第300話 真の力

「お前ら、おれ、殺す!」


バヒューンッ!

オーガから放たれる圧力は、辺りの壁や柱にヒビを入れるほど。


「おいおい、マジかよ。ゴーレムの最終形か、今までのやつと雰囲気だけじゃねえ、殺気も比じゃねえほど溢れてやがる。」

「一般の戦士だったら、この殺意だけで意識を持ってかれてしまうわね。それに、魔力も今の私より大きいわ、この魔力を制御できる身体を持ってる時点で危険だわ。」

「やるしかないぞ、私とクロで前を抑える、遠距離をアーが、リィンはサポートに回るのでいいな!!」

「はい、みなさんお気をつけて!」


ズザッ!

クロウとミラは大剣と大斧を構えて突き進む。


「まずは力量を測るぞ! 獣の声ケモノノコエ七式ナナシキ海人の舞セイレーン!」

「その必要があるかわからないがな! 参の光サンノヒカリ覇王の咆哮レグルス!」


グルンッ!

ガギーンッ!

2人の回転斬りがオーガを襲う。



だが、


2人の攻撃を、右手と左手で容易く受け止める。


「おいおい、俺たち真面目にやってるんだけどな!」

「相当の力だ、私たちも力を上げるぞーー。」


バゴーンッ!

ポロポロッ。

2人の攻撃を弾き返すと共に、壁に打ち付ける風圧を放つ。


その攻撃は、ぶつけられた後に何をされたか認識をするほど、早いものだった。


「クロウ!ミラ!」

「えほっ、アーシェ!前!」


シュンッ!

アーシェの眼前まで、1秒もかからずに現れる。


「くっ、 弾け飛べ!闇の波動ダークパニッシャー!」


バゴーンッ!

オーガの拳を、闇魔法で弾く。



(なに、この力。物理攻撃に魔力が乗ってる、一撃でもまともに受けたら死んでもおかしくないわ。)


シュンッ!

さらにもう1本の拳が迫る。


「間に合わなーー。」

紫龍シリュウ龍打リュウダ!」


ドゴンッ!

リィンの槍の突きが、アーシェに拳がぶつかる寸前で弾く。


ズザーッ!

しかし、風圧を受けた2人は10mほど吹き飛ばされる。


「リィン!アー!」

「近寄らせるかよ! 歓喜の鎖ラックチェーン解除リリース。」


パリンッ!


瞬発力の上限を解放し、オーガの背後に迫る。


その姿を予測していたのか、クロウに足蹴りが迫る。


「いい反応だ、けど、俺のほうが早い! 拳の響ケンノヒビキ九式キュウシキ雷襲ライシュウ!」


ズザッ!

ドゴンッ!

スライディングしながら、足蹴りを避けるとともに殴り上げ、さらに蹴り飛ばす。


続けて、


エンジン全開フルスロットル! 伍の光ゴノヒカリ不滅の波動アタナシア!」


バゴーンッ!

1mほどの斬撃が、オーガを壁に叩きつける。


「少しは効いたか、オーガ!」


ズザッ!

壁からオーガは無傷で出てくる。


「ははっ、物理じゃダメってか。」

「なら、うちの魔法担当ならばどうかな!」

始まりの力ファーストギア入力オン! 天まで響け!終末の斬風波ラストノヴァ!」


ヒュイーンッ!!

ドゴンッ!

手のひらに風魔法の弾丸を作り出し、スナイパーの如く撃ち出す。

着弾するとともに、大きな爆発が。


「手応えはあったわ。……けど、この感覚は。」

「お2人とも!こちらに退がって!!」


リィンは危険を察知し、クロウとミラを呼び戻す。



次の瞬間、


バゴーンッ!

オーガの体から放たれた爆風が、辺りの窓ガラスを吹き飛ばす。


その威力は、受けなくとも危険なのはよく分かる。



「ありがとうよ、リィン、危うくミンチになるところだった。」

「嫌な雰囲気を感じとりました、ただそれ以上に危険なのは、これだけの攻撃を受けても無傷なことです。クロウさん、アーシェさん、ミラさんの攻撃を受けて無傷な存在は、今まで見たことありません。」

「私たちもこの力をキープするのは得策ではない、だとしたら。」

「2人には、仮面の力を使ってもらうしかなさそうね。それでも、あいつに傷をつけられるか。」

「もう1つ気になることがあります、あのオーガ、ダメージを負うごとに力が増してるように感じます。もしかしたら吸収してる可能性も。」


ヒュイーンッ!!

バゴーンッ!

4人目掛け、風の弾丸が放たれ、二手に別れさせられる。


「クロウ!リィンの言う通り、確かに圧力が増してる気がするわ。これ以上力をつけられる前に、スピード勝負をかけた方がいいわ!」

「だけど、俺たちは耐えられたとしてもリィンはどうなる!さすがに、生身の状態じゃ耐えきれないーー。」

「それはご心配いりません、あたしはレイヴァーに入ると決めてから、常に自分を強くしたいと考えてました。そして、ジュールさんとミラさんのおかげで、ここまで辿り着けたんです、ここで披露します!」


スタッ!

リィンは槍を横に構え、呼吸を整える。


魔力が体の周りを舞いだし、辺りの空気が張り詰める。


「なんだ、この力、俺たちの誰も出せない力だ。」

「リィンは、本当に真剣だった、下手したら死んでしまう可能性があった中で、アテナ家の槍術をマスターした。見てみよう、彼女の真の力を。」


オーガもリィンを見つめる。




そして、



「あたしに宿れ!昇天龍ノボリリュウ!」


バゴーンッ!

リィンの力が解放された瞬間だ。

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