第284話 王の生存

「サリア!やっぱりおかしいぞ、この動きは。」

「どうしたのクロくん?」


クロウは気付いたことをサリアにも話す。


「確かに、ラスト王が生きてると知ってニューマンが結束力を高めるとは言えないよね、蠢く会はそれを理解していないとは思えない。だとしたら、このやり方は。」

「王が生きてるっていうのは、俺たちにしか見えない魔法を使った可能性がある。そして、俺たちが混乱してる中で、アーシェを狙う……ここだ、ここだけがやっぱり気になる。」

「そうだね、アーちゃんを狙う理由。逆に言えば、1番狙いやすいクロくんを狙わない、そこも気になるーー。」

「俺を狙わない理由、仮面か!!」


クロウは1つの可能性に気がつく。


「仮面??」

「そうだ、俺は烏の仮面を使える、そしてミラも狼の仮面を使える。この仮面が残り4つあって、それを蠢く会がなんとかして作り出してたら。」

「仮面が全て集まると何か起きるの?」

「俺は詳しく分からない、だけど、俺やミラよりも詳しいやつが蠢く会にいたら俺とミラを殺すことはしないだろう。そして、1番ニューマンからターゲットにしやすいのは。」

「魔族であるアーちゃんが、人族のターゲットにしやすい。過去にも、人族と魔族でなら争いは何度も来てる、消去法でアーちゃんが狙いやすかった。この可能性は、十分あり得るね、1回宿屋に戻ろう!」


クロウとサリアは宿屋に戻り始めた。




こちらは、アーシェ、ミラ、リィン。


3人は商いが盛んな場所で、王国の情報を集めていた。


「さすがに、かなり栄えているな。血のホワイトデイ以降のアテナイは、繁栄がどこの国よりも進んだと聞いたことがあるが、嘘ではなさそうだ。」

「そうですね、王が不在の間は周りの重役たちがこの国を支えています。」

「なんで、王の後任を作らないの?1人の統治者がいた方が、国としてまとまる気がするんだけど。」

「これは推測ですが、皆怖いんだと思います。」


リィンはこれまで調べてきたことを話す。


「前国王ラストは、魔族のハデスにより殺されたという記録が残っていました。ただ、このような事件が起きたのは1度ではないようなんです。」

「まさか、過去の王もだれかに殺されているのか?」

「ミラさんの言う通りです。アテナイは、過去より文明が他の国より進むのが早かったみたいです。それこそ、自分たちの技術として周りに公表することはせず、裕福な暮らしをしていたみたいなんです。そんな中、魔族だけではなく、巨人族からも攻撃を受け領地を失った過去がありました。」

「つまり、逆恨みを買い、当時の王は国民から責められ、心身共に疲弊してしまったという感じかしら。」

「そうですね、事件が発生するたびに王はその地位を捨て、代わりの王がまた生まれる。そして、数年経過したころにはまた同じことが繰り返される。文化の違い、理解をし合わなかったことで傷を負った過去があったんです。」


そう、ここ数十年アテナイはもとより他国に比べ人数も多いが、知恵のあるもの、おいては発明に秀でている者が多くいた。


建物の構造から、武器の質、生活水準が周りの国より高かった。


それを他国が面白く思わないのは、当然だった。


理由は簡単、自分たちの技術力を周りには開示せず、開示する場合は多額のお金と共に領地を要求したのだ。


もちろん、交渉としては本来問題のないやり方であろう。



だが、いざ技術を提供するタイミングで、アテナイ側は


他の種族も、初めのうちは慣れていない、自分たちの力不足だと信じ、繰り返し与えられた技術を確立しようとした。



もちろん、その努力が実ることはあり得ない。


そして、当時疑問に思った魔族が、遠征中の王の側近を捕え尋問したところ、偽の情報を流していることが発覚。


そのため、戦争及び領地争いが多発。


アテナイは、自分たちの国をよくすることだけを考え、他国を突き放すことをしたため、多くの命がなくなることになった。



最終的に起きた事件が、血のホワイトデイである。



「そんな過去があったのだな、だからと言って他国のものがアテナイを襲うのもおかしいとは私は思う。自国で努力して、アテナイも栄えたのだろう、もちろん嘘をつくのは良くないが、逆恨みで人殺しをするのは理解に苦しむ。」

「そうね、魔族も人族と争いが多いのは知っていたけど、理由がそういうことだったのは初めて知ったわ。正直、どの国も自国のことしか考えていない、分かり合おうとする姿勢がないのだと思うわ。」

「そうですね、過去のこととはいえ、そのいざこざは今も残って……っ!?黒いローブ!?」

「えっ!?」


リィンの見ていた先に、黒いローブが映った。


「リィン、追える?」

「すみません、すぐに見失いました。」

「やっぱり、ここにもいるようね、一旦宿に戻りましょう。クロウ達も戻っているかもしれないわ。」



アーシェ達も、宿に向かい始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る