第326話 仲間として
広場でレイヴァーは、アンジュと合流しハデスを撃退することに成功した。
アンジュは単独で行動し、レイヴァーの気配を察知し追いかけてきたところ、ハデスによって武装解除されている所に居合わせたとのことだった。
「アンジュが来てくれて助かったぜ、正直あの場面を乗り切る方法が俺には考えついてなかったからな。」
「なに?アンジュ王女がいるのを気づかずに私たちに武装解除させたの!?」
「いや、近くにいるのは気づいてたけど、それをハデスに気づかせないようにするにはどうしようか迷ってたんだ。」
「そこは、私の事を信じて待っていてくれるだけで良かったですのよ、私の実力は良くお判りでしょう?」
「まぁそうだけど、ばれたら終わりだったし。」
アンジュは意味ありげにクロウに体を寄せる。
「過ぎたことはおいといて、風の噂で聞きましたわ、クロウさんはアーシェさんと婚約されたと。おめでとうございます。」
「どこから聞きやがった。口外したつもりは全くないぞ。てか、分かっているなら少し離れてもらってもいいか。」
「あら、私の事がお嫌いで?話さなければいけないことがあると、夜に密会までした仲ですのに。」
いたずらな笑みを浮かべながら、アンジュはクロウと話す。
ギリッ。
アーシェの顔が険しくなり、右手にウェルダンにするためだろうか、火の魔法が少し練られる。
「変な言い方するな!テーベを救うために、メイリンとソーマを倒す方法を一緒に考えていただけだろうが!」
「でも、皆さんに内緒で会っていたことに嘘はありませんわよね?」
「う、そ、それはそうだけど。」
クロウがチラッとアーシェを見ると、
ボァ。
さらに火力が増した気がした。
アーシェが嫉妬していることは、アンジュも気づいている。
もちろん、そろそろ危険ということも理解していたため、クロウから離れた。
「冗談ですわ。アーシェさんもごめんなさい、クロウさんはからかい甲斐があるものでしたので、つい。」
アーシェの掌から、火が消える。
「いいえ、気にしていないわ。アンジュ王女のおかげで私たちが助かったのは事実だし、感謝しているわ。」
「そんな、国を助けて頂いた方々に対する恩返しとしては、小さすぎるものですわ。まだまだ、皆さんに恩返しをしてまいりますわ。」
「それはとても心強いわ。ぜひ、お願いね。」
「お任せください。ちなみに、クロウさんは私に近寄られて鼓動が早くなっているようでしたわよ。」
「ご丁寧にありがとう、後でお灸をすえておくわ。」
ゾワッ。
クロウは背筋に何か恐怖の様なものを感じたが、あえて触れないことにした。
そうこうしているうちに、アンジュがハデスから他国に発せられたものについて話し始めた。
「皆さんには、1つ大事なことをお伝えしたく後を追ってまいりました。こちらをご覧ください。」
アンジュは1枚の紙をレイヴァーに見せる。
そこに書いてある内容は、
アトランティスに属する各国に通達する。
我々、スパルタ国は魔王ハデスの発案の元、アトランティスを新しき世界に作り替えるため、各国スパルタに服従することを求める。
アトランティスは、いつしか衰退を辿る弱き世界となってしまった。
理由は簡単、国全体が向いている道が違うからである。
そのため、我らスパルタが先頭に立ちアトランティスを再生させるために、各国が我らに服従を誓ってくれた暁には、次の世界でよりよい生活を過ごせることを約束しよう。
ただし、我らに対して反抗する場合、我々も本気だ。武力を持って行使することも躊躇わない。
各国の主君たちよ、賢明な選択をすることを切に願う。
と、記されていた。
「これが、アテナイ、テーベ、スパルタに送られたものですわ。各国、意見が別れており、賛同する者もいれば反対する者も多くいます。皆さんのように、ハデスがどのような国にしようとしているのか知っている者の方が少ないですから。」
「確かにな、俺たちはあいつらから直接話を聞いている、だからハデスとハーデンを止めなくちゃいけないと思ってる。けど、この言葉だけを公表したら、たとえ真実を語ったとしても信じる者だけじゃなくなるのは想像しやすい。」
「それでも、私たちがやるべきことは変わらないわ。少なくとも、アンジュ王女は私たちを支えてくれのでしょ?」
「私だけではないと思いますよ、皆さんの活躍は多く耳にしています。きっと、もっと多くの者が皆さんの力になると私は思います。」
アンジュは武器を納め、
「私の部隊が近くにいます、スパルタの町を襲っているモンスター達は私たちが請け負います。皆さんは、一刻も早く城へお向かいください。」
「ここら辺のモンスターはかなり獰猛だ、任せていいのか?」
「あら、私はまだまだクロウさんと密会したいですから、協力させて頂きますわ。それに、私たちも守られてばかりではありません、恩を受けたら必ず返す、私のモットーですわ。」
「余計な言葉が聞こえた気がするけど、まぁ分かった。無茶するなよ。」
「はい、そちらもお気を付けて。」
レイヴァーは城に向かい、アンジュはエルフ部隊と合流しそれぞれの責務を果たそうとしていた。
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