第288話 実験体

2人がドアを開くと、そこには多くの機械設備が配置されていた。


魔力を使って動いているのだろうか、大きな管から離れたガラスの筒に魔力が送られているのが分かる。


「これって、蠢く会の実験部屋ってことだよな。」

「そうだろうな、魔力の感じられない私でも、この部屋は悍ましい何かが充満している。だとしたら、この管の先には何がある?」

「ミラ、この画面見てくれ、これってゴーレムだよな?」


クロウが指し示した画面には、体の全体と武器の構成、体の成分であろう表示と数字が羅列されている。


そして、画面中央下の部分には、クロウ達が見ても理解できる情報が。



媒体1、人族男大人

媒体2、巨人族男子供

媒体3、キラーアント


3つの名前が表示され、その名前の先には?の表示が。


「これって、この3つを融合させているってことだよな。」

「恐らくそうだろうな、そしてこのパターンで生み出されるものがあるということだろう。」

「人が2人とモンスター1体、どうやって融合するつもりだ……まさか、この管の先に?」

「可能性は高いな、行ってみよう。」


スタッスタッ。

2人は警戒を解かずに、先に進んでいく。


そして、もう1つの大きなドアの前に立つ。



「この先か、モンスターもゴーレムもいる気配はないな。」

「出迎えはないだろうが、拘束された状態の存在がいるかもしれない、油断するなよ、クロ。」

「ああ、行くぞ。」


ガチャンッ!

勢いよく扉を開け、先に進むと、


「っ!?なんだよ、この部屋は。」

「まさしく、実験施設だな。見ているだけで、イラつきが抑えきれん。」


2人の目に映ったもの、それは、



ガラスの筒の中に、モンスターや人が詰められており、青い液体で全身を覆われている姿。


まだ生きているのか、死んでいるのかは見た目で判断できない。



ただ、1つ確定して分かることがある。


先ほどの部屋で示されていた3つの実験体は、赤い液体に変わり徐々に体が消えていっている。


「ミラ!あれ、さっきの部屋にあったやつだ!」

「ここで融合させているようだな、あれを止めるぞ!」


ズザッ!

2人が走り出した瞬間、


パッ!

3つのガラスの筒の中身が消え去り、何も入っていなかったようなきれいな状態になる。


「くそっ、消えちまったてことは。」

「また、1体のゴーレムが生み出されたということだろうな。ちっ、目の前で助けられんとは、かなりきついな。」

「でも、他のやつはまだ生きてるかもしれねえ!こいつらをここから出すぞ!」


クロウは拳を構える。



ブンッ!

ガギーンッ!

鋭い一撃がガラスの筒を直撃。



しかし、


粉々に割れるどころか、傷1つ付いていない。



「なんだ、このガラス!?衝撃を吸収された!?」

「なら、私が力ずくで!」


ブンッ!

ガギーンッ!

ミラも大斧を振り下ろすが、やはり傷1つつかない。


「物理では開けられないということか、私とクロウで開かないなら、あとは魔法でしか開けられない以外考えにくい。」

「くそっ、これがあいつらの作戦か、アーシェの時もそうだった。真っ向から俺たちとやりあうのは得策じゃないとあいつらも気づいている、だから精神的に追い詰めて後はなぶり殺しにしようって魂胆だろうよ。」

「ますます嫌な連中だな、蠢く会というのは。いくら私でも、あいつらを殴るだけでは気が済まないぞ。もっと、苦しみを与えなくてわな。」

「落ち着こうぜ、ミラ。俺たちが怒りに呑まれたら、完全に負けだ。多分あいつらは、俺たちの仮面についてもっと詳しい、助けられる命は助けるしあいつらの思い通りにはなってやらねぇ。後悔させてやらねえとな、お前たちの行いが、どれだけ周りを傷つけていることなのかってことを。」



2人は部屋を回りつつ、先に進む。


ガラスの筒以外に機械はなく、その先にある扉が目に入る。



「あそこから出られるな、行くかミラーー。」


ズーンッ!

クロウが話終える前に、2人に対するプレッシャーがのしかかるのが分かる。


「なんだ、この感じ。あの扉の奥から、俺たちに向けられている。」

「しかも、今までのゴーレムやモンスター、蠢く会のやつらとも違う、肌が凍るように感じるものだ……クロ、この先にいるのは。」

「ああ、新種のゴーレム。しかも、さっき融合されたばかりのやつの可能性があるな。だとしたら、俺たちがやるべき事は1つだ。」

「そうだな、1秒でも早く解放する。なりたくない姿にさせられ、無理やり戦わせられる。そんな状態の存在と戦うのは正直気が引けるが、やらなくてはさらなる被害が出てしまう。」

「罪を背負うのは、俺たちだけでいい。これ以上、無駄な苦しみを生み出させないためにも、やるぞ!」


ガチャンッ!

2人が扉を開けると、


「ぐるぉぉ!!」


そこにいたのは、四足歩行で虎の顔に鰐の尻尾、体は鳥に近く爪はアサルトビーの針のよう。そして、手足は人のものに似ている。

全長は5mほどであろう。



初めて出会った個体、それはいったいクロウ達にどのような判断をさせるのか。

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