第299話 新たな形

ラストは、クロウ達の前に立つ。


「あれが、ラスト王なんですよね、あたしは見たことないのですが、やはり本物なんでしょうか。」

「俺の記憶にあるラストは、あの見た目のまんまだ。けど、生きてるはずは。」

「レイヴァーよ、悪いことは言わん、私に降伏するのだ。そうすれば、命はもちろんこれから先の未来まで保証を約束しよう。」


ラスト王が、初めてレイヴァーの前で口を開く。


その姿からは、他と変わらない人間と同じものを感じる。


「降伏だと?俺たちが降伏すると思ってるのか?さっきまでの話を聞いてないわけじゃねえだろ!」

「もちろん、君たちの言っていることも分かる。だが、この世界がもうもたないところまで来ている、このままでは世界が壊れてしまう。」

「世界が壊れる?何を言っている、アトランティスは4つの種族でしっかりと回っている、むしろ壊そうとしているんだろ、蠢く会が!」

「君には分からんか、ハーフの。この世界は、人が増えすぎている、そのせいで世界が衰退していることに。」

「衰退ですって、それがあなたの目に見えてる世界なのね。確かに、常に繁栄し続けている国は存在していない、けど、それが白き世界を作っていい理由にはならないわ!」


レイヴァーとラストの会話中、リィンはとあることに気づく。


(待って、ラスト王はオールドタイプのはず、じゃないとクロウさんだけが知っているという辻褄が合わない。現に、あたしはあの人を知らない。じゃあなんで、)


「降伏しないのなら、こちらも手加減なしだ。邪魔する者を排除することになる。」

「元から、殺す気だったくせによく言うぜ。」

「どうせ、私たちを捕まえたところでゴーレムの実験台にしたいだけでしょ、そんな未来を私たちは望まないわ。」

「皆さん、少しあたしに時間をください。」


スッ。

リィンが王に近づく。


「なんだお前、お前だけでも降伏するか?」

「ご冗談はおやめください。蠢く会に聞きます、ここにいるラスト王は、偽物でもゴーレムでもない。」

「何言ってるの、ここにいるのはアテナイを治めてるラスト王よーー。」

「それは嘘です。ラスト王からは、おかしいですよね、王が生きてる時はまだあたし達ニューマンは存在してなかった。ただ、ゴーレムとも違う存在、考えたくはないですが、あなた達は


リィンの言葉に、蠢く会は何も答えられない。


「ねぇ、リィン、蘇生ってそんなことができてしまうの?そんな魔法を私は聞いたことないし、ラスト王は、10年前に亡くなっている、それをどうやって……もしかして、ゴーレムを作る時に生まれる生のエネルギー!?」

「その可能性を考えました。ゴーレムは、複数の生命を犠牲にして誕生している、その場合、過程の中で魔力とは違う生命のエネルギーが生まれる、もしそれを貯めておくことができるとしたら。」

「はぁ、これだからレイヴァーはもっと早く消しておくべきだと言ったんだ、ハーデンは警戒が弱い。そこまで辿り着くのなら、あたし達がとる行動はこれだけよ!」


パチンッ!

ライラが指を弾くと、


「うぐっ、ライラ、何をした!」

「我らの、体の自由がきかない、何が起きてる。」


胸に手を当て、キルシャスとドートが苦しみ始め、ライラは笑みを浮かべる。


「なあに、安心しなさい。あなた達は、この世界の救世主になるだけよ、誇り高いとして生まれ変わりなさい!」

「ライラ、貴様!」

「俺たちをはめたのか!」

「うるさいぞ、贄共よ。」


スッ!

ドゴーンッ!

ラストがキルシャスとドートに触れる。




すると、闇の魔法が波のように流れ出し、自分諸共3人を覆う。


「あいつ、何をした!」

「この魔力は、普通じゃないわ、生き物が持ち合わせていいものじゃない、悍ましいとかそんなレベルじゃない、危険な感覚。」

「やってくれるな、蠢く会は。仲間を仲間とも思わない下衆な集団が、3人で1体な存在になろうとしている。」

「そんな、てことは目の前の生き物は……。」


バサッ!

闇が祓われ、そこから人型の何かが現れる。


体は紫色の金属のようなもので覆われ、目がなく、全身尖った形状をしている。


加えて、両腕には鎌のような鋭利な武器が付けられており、もはや人のそれとは言えないものに。


「この圧力、今まで出会ってきたどの存在よりも危険で、邪悪だわ。」

「これも、ゴーレムなのか!?」

「ゴーレムなんかと一緒にしないでちょうだい、これがあたし達の求めた生の完成系、オーガよ!!」


レイヴァーとオーガの戦闘が、始まる音が聞こえた。


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