第280話 安全地を探して

レイヴァーの5人は、まずナウサの方面に向かう。


数少ないレイヴァーに対して理解を示してくれた町であり、何よりリィンの父親であるダイカンがいるからだ。


パノラマからは直線にして20km、歩いたら約1日かかってしまう。


それを踏まえ、歩きながら作戦を練っていた。


「ナウサに辿り着くまでに、休まず歩いても1日、キャンプを張ったら2日かかっちゃうね。リィンちゃん、これって危険じゃないかな?」

「サリアさんの言う通りだと思います。確かに、お父さんのいるナウサまで辿り着けたら良いですが、その途中で蠢く会か、アテナイのギルドが攻めてくる可能性が大きいです。」

「だが、そこ以外にここから向かう場所はないのではないか?助けがない状態で、アテナイ全てを相手にするのは自殺行為だと思うぞ。」


3人が話す中、クロウとアーシェは何も話さなかった。



そう、先ほどの意見の対立から、2人の間には嫌な空気が流れていた。


その雰囲気を、3人が気づかないわけもなく、2人の力を借りずに案を考えていく。




だが、そう簡単に良い案など浮かぶはずもなく、苦しい時間だけがすぎていく。




そんな中、クロウが口を開く。


「なぁ、思うんだけどよ、ラストのところに行くのはどうだ?アテナイの王国、まで。」


突然の予想外の提案に、3人はキョトンとする。


「な、何を言ってるんですか?ファルクに突撃するつもりですか!?そんな無茶、いくらレイヴァーでも危険すぎます!」

「そうだよ!それに、ノエルくんがいなくなって戦力も落ちてるんだよ、考え直した方がーー。」

「いや、クロウの作戦に私も賛成するわ。」


アーシェの突然の発言に、さらに皆が驚く。



「アーまで何を言うんだ、無茶をするなとリィンから言われていたではないか。これはどう考えても無茶だ、成功する可能性が低すぎる。」

「確かに、一見1番危険な作戦だとは思えるわ。でも、ダイカンのいるナウサに向かうことを蠢く会が予想してないとは思えない。罠も張れるし、新兵器なども導入してくるかもしれない。」

「逆に言えば、ラストのいるファルクにはアテナイの人はたくさんいるが、蠢く会が全員いるとは思えない。俺たちがそんな無茶な作戦をしてくるとは思ってないだろ。」

「……なるほど、確かに蠢く会も戦力は割いてるはずですね。それに、ラスト王が生きているのだとしたらいろいろ聞きたいこともあります、危険ではありますがその分見返りも大きいですね。」


リィンも2人の作戦に賛同し始める。



作戦を考えたいるのだが、1番サリアが心配していたのはクロウとアーシェの仲の方だった。


(2人はあんなに言い合いしてた、また王国に向かった先で同じことが起きれば上手くいくものもダメになる、確認しなきゃ。)


「ねえ、クロくん、アーちゃん、2人は大丈夫なの?」

「どういうこと?私とクロウが大丈夫って?」

「いや、だって、さっきまですごい喧嘩してたからさ、王国で同じことが起きたら大変だなと思って。」


サリアの言葉に対し、クロウとアーシェは見つめ合う。


「まあ、平気だろ。元から俺とアーシェの意見は逆になることが多かったし、ぶつかる事なんて何度もあっただろ。」

「そうね、確かにクロウが言っていることは理解が追いつかないこともあるわ。けど、それを真っ向から否定するつもりはないわ、私は私が正しいと信じてるけど、絶対ではないと思ってる。ぶつかる事は、良いことだと思うの。」

「そうだな、まあそのおかげでウェルダンにされかけたことは多々あるけどな。それ以上に、助けられたことの方が多い、俺たちはそんな関係だよ、前からな。」

「本気でウェルダンにしたい思うことあるけどね。まあ、クロウの言ってる通りぶつかる事でそれが閃き、自分を助けることに繋がってる。もし、私たちのことで心配かけてたなら、ごめんなさい。」


アーシェの謝罪にクロウも軽く頭を下げる。



2人の行動に、サリア、ミラ、リィンはホッとしていた。


「良かった!いつもの2人だ!いや、なんか空気が重たくなってた気がしちゃっててさ。」

「そりゃ悪いことをしたな。ずっと考えてたんだよ、俺たちにとって1番良い作戦は何かなのか、それとノエルの目的は何なのかってさ。」

「ノエルさんが蠢く会に戻った理由、作戦は終わったと言っていたのはあたし達の情報を渡すことですかね。」

「それも一つだろうな。ただ、俺が気になるのは何でこのタイミングなのか。そして、蠢く会にいる目的が気になる。」

「それは一つではないか?だと私は思うぞ。」


ミラの言葉に皆が反応する。


「確かに、ホルムに対してノエルランスは説得をしていることが何度もあった。確か、実の兄だったわよね。」

「それが蠢く会にいて、しかもアークのように殺される可能性が出てきちまった。だから今だったってことか?」

「あり得るかもしれません。だとしたら、それを手伝えることができれば。」

「またノエルくんと一緒にいられるかも!だったら、サリア達の進む道は決まったね!」


コクッ。

皆が頷き、向かう方角はアテナイの王国ファルクへ。


彼らは、危険の先にある成功を手に入れるために動き始めた。

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