第322話 ハデスの目的
レイヴァーは先ほどの町で魔族から話を聞いていた。
なぜモンスターが現れたのか、なぜ戦えなかったのか。
そうして得られた情報はシャープの口からもでた、魔力の違和感。
力を使おうにも使えずに、獰猛なモンスターに次々魔族が襲われていったと。
そこにシャープの姿はなく、誰かが操作しているようには思えなかったとも話に上がった。
「モンスターが、なんだか苦しそうにも見えた、それに特定の魔族達はゴーレムに連れ去られたんだ。」
「無差別に殺すと見せかけて、何かを探していた?嫌な気しかしないな、情報ありがとうな。」
クロウはレイヴァーの元に戻りこれからの行動を考える。
「やっぱり、モンスターは俺たちが前に戦ったことのある、チップで操られていたモンスターと似ているな。」
「でも、サリアたちが倒したモンスターにはチップが付いてなかったよ、何か別の方法があるのかな?」
「……体の内部に入れ込んだ。」
ノエルの言葉に全員が驚きを隠せない。
「体に埋め込まれているというの?でも、そうだとしたらモンスターを作り出してるってことにならないかしら?……まさか!?」
「ハデスとハーデン達は、あたし達が知らないモンスターの生まれ方を解明した。そして、町を襲わせる専用のモンスターを作り出した可能性はありませんか?」
「考えたくないけど、その可能性が大きいと思う。僕も蠢く会にいた時は、チップを付けて操る存在が必要だった。ただ、今回のモンスターにその装置がないということは、新しい技術を生み出したと考えるのが良さそうだ。」
ノエルの言葉で、アーシェの憤る顔が皆に見て取れる。
そのアーシェを落ち着かせたのは、
「アーシェ、お前の怒りは最もだ。けど、感情に呑まれるな、感情だけの判断じゃ救えるものも救えなくなっちまう。」
その言葉と共に、アーシェの手を握ったクロウだった。
「……分かってる、分かっているわ。私らしくないわね、冷静でいられないなんて。」
「大丈夫だ、キレてるのは俺たちも同じだ、ハデスとハーデンを止めようぜ、1秒でも早く城に行くぞ。」
「ええ。」
スタタタタッ。
レイヴァーは襲われていた町を後にし、さらに先へと歩みを進める。
「この先も襲われている町があるかもしれません、クロウさん、その場合はーー。」
「聞かなくても分かってるだろ?助けられる命は全部助ける、そんでハーデン達に意味のないことをしてんじゃねえよバァカ!って言ってやる。」
「愚問でしたね、了解です!」
「ここから城まで、最短でも2時間はかかるわ。処刑の時間まで、約4時間。少しでも早く着くわよ。」
「もちろんだ、アーの両親を助ける絶好のチャンス、逃すつもりはないからな!」
10分ほど走った先で、さらに町が見えてくる。
「あそこにも町があるぞ!襲撃されてる音はしない、まだ襲われていないのか、それとも。」
「とりあえず少しでも情報が欲しいわ、あの町でも情報を集めるわよ。」
スタッ、スタッ。
レイヴァーは走るのを止め、町の中を歩く。
そこには、
「これって、まさか。」
「サリアの思っていることが正解だと思うよ、僕たちが来る前にこの町は。」
「魔力の塵も残っているわ、ここの魔族達は何者かに襲撃された。」
「この足跡、サーベルウルフだな。必要なものだけ誘拐して、他は消したってか。ふざけやがって!」
レイヴァーの目に映ったものは、信じがたい映像。
建物は崩れ、至る所に血が飛び散り、多くの魔族が倒れていた。
襲撃から数日は経っているのだろう、血は渇き、流れていたのだろう涙は地面に吸われ、とても直視したいものではなかった。
だが、レイヴァーは違った。
真っ直ぐ目の前で何が起きているのか、その目に、頭に刻み、手を合わせていた。
「助けられない命があるのは理解してるつもりだ、だが、目の前でこのような姿を見ると、私ですら負の感情に呑まれそうになる。」
「ミラさんだけじゃありません、ここにいるあたし達みんな同じ気持ちですよ。でも、だからこそ。」
「白き世界を作り出させちゃいけねぇ、こんなことを繰り返さないと作れない世界に、俺は1ミリも興味をもてない。」
レイヴァーはさらに奥を見つめる。
すると、
ズーンッ!
大きな圧力を、アーシェは感じ取る。
「この感覚、予想外だけど、間違いない。」
「アー、何か感じたのか?」
「ええ、この先に、ハデスがいるわ。」
「えっ!?」
ハデスの魔力を感じ取ったアーシェ。
果たして、この先にいるのは。
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