第323話 刺客
「アーシェ、この先にハデスがいるって、本当か!?護衛は?」
「魔力は1つしか感じられないわ、あなたのようなオールドタイプがいない限り1人よ。」
「それも妙だな、ハデスとハーデンにとって1番の邪魔な存在、俺たちレイヴァーを消すって時に単身で突っ込んでくるとは思いづらい。何か罠か?」
「クロにしては冷静だな、その線もあるがここで手をこまねいていても何も始まらない。アーの感じる魔力を頼りに進むのがいいだろう。」
「そうしましょう、私が先頭を進むわ、ついて来て。」
スタッ、スタッ。
レイヴァーは速度を緩めて、ハデスの魔力を感じ取った場所に向かう。
道中の木々は廃れ、生きている植物が限りなく0に近い。
歩いているだけで生命力を吸われている気分にすらなる。
10分ほど歩くと、
「止まって。」
アーシェの言葉で、レイヴァーは歩みを止める。
「この先にいるのかい?」
「ええ、ここから10m程先にある広場にいるみたいだわ。何でこんなところにいるのか不可解な部分は多いけど。」
「まずは、会ってみないとだな。行くぞ!」
ズザッ!
クロウを先頭に走り出し、広場に出る。
そこには、
「おお、やっと私の前に現れたか、アフロディテの娘。」
ハデスが1人で待ち構えていた。
ハデスは大きな黒いマントを羽織、体全身を覆っている。顔には大きな鹿の形をしている骨の仮面。身長は2mを超え、大柄な肉体をもち迫力だけで足が震えるほどだ。
仮面の奥の目は赤く、レイヴァーを捉えて離さなかった。
「ハデス、まさか本当にここにいるとはね。」
「私がここにいてはまずかったか?なあに、せっかくザインの娘がスパルタに来ているのだ、会っておかなくては現魔王として失礼だろ?」
「その現魔王様は、アーシェの両親を失墜させた張本人だろ。今更会って、何をするつもりだ!」
「お前か、アフロディテの側近というのは。よく生きているものだ、これだけ多くのゴーレムを送り込んだというのに。私の最高傑作も壊してくれたのだろう?」
「それは、オーガの事か!」
クロウの怒号が響き渡る。
「そうだ、オーガは膨大な魔力を有する結果となったが、奴がこの先白き世界を作り上げるのに必要な存在なんだよ。」
「オーガを作り出すのに、何人の命を奪ったか貴様は考えたのか!」
「さあな、まあ蠢く会にちょうどいい魔力の媒体がいたというのと、その為に必要なモンスター、ざっと見積もって100体、そのくらいだろ?」
「そのくらい、だと。てめぇ、命を弄んでいる自覚がないのか!そいつの人生を滅茶苦茶にしているんだぞ!」
「より高貴な存在に生まれ変われるのだ、何を拒む必要がある?」
ハデスは薄ら笑みを浮かべ、レイヴァーを見つめる。
「どうしようもない外道ですね、あなたは。あなたのその命だって、ハーデンに利用されるかもしれない、自分がオーガになっても何も思わないんですか!」
「私がオーガより劣っているのならば、心から受け入れよう。しかし、私はオーガを超えた存在、故に私はオーガをつくりだす側にいるのさ!」
「弱者を虐げ、自分の人形のように扱うことが、次の世界の理想だというのか!そんな世界、僕たちは求めない!」
「お前たちのような価値の分からない存在がいる、加えて私たちに反抗する力も持ってしまっている、そんなお前たちは私の手で滅ぼさなくてはいけなさそうだな!」
スッ!
ハデスはおもむろに右手を伸ばす。
「させるかよ!」
ズザッ!
クロウとミラが大剣と大斧を構え突進する。
この瞬間、アーシェの体に奇妙な違和感が廻った。
(何、この感覚。私の体が反応している?何に……反応するということは魔力、魔力の違和感?だとしたら、確証はないけど!)
「
「
「待って!2人共!」
「っ!?」
ザザッー!
2人は急ブレーキをかけた途端、
「吹き飛べ。」
バゴーンッ!
ハデスの体が爆発し、その熱風がレイヴァーを襲う。
「なんだ、火魔法か!?」
「させないよ! 盾となれ!
バギバギバギッ!
地面から根が突き出し、クロウとミラを覆うように壁となる。
その瞬間に、クロウ達は距離を取ると、根は火によって焦げ落ちる。
「助かったぜ、サリア。」
「アー、こんな魔法が存在するのか?」
「私も見たことのない魔法だわ、体を爆発させるなんて。」
「そうだろうな、これは私が生み出した固有魔法だからな。」
当のハデスは、身に傷1つない状態で立っている。
「おいおい、こっちは危うく黒焦げになりかけたのに、てめぇはノーダメージなのかよ。」
「自分を焼く魔法ではないからな、アフロディテの娘がいなければ2人消せていたのだが、さすがにやるな。」
「あなたなんかに、私の大切な仲間を殺させるもんですか!」
「いいだろう、ならもっとギアをあげていこうか!」
ハデスとレイヴァーの戦いの火蓋が切って落とされた。
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