第271話 再興に向け
激動の1日を終えた次の日、レイヴァーは城に向かった。
すると、そこにはミラの両親、ライルとアレクが到着していた。
「父上、母上、ずいぶん早く来たんですね。ここまで相当距離があったでしょうに。」
「なあに、自分の娘に救われた命、次は俺たちが頑張る番だ。さっき、王と少し話してきた。」
「ゼオン王は生きていらっしゃる、それに仮面に意識を阻害されながらも私たちとお話をされていた。私たちは、エリュシオンの再興と共に王の仮面を確実に取り外す方法を探します。」
「砕いたり、無理に剥がすと本人は死んでしまうケースが多発しているからな、ミラの両親2人が解決策を見つけてもらえたらかなり助かるぜ。」
「この身をかけて、尽力しよう。それと。」
スッ。
2人は、レイヴァーに向け深々と礼をする。
「私たちを、この国を助けてくれてありがとうございました。」
「アテナイから来てくれた君たちがいなければ、我らは死んでいたかもしれない。王の命も危うかった、心からの礼を言わせてくれ。」
「別に、そんなに畏まらないでくれ。俺たちは、仲間のためにエリュシオンに来た、そしたらそこに国の危機が偶然迫ってただけだ。それに、俺たちも大きな収穫があった、仮面のこと、ミラが加入してくれること、蠢く会が世界的に動いてくること、俺たちからも礼をしたい。」
スッ。
クロウが頭を下げる。
その姿を見て、周りのメンバーは驚きにあふれていた。
(何が起きているの!?クロウが一般人みたいな礼儀正しい話ができてる、明日は嵐かしら?)
(クロくん昨日何か悪いものでも食べちゃったのかな?後でお薬持っていこうかな。)
予想外の行動に、クロウ以外は衝撃を受けたが、それをよそにして、
「多少ではあるが、これまでの君たちの功績を称えたい。今日の昼頃、簡単ではあるが宴に参加してはもらえないか?」
「俺たちは構わねえけど、そっちもかなり忙しいだろ?無理してそんなことーー。」
「大変な時だからこそ、気分を入れ替える時間も必要ですのよ、張り詰めた空間にいすぎては、人間疲れ果ててしまいますから。」
「では、お言葉に甘えましょう。私たちも手伝えることがあれば手伝わせてもらうわ、協力した方が効率的よね。」
「ありがとう、とても助かる。」
レイヴァーも軽傷ではないが、城の修復を手伝う。
その中で、クロウが1番気になったこと。
「なぁ、俺たちよりも国民に声をかけてやるのが一番なんじゃないか?」
「クロウガルト君の言う通りなのよ、けど今のエリュシオンには私たちの声を皆に送り届ける方法がないの。先日の大きな戦いで、声を広く伝える設置物が壊れてしまったから。」
「声が届かない、ですか。……なら、あたしに考えがあります!」
リィンがサリアとアーシェを呼び、何かを伝える。
「それなら、サリアは得意だよ!」
「可能性が高い方法ね、やってみましょう!」
「はい!ライルさん、アレクさん!お話ししたいことが。」
リィンは2人にも何かを伝える。
それから30分後、
町は混乱の渦に巻かれており、国民の表情はとても暗くまさに生きる屍の様になっていた。
そこに、
ゴゴゴゴゴゴッ!
城から大きな音が鳴り響く。
皆が音の先を見ると、木の根が壁から生え、空高く伸びていった。
そして、一番上には、ミラの両親の姿が。
「ここからは、お2人にお任せします。私の魔法の流れに、2人の声を乗せて遠くまで響かせます、なので国民に必要な力を与えてください。」
「ありがとう、レイヴァー、何からなにまで。」
スタッ。
ライルは1歩前に出て、
「エリュシオンの民たちよ!聞いてくれ!私は、ライル・アトラースだ!隣には、アレク・アトラースもいる!」
ライルの声は、アーシェが意図的に生み出した魔力の流れに乗り、エリュシオンを覆うように響く。
「アトラース?それって、10年前の統治者?」
国民は、声がする方を向き始める。
「皆も感じているであろう、今のエリュシオンの異変を。だが、安心して聞いてほしい!私たちが、再びこの国の統治者となる!」
「それだけではありません、ここには私たちを救い出し、命を懸けて守ってくれた大切な方々、レイヴァーがいます。彼らの力がなければ、私とライルは死んでいました。」
「我々は、とても苦しい立場にある。だが!我々は生きている!生きているなら、新しい道を切り開けばいい!王国に貯蓄されている食料、飲みものを分け与える。力に自信にあるものは王国に来てくれ、城を立て直すのだ!」
「勉学に自信のあるものは私の所に来てください。地位、階級、そんなものは関係ありません、新しいエリュシオンを作り出すために、皆の力が必要なのです!私たちは、これからを生きる巨人族、ともに力を合わせましょう!」
「全ては、巨人族繁栄のために!」
2人の声が、国中に響き渡った。
そして、
「うぉぉ!!」
「俺は力だけはあるんだ!今すぐ城に行くぜ!」
「あの2人が帰ってきてくれた、これほど嬉しいことはない。」
少しずつエリュシオンに活気が戻ってきた。
「すごいわね、エリュシオンの英雄は。」
「何を言うんだ、アーシェリーゼさん。君も、いずれは同じ立場になるのだろ?」
「……そうね、少し自信なくしそうだけど。」
「大丈夫よ、あなたにも大切な人がいるでしょ。」
「大切な、人。」
アーシェはクロウを見つめる。
そして、少しずつ復興が進んだ矢先、1通の手紙がレイヴァーに届いた。
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