第316話 荒れ果てた地
レイヴァーは、決戦の日の朝を迎える。
日差しが照り付け、彼らの出発を後押ししているように見える。
起用した後、朝食をとり、必要なものを準備しスパルタに入る準備を着々と進めていた。
そんな中、アーシェがクロウに近寄る。
「クロウ、少しいいかしら?」
「ん?」
「少し、場所を変えたいの。」
スタッ、スタッ。
2人はキャンプの位置から少し離れた場所に移る。
その時には、クロウはすでに感じ取っていた。
「アーシェ、不安だよな。」
「え?」
そう、アーシェの後ろ姿を見ただけでいつもと違うことを感じていたのだ。
「さすが、私のパートナーね。私らしくないかもしれないけど、これが最後の戦い、両親を救える唯一のチャンス、分かっているのに……怖いの。もしかしたら、失敗するんじゃないかって。」
「確かに、アーシェらしくないな。いつもなら、前向きになんなら俺の事をウェルダンにする勢いで真っ先に突き進むのに。」
「ちょっと、そこはフォローしてくれるのが普通ーー。」
「大丈夫だよ、俺がいるから。」
真剣な眼差しでアーシェを見つめる。
その目に、アーシェは釘付けになる。
「自信たっぷりな目ね、何があなたをそこまでさせるの?どんな敵か分かっている、戦力が足りないのも分かってる、成功確率が低いのは確定しているのに、その目には希望しか宿っていない。」
「そんなの、俺たちだから出来るって思ってるんだよ。これまで、テーベ、エリュシオン、アテナイで死んでもおかしくない状況を生き延びてきた。半年も満たない時間で、多くの事を経験してきた。」
「そうね、濃密すぎる、そして危険と常に隣り合わせの時間を過ごしてきたわね。むしろ、危険じゃない日があったか覚えていないくらい。」
「けど、俺たちは今を生きてる。だったら、次の戦いも勝てない道理がどこにある?俺は1人じゃない、アーシェも1人じゃない、俺たちはレイヴァーだから生き残ってこれた。俺の自信の根拠は、俺たちの存在そのものだ。ここ、重要、上書きしたか?」
クロウのいつもと変わらない姿に、アーシェは安心感を抱いていた。
(そうね、何も変わっていない。レイヴァーは6人いる、なんなら私たちを助けてくれるかもしれない人達もいる、もう私は孤独じゃない、大切なパートナーが、信頼できる仲間がいる。不安に思う必要なんてないわね。)
「ありがとう、クロウ。あなたのおかげで、少し楽になった気がするわ。最後だからって、気負いすぎてたのかもしれないわね。」
「だから言っただろ、1人で背負い込まないで俺にも背負わせろって。俺、一応アーシェの婚約者だぞ?」
「そうね、こんなに頼りになる人だったなんて気づかなかったわ。私も視野が狭くなったものね。」
「褒めると見せかけてしれっとディスるのはやめてくれ、俺のガラスのハートが傷つく。」
「これくらいじゃ何ともないでしょ、あなたは鋼のメンタルを持ち合わせてるんだから。行きましょう、最後の地へ。」
クロウとアーシェは4人の元に戻る。
「戻ってきたか、2人共。準備はいいか?」
「ああ、ミラ、先陣は任せるぞ、俺の最強の盾になってくれ。そしたら、俺は最強の矛になれる。」
「任せてくれ、私の後ろにいれば何も問題ないと証明して見せよう。」
「作戦は、リィンに任せるわね。あなたの頭脳、そして努力の結晶、期待しているわ。」
「はい、あたしの持てる力全て出し切ります!」
2人は決意を示す。
「ノエル、正直あいつらに思うことは多くあるかもしれない。けど、一時の感情に呑まれないように気を付けろ。困ったときは、俺たちを頼れ。」
「ありがとう、僕をまたレイヴァーに入れてくれて。この力、最後までレイヴァーに尽くすと誓うよ。」
「サリーは、皆のバックアップをお願いね。あなたの視野は誰よりも広くて、気も遣える。私たちの支えの源はサリーと言ってもいい、最後までよろしくね。」
「任せて!サリアもエリカもいつも通り、全力で行くから!」
「そんじゃあ、スパルタに入るぞ!」
レイヴァーは国の境界線の前に立つ。
境界線の結果には、アーシェが触れる。
すると、
パリーンッ!
結果が砕け、誰でも入れるようになる。
「決壊が砕けた!?あたし達だけが通れるだけでよかったのになぜ?」
「スパルタの結界が脆くなりすぎているみたい。急ぎましょう、嫌な気しかしないわ。」
レイヴァーは小走りでスパルタに入り、王国まで向かう。
数分走ったところで、衝撃的な光景を目にする。
「なに、これ。」
アーシェの口からこぼれた言葉の意味。
辺りの木々は枯れ果て、植物は全て茶色に覆われ、生きている植物は0と言っても良い光景に。
さらには、モンスターの姿もなく半年前にアーシェが逃げ出した時の情景とは、真逆のものになっていた。
スパルタで、いったい何が起こっているのか。
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