も本気だな、いつでも対応できるようにするぞ!」
そのまま先に進もうとした瞬間、
(っ!?何か飛んでくる!?)
「クロウ!!」
「っ!?」
バヒューンッ!
闇魔法の弾丸が、クロウ目掛け突き進んできた。
眼前に迫った弾丸を、持ち前の反射神経で体を逸らすことでなんとか避ける。
「おいおい、新手までまだ距離があるんじゃねえのか?」
「確かにここからは500mくらい離れているわ、そこから届く攻撃ってことよ。」
「スナイパーがいるってことか、ならスピードを上げられる者で先に対処をーー。」
「上からも来るよ!!」
ズザーッ!
ドスンッ!
レイヴァーの頭上から何かが降って来る。
「こいつって、まさか!」
「オーガ、しかもこの前の個体よりも力が増しているわ。」
クロウたちの前に落ちてきたものは、全身真っ黒な眼をぎょろつかせる全長4m程のオーガであった。
魔力で体は覆われ、迫力だけで失神してしまいそうだ。
「理解できました、スナイパーも目の前のオーガと同じタイプ、近距離と遠距離をうまく対処できる組み合わせになってますね。」
「ちっ、こいつと遠くのやつを一気にやるのか。だったら、俺とアーシェとリィンでこいつをやる、サリア、ノエル、ミラ、遠くのやつは任せるぞ!」
「OK、気をつけてね!」
「ええ、そっちも無茶はしないでよ。」
ズザッ!
サリア、ノエル、ミラはさらに速度を上げスナイパーがいるだろう位置に向かう。
「ぐるぁぁ!!」
オーガの威嚇が、クロウ達を襲う。
「かなり殺気立っているな、エリュシオンのオーガとは何か違う。」
「はい、特に魔力が桁外れというよりは、何か負の感情に呑み込まれているように見えます。」
「確かにそうね、それに、この魔力を使えるようにするには、相当の媒体が必要なはず。考えたくはないけど、10将軍が……。」
「可能性は高いな、ハーデン、ハデス、絶対に許さねえ!」
レイヴァーとオーガの戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます