第324話 切り札
ハデスとレイヴァーの戦いは、急に始まった。
「アーシェ、作戦をくれ!」
「固有魔法を使えるほどの技術がある、なら私とサリーで遠距離から様子見をするわ!4人はチャンスをうかがって! 氷つけ!
「サリアに任せて ! 射貫け!
ヒューンッ!
氷魔法と無属性の光線がハデスに目掛け突き進む。
「舐めているのか?」
バギンッ!
2人の魔法はハデスに届く10㎝ほど手前で霧散する。
「魔力を弾くのではなくかき消した、厄介なことしてくれるわね。」
「今までのモンスターで、そんな芸当をするものはいませんでした、これがハデスの力ということですか?」
「でも、違和感を感じるよ。確かにサリア達の魔法はハデスにあたる前に消えた、けど、感覚としてはハデスではなくその近くにある何かに魔法という存在を消滅されたように見えた。」
「どういうことだい?魔法が、ハデスではない何かによってかき消されているのかい?」
「なら、俺たちの遠距離攻撃ならどうだ!」
ズザッ!
クロウとミラが武器を構え、
「
「
シュンッ、シュンッ!
バゴーンッ!
2刀の複数の斬撃と、大斧の巨大な斬撃がハデスに迫る。
「魔法使いでなくても遠距離攻撃ができる、やや鬱陶しいな。ふんっ!」
ガギーンッ!
ハデスは懐から錫杖を取り出し、斬撃を弾く。
弾き返された斬撃は、辺りの地面に深く傷をつける。
「こういうことらしいぜ、アーシェ。何か共通点はありそうか?」
「見てわかるのは、物理的な攻撃はハデスはかき消すことが出来ない。魔法は、何かの力によって霧散させられる。まだ不明な点が多すぎるわ、近づいたらあの爆発で黒焦げになりかねない。」
「かといって、攻めあぐねている時間もない。俺とミラで仮面の力を使う、その間にアーシェとサリアで魔法を打ち込んでくれ。隙が出来たら、リィンとノエルで一発ーー。」
「おおっと、そう慌てるなよ、烏の。私は、お前たちと真っ向からやり合うつもりなんてないのだから。」
ハデスから予想外の言葉が発せられ、場が膠着する。
「真っ向から戦うつもりはない?どういうつもりだ!」
「そのまんまの意味だ、生憎私は1人、それに対してそちらは6人。バランスが取れていない、それは不公平だろ?」
「まさか、ゴーレムやオーガを呼び出して戦わせるとでもいうのですか!」
「いいや、違う。むしろ、戦う必要なんてないのさ。ほら、これを見てもらおうか。」
シュンッ!
パリーンッ!
ハデスの手から空目掛け投げられた石が光を生み出しながら割れ、クロウ達に眩い光を浴びせる。
「なんだ、閃光弾?」
「いいえ、これはたしか、アテナイで使われていた!」
レイヴァーが空を見上げると、そこには両手両足を鉄の鎖で縛られ、拘束されている魔族の姿が映し出される。
体中に傷が目立ち、近くの町から連れ去られたのだろう、周りには魔族の兵士らしき人たちが武器を構え立っている。
「なんだ、何が映し出されていやがる。」
「あの魔族たち、この近くの魔族だわ!確か、シャープ将軍が統治していた町に多かった獅子の魔族が多いように見える。」
「そういえば、ハデス、君は自分の仲間の肉親に手をかけたと聞いたよ。本当なのかい?」
「ほお、それはシャープから聞いたのだろう。あいつは賢く、そして力も10将軍の中で上位を争えるほどだった。だが、あいつは白き世界に疑問を感じていたようだ。」
「だから、見せしめにシャープの奥さんを殺したと言うのか!」
ミラの怒号が響き渡る。
「なあに、最初はそんなつもりはなかったさ。ただ、シャープを説得するように話しに行っただけだ、だが、奴に似て嫁も頑固だったからな、私も暇ではないので面倒になってしまったのだ。」
「だから、あなたはシャープさんの奥さんを殺したというのですか!それが、あなたの作り出す白き世界につながるというのですか!」
「もちろんだ、白き世界には選ばれた者しか行けぬ、間引きをしなくてはいけないのだ。」
「さっきからよう、ハデス、てめえは神にでもなったつもりか!」
ドンッ!
クロウの声とともに、空の映像から大きな太鼓を叩いたような音が響く。
「そろそろお話の時間は終わりだ、レイヴァーこれを見ろ。」
ハデスの1言で、映像の中で動きが。
1人の魔族が兵士に歩かせられ、地面に伏せさせられる。
そして、
シャキンッ!
大きな斧の刃が、首の横に置かれる。
「あなた、何をするつもりーー。」
「お前たちが、武装解除するならこの魔族を生かしてやろう。だが、抵抗するようなら1人ずつ首を落としていく。」
「てめぇ、ふざけたことを!」
「お前たちが私の邪魔をするから生まれる犠牲だ、ここで武器をおろせば無駄な死者は生まれない、それくらい分かるだろう?」
ハデスには、人質という切り札が残されていた。
はたして、レイヴァーの決断は。
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