第283話 評判

メガラに入ったレイヴァーは、入り口の掲示板にアーシェの指名手配書が貼られているのを目にする。


アーシェのフルネーム、前魔王の娘、似顔絵を合わせ、懸賞金すらかけられていた。


なぜアーシェを狙うのか、それがレイヴァーには不思議でならなかった。



まずは、身の安全を確保するため、アーシェには白いフード付きのコートを買い、他4人は、金属製のマスクで口を覆い、身バレを防いだ。



一晩泊まる用の宿も確保し、メガラで情報を集めることにした。


その班決めの際に、


「やっぱり理由がわからねえ。なんでアーシェがターゲットなんだ?普通、オールドタイプの俺だろ?最悪、オールドタイプと行動してるニューマンのリィンもターゲットにされかねないけど、蠢く会は何を考えてやがる?」

「あたしにも予想がつきません。それに、蠢く会は魔族とも敵対関係にありそうです、でないと十将軍のギルをあんな目に合わせる必要がありません。」

「何にしても、私たちは情報を持たなすぎる。二手に分かれて、少しでも情報を集めよう。」

「そうだね!そしたらメンバーは。」


クロウとサリア、アーシェとミラとリィンで動くことに決めた。


もし何かあった際に、近距離から遠距離まで対応できる組み合わせだ。


「それじゃあ、北側は俺たちが行く。南側は任せるな、特にアーシェは危険な目にあう可能性が非常に高い、ミラ、リィン、頼む。」

「任せてください、アーシェさんを危険な目に合わせません。」

「もし襲ってくるようなら、私が返り討ちにしてくれよう、敵にする方を間違えたと後悔するほどにな。」

「ごめんなさい、みんな、迷惑をかけてしまってーー。」

「迷惑?何言ってるんだ。」


クロウはアーシェの顔を見つめる。


「迷惑をかけてるのはアーシェじゃない、蠢く会が勝手にかけてきてるんだ、だからアーシェが謝るな。それに、これくらいのことは日常茶飯事だろ、俺たちにとっては?」

「そうだよ!サリア達は巻き込まれるのが得意みたいだから、これくらいで焦ることもないし、むしろいつも通りで安心しちゃうくらいだよ!」

「慣れすぎるのも困るので、出来る限り面倒ごとは避けてくださいね、クロウリーダー。」

「え、あ、ああ、頑張ります。」


そして、2つの班に分かれ情報収集を始めた。



まずは、クロウとサリア。


2人は町の北側、ギルドなど建物が多い地域を調べて行った。


「ギルドを見てみるか、もしかしたら冒険者の中で情報が手に入れられるかもしれないしな。」

「OK!行こう行こう!」


キィーッ。

ギルドの扉を開くと、今まで見てきたギルドよりも2倍はある広さに驚かされる。


中には、屈強な戦士から魔法使いなど、多くの冒険者で溢れていた。


「かなりの数だな、王国からまだ少し離れた町でこの賑わいかよ、王国のギルドはどうなっちまうんだ?」

「それに、戦闘経験が高い人達が多い、こんなに多くの人と真正面から戦うことがあったらサリア達でも危険だね。あっ!見て!」


スッ。

サリアが指差す先には、


緊急依頼、この世界の天敵、アーシェ・ヴァン・アフロディテを討伐する勇敢な戦士、報酬は選択可能、応募者至急募集。



アーシェが、ギルド内の掲示板に大きく張り出されており、討伐クエストの場所に貼られていた。



「ちっ、ふざけたことしやがって。」

「だめだよクロくん、こんなところで仮面を発動しちゃ。」

「分かってるよ、ただ、王からの指示だとはいえ自分の考えを持たず、ましてや考えることもせずにアーシェを敵として狙うなんて、イラつかせてくれるぜ。」

「こんなに大勢を巻き込むやり方ができる、そしてあの時見た王の姿、ん?待って、なんでアーちゃんの事は話題にたくさん上がるのに、生きていたラスト王のことは誰も触れないの?」


サリアはハーデンと共にいたラストの姿を思い出す。


ハーデンに紹介され、堂々とアーシェを指名手配犯にした。


だが、誰1人として王が生きていることに疑問を持たず、そのまま従っていることに疑問を抱く。



「確かにそうだな。なんで王の生還を祝わないんだ、一応この国の王だぞ、心配かけたとか、本当に蠢く会を認めてるなら、あの場で紹介するべきだ。でもしなかった、いや、やれなかったのか?」


クロウは近くの冒険者に話をする。


「なあ、1つ聞いていいか、ラスト王が生きていたって聞いたよな?」

「はぁ?何言ってるんだ、王はこの国にいないだろ、オールドタイプが消えた時に一緒に死んだんだから。どうしたお前、昨日飲み過ぎたりしたんか?」

「あ、悪い、変なこと聞いて。」


クロウは素直に引き下がる。


そして思い出した。


(そうだ、ラストは血のホワイトデイの時に殺されて、そのままニューマンが誕生した。だとしたら、あいつらがラストを国中に紹介したとしても、何も効果を生まない。じゃあ何であんなことをした?俺たちを惑わすため?)


クロウは気づいた、ラストが生きていたとしても国民には何も影響がないことを。


そこで深まる謎、アーシェが狙われる理由はいったい。

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