第327話 ハデスの狙い

レイヴァーは、さらにスピードを速めてスパルタの城に向かっていた。


ハデスとハーデン、及び魔王10将軍が何か仕掛けてくる前に、少しでも早く決着をつけるためだ。


「アーシェ、確か残りの魔王10将軍は、ハデスを含めて後8人だよな?」

「そうね、ギルは蠢く会によって操られ死んだ、シャープはさっき戦ったからマックス8人というところね。」

「確かに、ハデスの事だもん、考えたくないけど自分の部下を実験体にしてこの前のオーガとか生み出している可能性もある、そんなことさせちゃいけない。」

「サリの言う通りだ、私たちであいつらを止めよう。ここからまだ距離はある、スピードは求めるが焦らず行こう。」



レイヴァーが進んでいる姿を、ハーデンは見ていた。



そう、城の中からレイヴァーを上空から見下ろす形で。


どんな魔法を使っているのか、そもそも魔法なのかも分からない。



金色に輝く巨大な椅子に座り、目の前に広がる魔法で作られた液晶の様なもので監視していたのだ。


「なるほど、将軍が1人役立たずで終わったか。使えない獅子め、あいつを転生させるべきだったか。」


シュインッ!

そこへ、闇の輪っかが生まれ、ハデスが中から出て来る。


「あいつらを始末するんじゃなかったのか、ハデス。」

「少し邪魔が入った、それに悪役というものはもっと盛大に暴れてもらわなければ、世界の天敵として扱えないだろう?」

「俺は構わないが、お前の部下がまだ多くいるだろう。そいつらが殺してしまうのではないか。」

「なぁに、敵とはいえレイヴァーの強さはよく理解しているつもりだ。

「つまり、殺すのではなく、削れればいいということか。よくやるな、大切な将軍ではないのか?」

「奴らも本望だろう。それに、元は私とエレボスのみが将軍の地位を持っていた、それ以外は求めん。」


ズサッ。

ハデスも近くのソファに腰を掛ける。


「それで、他国の反応はどうだ、ハーデン。」

「賛同する者の方が少ないようだ、どうやら先ほどのエルフの女同様、こちらを支持しないように操作している奴らが何人かいそうだ。」

「悪あがきを。ゴーレムをけしかけて、排除するか?」

「物は使いようだ。俺の思う以上に、人間は力を持っているらしい、ならば潰すときは徹底的に潰す。今のうちに良い思いをさせておいて、どん底に落とすのが一番良いだろう。」

「私はレイヴァー担当だからな、そっちは任せる。白き世界がどんなものか、早く見せてもらいたいものだな。」


ゴクンッ。

ハデスは近くに置いてあった赤ワインを飲み干す。


「そう急くなよ、相棒。次の世界は俺たちが支配する、新しい世界も容易い。」

「血のホワイトデイのことか、あの作戦は上手くいきすぎて少し不安すら覚えたわ。」

「不安?冗談はよせ、変わらなくてはいけない時が来ているんだ、その為に俺たちは手を組み何十年もこの腐った世界で生きてきたんだ、そろそろ終わりにしていいだろう。」

「同意だ、では私はレイヴァーを消耗させる準備をしておこう、アフロディテは私が殺す、烏はお前が殺したいのだろう?」

「そうだな、あいつは特に気に入らん、この手で確実に消さなくてはな。」


ガゴーンッ!ガゴーンッ!

金属を殴っているような甲高くも鈍い音が、2人のいる部屋にまで響く。


「ハーデン、奴らが暴れたくて仕方がないようだ。そろそろ外に出してやってもいいか?」

「好きにしろ、素材はお前が提供したんだ、使う権利はお前にやる。」

「では、早速実験を開始しよう、最新タイプがどこまでレイヴァーと張り合えるか。」

「2体いただろう、この際両方とも使ってしまえばいい。」

「そんなことしたら、次の楽しみが減ってしまうではないか!」

「なに、無くなった物はまた作り出せばいい、出し惜しみする方が勿体ない。」


スッ。

ハーデンは部屋から出ていく。



「ハーデン、底知れぬ男だな。自分の道を作るためなら、自分の全てを懸け今のアトランティスを壊そうとしている。どんな過去があれば、あそこまで割り切れるのか、興味深い生き物だ。もはや、人間と呼んでいいのか分からんが。」


ハデスも部屋を出て、金属の大きな檻の前に向かう。



そこには、息を荒げ今にも暴れだしそうな生き物が。


先ほどの金属音を響かせていたのは、目の前の存在だろう。



「さあ、やっと外に出してやれる、お前の力がどれ程なのか楽しみで仕方がない。ここまで魔力を詰め込めたんだ、レイヴァーを1人くらい殺してもおかしくない、全滅してくれるなよ、反逆者レイヴァー。」

「うごぉぉ!!」


獰猛な生き物の声が響き渡る。


はたして、ハデスとハーデンは何を生み出してしまったのか。

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