第317話 町を襲うもの
閑散とした光景に、レイヴァーは唖然としてしまった。
どの国に入ったときも、自然は豊かで町も活気が満ちているところが多かった。
だが、スパルタにはその様子は全くない。
「アーちゃん、スパルタってこんな国じゃなかったよね。サリアの記憶にあるスパルタは、もっと自然が多かった気がするんだけど。」
「その通りよ、サリー。私が逃げ出した時も、こんな有様じゃなかった。この辺りには、スパルタの中でも危険とされているモンスターだ沢山いた、だから入った瞬間に襲われるんじゃないかとすら予想していたのだけど、予想外ね。」
「しかもこの枯れ方、魔力を吸い取られてるよ。サリアの植物魔法が全く反応しない、みんな何者かによって死ぬまで魔力を吸い取られた後。」
「こんな大規模なことを、ハデス達がやったってことか、ふざけやがって。」
ズザッ、パキッ。
枯れた森を歩くと、枯葉や脆い枝がむなしく音を放ち崩れる。
この森は、死んでいる。
その言葉が当てはまる状況だ。
「この様子じゃ、この先の町も危険だよね、ハデスとハーデンが作りだそうといている白き世界に必要ないものは、排除されてしまう。」
「そんなこと、させるわけにいくか。彼らは、自分たちが中心で世界が回っていると認識している、それは勘違いだと僕たちで刻み込んであげないと。」
「急ぎましょう、まだ助かる命があるなら必ず助ける。一番近い町は、ここから1㎞もないはずよ!」
「皆、そこまで走ろう!」
ミラを先頭に、レイヴァーは近くの町まで走る。
ここは、スパルタのとある町。
「うぁぁ!!」
「誰か!助けてーー。」
グシャンッ!
角が生えた魔族たちが、猛り狂うモンスターに襲われている。
サーベルウルフや、アリゲイルなど本来森の近くに生息するモンスターたちが町を襲撃していたのだ。
「何でだよ、何でモンスターがこんなに!」
「早く逃げるぞ!」
「逃げるたって、どこにーー。」
ザシュ!
さらに目の前の狼の魔族がアサルトビーに突き刺される。
モンスターの様子もどこかおかしい。
襲っているのは間違いないが、ただ襲うだけでその後は何もせずに次の獲物を狙う。
捕食するために襲っているわけではないようだ。
「く、来るな!」
「キシャァ!!」
アサルトビーが目の前の魚の魔族を殺そうとした瞬間、
「燃やせ!
ボァァ!
炎の弾丸が、アサルトビーを焼き尽くす。
「な、何だ!?」
「やっぱり、町を襲ってやがったか!
ジャキンッ!
折りたたみ式の剣の居合斬りがサーベルウルフを斬り裂く。
そう、レイヴァーが救援に来たのだ。
「全員、各個モンスターを排除する!町の魔族の救出が最優先だ、いいな!」
「了解!」
クロウの合図とともに、全員が散会しモンスターを駆除し始める。
「誰か、助けて!」
「やらせないよ!
ジャギンッ!ジャギンッ!
踊っているかのようなダガーの攻撃が、サーベルウルフを殲滅する。
「このこたち、何かおかしい。戦うっていうより、戦わされている?」
「エ、エルフが、何で。」
「早く建物の中に逃げて!また来るよ!」
「わ、わかった!」
サメの魔族は家に避難する。
(まさか、かなり前に見かけたモンスターを操っていたチップを全モンスターに埋め込んだ?いや、そんなことは不可能に近い、モンスターが生まれる原理を理解できていないんだから。だとしたら考えられるのは……洗脳?)
「
バヒュンッ!
拳から放たれた斬撃が、アサルトビーを打ち落とす。
「数が多いのも不思議だし、何より一般的な個体よりかなり好戦的だ。まるで、襲うことを楽しんでいるようにさえ見える。何が起こっているんだ、こんなこと蠢く会だけではできない、魔族側に何かあるのか?」
レイヴァーは、各個モンスターを殲滅していき、町の被害を最小限に抑えた。
だが、この襲撃により何人もの魔族が傷を負い、死に追いやられてしまった者も複数。
町の人々の治療を手伝いながら、アーシェは情報を手に入れていた。
「いきなりこんな襲撃が起きたの?」
「いいや、なんか大きな魔力を感じたんだ。城の方から国全体に放たれたようにも見えた、そしたらモンスターがいきなり押し寄せてきて、俺たちの魔法じゃ歯が立たなかったんだ。」
「魔法で倒せない……あなた呼吸が苦しかったり普段と違うことが起きてたりしない?」
「言われてみれば、体がなんか重い気がするな、魔法を使おうとすると特に怠さみたいなものを感じる。」
「……そう、さぁ治療は終わったわ、安静にしてて。」
「ありがとうな、戦士の姉ちゃん。」
アーシェはとある推測を立てる。
(私やサリーの魔法は問題なくモンスターに効いていた、好戦的なモンスターではあったけど強化されていたわけではない、ということは、魔族の方を弱らせたってことよね。まるで、血のホワイトデイの時と同じように。)
魔族は戦闘力が高く、他の種族よりも特に魔法は得意のもの。
そんな彼らを襲った、スパルタで起きている事象とは。
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