第305話 魔族と蠢く会

スタタタタッ。

アーシェとミラは魔力の乱れを感じた現場に近づいていた。


「魔力の乱れとは、どのようなものなのだ?」

「簡単に言えば、ついさっきまで存在してたものがなくなるような感覚よ。目の前に置かれていた椅子が、一瞬で消えるようなものね。」

「なるほど、それが人間で例えられるとなると、魔力が急に消えたということであっているか?」

「ほとんど正解ね、この先に多くの人達が倒れている元凶がいる可能性が高い、クロウ達がくるまで時間を稼ぐわよ。」

「了解した!」


2人が先に向かうと、


「っ!?あれは、確か。」

「出てきたわね、ハーデン!」


目の前から禍々しいオーラを纏いながら歩いてくるハーデンの姿が。


その体は以前にも増して大きくなっており、魔力量も桁違いに上がっていた。


「今の私たちでは、ハーデンとやりあうには分が悪いな。」

「そうね、けどまだこちらには気づいていないみたいね。後なに、この違和感は、あのハーデンからは魔力を感じるけど人という存在感がないわ。」

「どういうことだ?あれはハーデンなのは間違いないだろう、それが本人じゃないっていうことなのか?」

「何とも言い難いわ、ハーデンの形をした何かっていうのが今出せる判断かしらね。」


2人が様子を見ていると、


シュインッ!シュインッ!

家の中から魔力を引き抜く姿が、アーシェの目に映る。


「やっぱり、あいつが魔力を奪っている根源よ。また魔力の乱れが生まれた、これ以上被害は出せない、ミラ!」

「クロたちがくるまで耐えるしかないな、任せてもらおう!」


ズザッ!

2人はハーデンの前に飛び出す。


「やめなさい、ハーデン!あなた、何をしているか分かっているの!」

「ほぉ、俺の前に姿を見せるとはちょうどいい、魔族の魔力はニューマンと桁違いだからな、ぜひ手に入れたいものだ。」

「ならまずは、魔力を持ち合わせていない私と話し合おうじゃないか、蠢く会のリーダー!」

「ん?アレスではないオールドタイプ、そうか、お前が報告に上がってた狼の仮面か。いい、実にいい、今欲しいものが目の前に2つもあるとは!」

「そう易々と渡すつもりはないわよ、ハーデン! 爆ぜなさい!爆焔華アマリリス!」


ボアァ!

バゴンッ!

大きな火球がハーデンに突き進む。



しかし、


シュインッ。

その体を通り抜け、奥の道に着弾し爆発する。


「っ!?魔力がすり抜けた!?」

「どんなトリックか知らないが、こっちはどうかな! 始の光イチノヒカリ金剛の一撃アルデバラン!」


ブンッ!

バギーンッ!

大きく振り下ろした大斧は、地面を砕く。



ハーデンには、全く傷が付けられていない。


「なにっ!?」

「じゃまだ、魔力無しが!」


ガギーンッ!

ハーデンの拳が迫る。


咄嗟に大斧で弾こうとすると、


シュンッ。

ズザーッ!

ミラの攻撃はすり抜け、ハーデンの拳はミラの腹をとらえ吹き飛ばす。


「うはっ。」

「ミラ!」

「大丈夫だ、直撃は免れた。」

「ほう、そんな大きい斧を振り回しながら、攻撃が当たらないことも予測して体を反っていたか、なかなか頭がキレるじゃないか。」

「アー、あれは何だ。こっちの攻撃は届かない、なのにあっちの攻撃はこちらに届く、そんなことが可能なのか。」


2人は戦闘態勢を継続。


「正直、あんな奇妙な存在は初めて見たわ、分が悪いとか倒しづらいってレベルじゃない、倒すことが不可能な存在なんて。」

「どうする、一旦退くか。」

「でも、私たちが逃げたらもっと多くの人が死ぬことになる、それはなにがあっても避けないと。」

「ほう、魔族の娘が、いや、前魔王の娘がそこまで他国の人を気に掛けるとは、変わってしまうものだな。」

「っ!?そこまで知っているのね、あなたは。」


さらに警戒を強めると、


「アーシェ!ミラ!」

「あれは、皆さんあれがハーデンです!」

「姿は初めて見たよ、嫌な雰囲気出しまくりだね。」


クロウ、サリア、ノエル、リィンが合流する。


「みんな、ありがとう間に合ってくれて。」

「あいつは、どう見てもハーデンだよな。アーシェ、ここで決着をつけれるか?」

「いえ、それは難しいと思うわ。私の魔法も、ミラの物理攻撃もすり抜けてしまうの。おまけに、あっちの攻撃は私たちに届くと来たわ。」

「なんだそのチート?一方的に殴れるってことかよ。」

「かといって、野放しにしていたら今倒れている人たち以上に被害が出ちゃうよ、どうすれば……。」


ハーデンは、レイヴァーが揃ったのを確認すると、歩みを止める。


「久しいな、アレス。いや、烏に選ばれし者というべきか。」

「ハーデン、お前は白き世界を作るためにどれだけの犠牲を生むつもりだ!仲間も、肩端から道具のように使い捨てやがって!」

「奴らも喜んでいるだろう、私の贄になれたことを。ちょうどいい、お前たちにも見せておこうか、白き世界が何なのかを!」


ガガガガガッ!

地面が途端に揺れだす。


「なんだ、この揺れは!?」

「っ!?空を見て!」


空には、大きな液晶の様なものが魔法で作られていた。


そこに映し出された者は、


「生きていたのだな、アフロディテの娘。」

「そんな、あんたは、ハデス!」


アーシェが因縁の敵、ハデスと顔を合わせた。

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