第298話 王の姿
クロウとミラは、キルシャスとドートを追いかけていた。
「彼らは、どこに向かうつもりだろうか。」
「城の構造はあまり覚えてねえけど、たぶんこの先は王座の間だったはずだ、そこに向かってる可能性が高いな。」
「王座の間か、そこにいる人物といったら、ラスト王と最悪はハーデンもいるかもしれんな。」
「いいや、むしろ好都合だ。あいつがどれだけ重い罪を犯しているのかを、体に教え込んでやれるチャンスになる。後は、あのラスト王は何者なのか、この目でしっかりと見ておかないとな。」
スタタタタッ。
2人がたどり着いたのは、鉄の扉を金色で覆っている高さ5mはあるであろう扉の前。
予想通り、王座の間の前にたどり着いたのだ。
「この奥に、あいつらはいる。走った跡も、匂いもする、間違いねえ。」
「なら、2人で突っ込むか?それとも皆を待つか?」
「少しでも早く進みてえけど、俺たち2人で倒せない可能性もある。アーシェ達が来てくれればーー。」
「あら、呼んだかしら?」
スタタタタッ。
後方から、アーシェとリィンが追い付く。
「アーシェ、リィン、ナイスタイミングだ!サリアは?」
「ノエルさんと、戦っています。先ほど、お2人のものではない魔力が出てきて、大きな爆発なども聞こえました。もしかしたら、第3者が現れた可能性も。」
「だとしたら、ホルムだろうな。サリのことだ、ホルムなんかに負ける存在ではないし、ノエを信じてみていいと思うぞ。」
「ミラは何でそう思うんだ?」
「細かい話はあとでしよう。今は、私たちが為すべきことをする、この先にいる蠢く会と話をしようではないか。」
ズンッ。
4人は扉の前に立つ。
「それじゃあ、いくぞ!」
ガガガガッ!
大きな鉄の扉を開くと、そこには予想通りのメンツが顔を揃えていた。
「やっぱり来たね、レイヴァー!」
「当たり前だろ、ライラ。てめぇらをもう許すつもりはない、ここで終わらせるつもりでいるんだよこっちは!」
「怖いねぇ、烏は。あたし達をこの世界から消したら、どれだけの人が喜ぶと思ってるんだい?」
「数えきれないレベルだろうよ。お前たちが作り出してるゴーレムに、何人が被害を受けていると思ってやがる!」
「ゴーレムか、あれは救いの手段なんだよ、この世界で省かれてしまうやつらのね!」
ライラは声高らかに掲げる。
「何が助けよ!ゴーレムは、人間とモンスターを融合させた人工モンスター、私たちは彼らの苦しみの声を聞いた、助けてほしいってね!」
「それは、ゴーレムからなのか?俺たちの考えは違うな、この世界から助け出してほしいだけだろ!ゴーレムになって、嬉しくない奴はいねえんだよ!」
「なぜそんなことが分かるんです!あなた達は、人間の姿からゴーレムを見ているだけ!ゴーレムになった人達がどう思っているかは分からないでしょうに!」
「なら、罪を犯して殺されることになった者たちを、お前たちは見るだけで済ますつもりか?我々は、そんなことを許すつもりはない、死んでいい命なんてないのはおぬしたちも分かっているだろ!」
「確かにその通りだろう。だが、罪を犯した者は償わなければならない。でなければ、この世界は秩序のない、人が安全に暮らせる場所がなくなってしまう。そんな世界を作るつもりか!」
レイヴァーと蠢く会の言葉のぶつかり合いがさらに熱を帯びる。
「だからこそ、白き世界を作るのさ!選ばれた人のみが生き、安全も秩序も保たれた完璧な世界!」
「その世界を作るのに、何人の人を死なすことになるのかも考えてみろ!その命を犠牲にした先に、生きていく人は多くの十字架を背負うことになる、それがどれだけ辛いか考えているのか!」
「十字架?そんなことは関係ない、死んでいった者たちの事を忘れずに背負っていくということがどれだけ愚かなことか、お前たちは分からんのか!目に見えないものに、足を引っ張られて生きていくことに何の必要がある!」
「過去の偉人たちがいたから、この世界は出来上がっているのよ!その人たちのことを尊敬できずに過ごしていくなんて、それこそ愚行だわ!」
2組の論戦は終わりがきそうにない。
「なるほど、やはり私たちの最大の癌はあんた達レイヴァーなのは変わらないわね、だったらやることは変わらないわ!出てきなさい、ラスト!」
シュインッ!
闇のゲートが生まれ、そこからラストが姿を現す。
「ラスト、王。」
ラストの顔はクロウの記憶にあるものと全く違わない。
果たして、ラストは生きていたのか。
それとも……。
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