第272話 帰り道
エリュシオン中にライラとアレクの演説が届いたことにより、少しずつ国に英気が養われたように思われた。
それもそのはず。死んでしまっていたような状態から、国を復興させるためにその命を使おうと集っているのだから。
「少しは、エリュシオンに良い未来が来るかもな、2人の声で確実に正気が宿ってる。」
「我らの力だけではない、国民は不安に駆られていただけなのだ、元々巨人族は強い生命力を持っている、それを活かせるかは周りの問題だ。」
「これから忙しくなるわね、私たちもできることをするわ。」
「クロウガルトさん、アーシェリーゼさん、有難い言葉ですが、レイヴァーの皆さんは少しお休みください。皆様には、力を借りすぎています。私達としても、少しエリュシオンの魅力をお伝えしたいのです。」
アレクは、レイヴァーに休憩することを提案する。
「それでは、お言葉に甘えるわ。いつでも動けるようにしておくから、何かあればすぐ言ってちょうだい。」
「ああ、ありがとう。ミラ、全員を城の食堂に案内してくれ。」
「分かりました、さあみんな、こっちに来てくれ。」
スタッ、スタッ。
レイヴァーは食堂に集まり、休憩を取る。
「ミーちゃんの両親すごいね!あの演説で、確かにエリュシオンの人たちは生きる希望を見出してた!」
「そんなことないさ、巨人族達の皆が強くあろうとしてくれたから出来たことだ。それに、あのようなことはアーにも出来るのではないか?」
「私??」
「確かに、アーシェさんは元魔王様の娘さんですもんね、是非見せて欲しいです!」
「……そうね、じゃあそのチャンスを作り出すためにも、みんなの力をあてにさせてもらうわよ。」
「任せてくれ、私の力でアーに近づく害虫は全て駆除して見せよう。」
賑やかに話している中、アーシェの表情が一瞬曇ったことを、クロウは見逃さなかった。
(あいつ、珍しいな。)
そんな中、食堂に慌てて入ってくる巨人族が。
「おおっ!ここにいましたか!レイヴァーの皆さん、手紙が届いております。」
「手紙ですか?」
「はい、宛名はリィン・キヒ様宛です。」
「あたしに?ありがとうございます。」
スッ。
手紙を受け取り、リィンは中を開く。
そこには、
元気でいるか?
ナウサはいつも通り平和だ。
それで急なんだが、アテナイに一度戻ってくることはできないか?
少し頼みたいことができた。
レイヴァーもいてくれたら、とても助かる。
場所は、パノラマ。
ナウサから離れた場所で悪いが、エリュシオンからなら行きやすいとは思う。
可能な限りでいい、早く手を貸してやって欲しい。
急な内容ですまない。
ダイカン。
どうやら、ダイカンからリィンに宛てて書かれた手紙のようだ。
「お父さんから手紙なんて初めて届きました、パノラマ、初めて聞く町ですね。」
「俺も知らないところだな、けど少し問題を抱えてるみたいだな。ダイカンのギルドだけで対処できない内容ってことだろ。」
「私たちはダイカンさんからたくさんの恩を受けたわ、恩返しができるいい機会じゃない。」
「え、いいんですか?エリュシオンもまだ完全ではないのに。」
「何言ってるんだ、俺たちレイヴァーの主人から届いた依頼だ、やらない理由がどこにある!」
コクッ。
サリア、ノエル、ミラも頷き、これからの旅路が確定した。
「ありがとうございます、みなさん!」
「気にしないで!それと、リィンちゃんはもっとサリア達を頼るべきだよ!同じレイヴァーとして、遠慮してちゃ疲れちゃうし楽しくないじゃん!」
「まあ、言葉遣いを間違えて誰かさんみたいにウェルダンにされそうにならなければいいがな。」
「ん?ミラ、今俺に言ったよな?」
「あなた以外にいるわけないでしょ、しっかり自覚しなさい。」
「誠に遺憾である。」
今の状況をライラとアレクに報告し、レイヴァーはエリュシオンを離れる準備を始めた。
そして、
「また必ず来てくださいね、それまでにこの国をもっと栄えさせて見せます。みなさまが救ってくれたこの命をかけて。」
「レイヴァーにはまだ何も礼ができていない、もし助けが必要なときは遠慮なく言ってくれ、我らはどこにいようとも駆けつけると約束する。」
「ありがとうな、そっちも大変なのは変わらないだろうから、無理するなよ。後、王のことも。」
「もちろんだ、仮面を外す方法が分かったらすぐに連絡する、ミラ、お前の力、今まで以上にレイヴァーナ貸してあげるんだぞ。」
「分かっております、私はクロの、レイヴァーの剣であり盾です、それが嘘でないと証明して見せます。」
スタッ、スタッ。
レイヴァーは、王国から1日半ほどかかるパノラマ向け出発した。
食料などはライル達からもらい、途中でキャンプを張り次の日には着く予定を組んだ。
久しぶりのアテナイへの帰還、レイヴァーを待ち受けるものとは。
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