第294話 乱入
ノエルの一撃は、ホルムの眼前に。
「やるつもりか、ノエル!」
「ホルム兄さん、サリアリットを殺す必要はなかったはずだ!!なぜ、なぜこんなことをしたんだ!
スッ!
ガゴーンッ!
ホルムへ向け、地面を砕く一撃が放たれる。
「おうおう、俺は仲間だぞ、お前の兄貴だぞ、俺を殺すつもりか?」
「そうなっても仕方がないと思っているさ、ぼくは今更気づいたんだ。」
「あっ?何をだよ。」
「僕は、兄さんを追い続ける、僕をアイアコス家の呪縛から解き放ってくれた兄さんに追いつくことで、生きる道を見つけられると思ってたから。けど、それは違かった。」
「何言ってるんだ、俺に追いつく??ふざけるな、そんなことを考えてたのか、生意気な弟が!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
2人の拳が、激しくぶつかり合う。
「ホルム!僕は、もう迷わない!この拳は、脚は、大切なもののために、自分が信じるもののために、使う。あんたをぶん殴って、サリアリットの敵討ちをする!」
「何言ってやがる!こいつはレイヴァーだ、殺されて当然の奴らだ!俺たちが蠢く会を動かす主力、お前もその1人になってるんだ、今更俺たち家族を裏切るつもりか!」
「本当に家族だと思うのか!アークは、僕の目の前で仮面によって殺された!もうホルムと一緒にいる事にこだわらない。僕の友を、大切な仲間を殺した憎き集団を、僕がグチャグチャにしてやる。」
「同じ蠢く会のメンバーがふざけたことをーー。」
「僕は、クロウガルトを主人にして、この世界の全てを解き明かす未来の光、レイヴァーの、ノエルランス・アイアコスになる!!蠢く会を壊し、世界の真相を突き止める!!」
ゴスンッ。
高速な蹴りが、ホルムを10mほど吹き飛ばす。
その一撃は、ホルムの予想を上回るものだった。
「はっ!裏切ったところで、お前も殺せば終わりだ!それと、お前に最後にアドバイスをやるよ。」
「なんだ。」
「いつも選択が遅いんだよ、お前は!そこのエルフは、お前が選択を間違えたから死んだんだよ、お前が捕えるか、俺にバレないように細工すればどうにかなったものを、その判断が遅すぎなんだよ!!」
「……それはホルムの言う通りだ。僕は、取り返しのつかないことをした、これは僕の罪だ。だから、自分の墓まで背負っていく!後は、レイヴァーの敵になるあんたを、この手で裁くだけだ!!」
バヒューンッ!
ノエルの体が魔力で覆われ、腕と足の筋肉が一時的に鉄球を入れたかのように大きくなる。
そして、
「僕は、僕の全てをかけてあんたを倒す!
シュンッ!
体の筋肉が部分的に膨れ上がり、風を置いてくるスピードでホルムに迫る。
「てめぇ、そんな技をーー。」
「
ガガガガガッ!
ホルムの全身を、目に見えない早さで連続の拳で打ち抜く。
「うはっ、舐めるな、生意気な弟のくせに!」
「クソ兄貴を、止めるにはこれしかないんだ!
スッ!
ガギーンッ!
空高く飛び、回転すると共に連続蹴りを浴びせる。
ホルムは拳で全てを弾くことはできず、そのまま家の壁に突き刺さる。
「げほっ、はぁ、はぁ、なるほどな、俺の知らねえところでこそこそ強くなっていたってことか。」
「僕は、1人でホルムを連れ戻すにはハーデンを、蠢く会を壊す必要もあると考えてた、だから鍛えた、強くなる為に。その時、レイヴァーに侵入するように言われた。そこで、僕より強いクロウガルトやアーシェリーゼと出会った。」
「まさか、ひよってレイヴァーを殺すのをやめてたのか!」
「違う!ただ、羨ましかったんだ。クロウガルト達は、僕なんかよりも辛い待遇の中で、笑顔が絶えない生活をしてた。そんな彼らの中に、僕も入りたいと思ってしまったんだ。」
ポロポロッ。
ホルムは体についた家の破片を吹き飛ばす。
「それで、目の前でエルフを殺されて決意したってのか、やっぱり選択が遅いな、お前は!そして、愚かなやつだ、俺に勝てると思ってるなら大間違いだからな!!」
「今の状況で、僕を倒せるようには思えないけど。」
「さあて、それはどうかな。」
パカッ。
ホルムはポケットから、緑色の液体の入った瓶を取り出す。
「なんだ、それは。」
「これは、俺のためにハーデンが作ってくれた最強になるためのアイテムさ!ノエル、お前にも作ってやって一緒に世界を壊そうと思ってたのによ!」
「ハーデンのもの!?だめだ、ホルム!!」
「もう遅い!」
ゴクンッ!
緑色の液体を飲み、瓶を投げ捨てる。
ドクンッ!
ホルムの体から徐々に蒸気が上がる。
ホルムの体に、何が起きたのか。
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