第290話 キルシャス
まずは、クロウとキルシャスが戦闘を始める。
キルシャスは2本の斧を得意としており、特に速さに長けている。
「やっとお前とやりあえて嬉しいぜ、アレス!!」
「俺はちっとも嬉しくねえよ、戦闘狂!
ガギーンッ!
2刀と2つの斧が激しくぶつかり合う。
通常の状態では、クロウの方が力は勝り、キルシャスの方が早さは勝っている。
「お前らも諦めが悪いな、この世界はもう腐りきっているってのによ!そこまであがく理由がどこにある!」
「腐りきってなんているかよ!テーベも、エリュシオンも、新しい光を見つけて前に進みだした!あいつらは、1度絶望を経験したくらいじゃ折れない、強い心を持ってるんだよ!」
「それは、お前たちレイヴァーがいたからだろう!お前たちさえいなくなれば、この世界は廃れるんだ!俺たちの前から消えやがれ!」
「いやだね、お前らの作る世界で幸せになれる人たちの姿が想像できない、だから俺はお前たちを止める!」
言葉と武器の激しいぶつかり合いが、辺りの壁や地面に亀裂を入れていく。
「気に入らねえな、何でお前らはこの世界に固執する!これまでも世界は変わってきた、その転換するタイミングが今だってことが何で分からない!」
「変化ってのは、より良い未来に向かうべき選択の1つだ。けどよ、お前らの作る白き世界は、選ばれた者しか生きられない多くの犠牲を生む選択だ!死ななくちゃいけない命なんてこの世に存在しないんだよ!」
「世界が変わるには、犠牲が必要なんだよ!お前らのやってる偽善とは違う、生きるべき存在といなくなるべき存在がこの世界にはあることを知りやがれ!」
ガギーンッ!
ドゴーンッ!
弾きあった2人が、壁にぶつかり壁の欠片がポロポロと床に落ちる。
2人共腕や頬に傷が生まれ、血が滴り落ちる。
「ははっ!お前も知っているだろ!ハーデンの作ろうとする世界は、多くのアテナイの人間に支持されている!だからお前は、アルクから追放されたんだろうが!」
「そうかもしれないな、ただそれは1つの町の総意なだけだ。アテナイも、多くの町で構成されている、ならすべての町から意見を聞いて次の世界を作るのがお前たちのとるべき選択じゃねえのか?」
「そんなものは必要ない、なぜなら俺たちが模範になってやるからな!生きるべき奴らが道を間違えないように、ハーデンを王に置き、俺たちがそいつらを導く道しるべになる。それで完璧な世界の完成だ!」
「完璧な世界、だと。……、ふざけるのも大概にしろよ、完璧なんてものはこの世に存在しない、お前たちが完璧だと思っているものは、今のお前たちが出せる限界値のものでしかない、それが完璧な保証はどこにもない!」
クロウの刀がキルシャスの腕を掠めれば、キルシャスの斧がクロウの足を傷付ける。
2人の均衡した戦いは、クロウが力を解放すればすぐに崩れるだろう。
だが、クロウの中にはただ蠢く会を壊すだけではいけない、実現しようとしている世界の危険性を伝えようとしているのだ。
「俺たちは、皆が弱者なんだ、弱いから多くの人と助け合って生きてる。お前たちもそうだろ!1人じゃ何もできない、だからハーデンについていっているんだろ!」
「弱者?何言ってやがる、俺たちはお前らなんかと違う!1人で何でもできる、出来る奴らが集まったのが蠢く会だ!それを理解できないのが、お前らのような弱者だ!」
「ふざけるな!お前たちは、神にでもなったつもりか!その歪んだ思想が、多くの者を傷つけた!アークだってそうだろ!お前たちの仲間だったはずのあいつは、髑髏の仮面をつけて死んでいった。それが、仲間のやることかよ!」
「あいつは急ぎすぎたんだ、力が欲しいから、誰よりも先に行こうとしすぎて死んだだけだ、俺たちのミスじゃない、ただのあいつのミスだ!」
バチバチバチッ!
刀と斧が鍔競り合う。
「お前たちの中で、アークが死んだことを悲しんだ奴はいるか?」
「ああ?なんだそれ?」
「簡単だろ、アークが死んで涙を流した奴がいるのかって聞いてるんだ!」
「はっ、いるわけねえだろ!あいつは勝手に死んだんだ、それはあいつが悪いこと、俺たちが悲しむ必要がどこにある?」
「そうか、それじゃあお前もアークと同じ道を辿ることになるぞ。死んだときのアークの顔は、苦しみに満ちていた。あの顔は、敵だった俺ですら頭にこびりついて消えない、それだけ苦しかったんだよ、死ぬその瞬間が。なのに、何でお前たちはアークの事を思うことが出来ないんだ!
チャキンッ!
グルルルルッ!
2刀を順手と逆手に持ち、竜巻を起こすような回転斬りがキルシャスを吹き飛ばす。
「えほっ、はぁ、やっぱり厄介だな、レイヴァー!」
「もう終わりにしようぜ、こんな戦いはよ!」
クロウとキルシャスが戦っている間、ミラとドートも激しい戦いを繰り広げていた。
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