第318話 獅子との再会

レイヴァーは町の魔族たちを救い、治療を終えモンスター襲撃の情報も集め終えていた。


「つまり、この町は国境とも近いこともあり戦うことに秀でた魔族が多く住んでいる、にも関わらず王国の方から感じた魔法のようなものを受けた途端力が弱まり、モンスターの襲撃が始まった。そして、いつもの力が出せなかった、と。」

「話を聞いた感じでは、そういうことになるわね。血のホワイトデイの時も、お父様は魔法を使えないようにされたと聞いたことがあるの、もしかしたら似た類のものが使われたのかもしれないわ。」

「サリア達が普通に戦えたのは、その力がアテナイまで届かなかったから、てことだよね。」


6人はこれからの行動について考える。


「今、だいたい9時前後よね、私の両親の刑執行までは残り8時間。」

「ここから城のある王国まで辿り着くのに、馬車を使っても2時間はかかるな。城に入るとなったらもっと時間がかかる、だとしたら、ここで道草食ってる場合じゃねえ。」

「この町は僕たちが助けられたからいいけど、他の町も同じ目にあっている可能性もあるよね。……だけど、ここで戦力を分散させるのはまずい。」

「かといって、救える命を見捨てるのは私たちのやり方として違うな、どうするべきか。」


6人が考え事をしていると、


ズーンッ!

大きな魔力をアーシェは感じ取る。



「この感じ、幹部クラスがくるわ!」

「このタイミングでかよ、くそっ!」


ドシンッ!ドシンッ!

遠くから、大きな足音が聞こえてくるのを感じる。


「この魔力は、間違いないわ。10将軍の1人、獅子のシャープよ!」

「獅子っていうことは、相当好戦的なんだろうな。いや、獰猛って言った方がいいか。」

「でも、サリア達の邪魔をするなら止めるしかない……来るよ!」


ズザーッ!

レイヴァーの前に獅子の顔をした魔族が現れる。


その手には、巨大な大斧を構えており、ミラのものと比べて倍のサイズはあるだろう。


体も大きく、クロウの2倍はあるだろう。



「やはりあなたね、シャープ将軍。」

「我の名前を知っているのか?……お前、アフロディテの娘だな?……いや、その前にお前、半年ほど前までいたメイドの1人ではないか?」

「あら、覚えて貰えているとは光栄ね、その通りよ。」

「……薄々感じてはいたが、やはりお前だったか。ここにいるモンスターはどうした?」

「俺たちが殲滅したよ。お前らに、この世界を生きている魔族の命を無闇に取らせるわけにいかねえからな!」


ギョロッ。

獅子のシャープの目が大きく見開かれる。


「そうか、お前たちが。……いいだろう、お前たちは城にまで向かうつもりなのだろう、レイヴァー。」

「そうです。あなた達がやろうとしていることを、あたし達は止めたい。ハデスとハーデンの作り出す世界は、危険すぎます。」

「なら、我はここを通すわけにはいかないな。我を倒してから行くがいい、計画を邪魔するもの達よ、かかってこい。」

「そうね、あなたが邪魔をするなら私たちは私たちの道を切り開くーー。」

「ちょっと待ってくれ、この戦い、俺にやらせてくれ。」


クロウがタイマンを申し出る。


「クロ、私たちには時間がない、全員で戦うのが最善の選択だと思うが。」

「時間がないのは分かってる、けど、こいつとは1対1でやり合いたいんだ。頼む、俺に時間をくれ。」

「お前、我とタイマンを望むか、わざわざ1人で戦う必要などないものを。」

「分かったわ、5分よ、それ以上かかるなら私たちも参戦するわ。」

「ありがとうな、アーシェ。」


チャキンッ。

クロウは2刀を抜く。


それに合わせて、シャープも大斧を構える。


「お前、我を舐めているのか?」

「違えよ、魔族の強さはアーシェで実感している、ただ確認したいことがあってな、ちょっと付き合ってくれよ。」

「いいだろう、我はシャープ。お前の名は。」

「クロウガルトだ。」

「良い名だ、では始めようか。」



スサーッ。

2人の間に緊張の風が吹く。



次の瞬間、


ガギーンッ!

大斧と2刀が鍔競り合う。


「良い反応だな、流石レイヴァーのリーダーということか!」

「褒めても何も出ねえぞ、時間がねぇ、一気に上げて行こうぜ! 空の光ソラノヒカリ四式シシキ月光ゲッコウ!」


ガギーンッ!

ジャンプ斬りを大斧で問題なく受け止める。


「ふんっ、そんなものか!」

「そう慌てるな、まだ10秒も経ってないぜ!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

2人の戦いは徐々に熱を帯びていく。


「いいのかい、アーシェリーゼ、クロウにこんなことをさせて。」

「……これは私の直感でしかないのだけど、クロウには何か考えがあるように思えるの。だから、私は信じてみたい、皆もお願い、5分だけ見守って。」

「アーがそういうなら、力を貸す方が野暮だな。周りにモンスターが出てこないか、そっちの注意をしておこう。」

「ありがとう、みんな。」


(クロウ、あなたも感じたのよね。シャープの違和感に、もしそうならあなたが何をしようとしているのか分かる気がする。信じているわよ。)


クロウとシャープの戦いは1分を経過した。

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