第248話 決勝戦開始

ここは闘技場の中、


クロウとミラは決勝戦の準備に取り掛かっていた。



2人とも無傷と言っていいほど、順調に勝ち進んでしまい巨人族が弱くなってしまったのではないかとミラは心配していた。


「なあ、ミラ。ちゃんと斧持っていけよ?」

「もちろんだ、アレスと本気でやり合うのは2度目だな。安心しろ、骨の1本くらいで済むようにしておく。」

「出来れば1本も折らないでほしいんだが。じゃないと、リィンにキレられるぞ?」

「うむ、なら本気を出しつつも怪我はさせないように注意しよう。」

「どんだけ怒られたくないんだよ。」


スタッ、スタッ。

そして2人は、闘技場の試合会場まで歩き出す。



この戦いには、2つの意味を作り出せると2人は考えている。



1つ目は、巨人族の主人、あるいはそれに近しい存在が出てくる、または裏で糸を引いているような存在が姿を表すと予想している。



そして、2つ目。


それは、


今の闘技会は、戦士の力を示す場所というよりは、一般観客による賭博場と化してしまっている。



それでは、エリュシオンの名物が勿体無い。


ならば、2人の本当の戦いを見せつけることで戦いとは何か、どういう風にするものなのかを思い出させようというのだ。


もちろん、2人とも力を抜くつもりはない。


どちらも実力は互角、パワーにおいてはミラに部があるが、柔軟性や適応においてはクロウが優っている。



この戦いは、未だ闘技会で見たことのない激しいものになりそうだ。



2人が会場に姿を現すと、


「さぁ、やって参りました!今大会の決勝戦!まさかのまさか、ダークホースの2人が決勝の舞台でぶつかることになるなんて、誰が想像したか!ん?そして、2人は新しい武器を持っているようだぞ!これは、波乱の予感がするぞ!」


実況が、魔法を使い大きな声で場を盛り上げようとする。



しかし、



「お前たちの戦いに興味ねえんだよ!」

「金の入らねえ戦いに何の意味がある!早く終わらせてくれよ!」


シュンッ!シュンッ!

客席からは、ゴミや石が投げ込まれる。




その状況を、クロウとミラは全く気にしない。



そう、2人は集中していた。


目の前にいる強敵をどう倒すか、それだけが頭を支配していたのだ。



「さ、さあ!決勝戦、泣いても笑ってもこれが最後の戦いだ!それでは、開始!」


ガゴーンッ!

開始のドラが響き、ミラは斧を、クロウは大剣を構える。



まず動き出したのはミラ。


斧を軽々と肩に乗せ、獲物を捉えた狼のように迫る。


(真っ向からやり合うつもりか、乗ったぜ!)


スッ!

ガギーンッ!

斧と大剣が火花を散らす。


気のせいか、一度の衝撃で辺りに風圧が生まれた。



ガギーンッ!ガギーンッ!

それからも、2人は目で追うのがやっとの戦いを繰り広げる。


「な、なんという戦いだ、2人の姿が追いきれない!これまでの2人は、本気ではなかったということか!?」

「はぁ、なんであんなに必死に戦うんだ?金か?それなら、王国に志願すればたくさん貰えるのによ。」


シュンッ!

ガゴーンッ!

今言葉を発した男の椅子に、クロウ達の衝撃波で吹き飛ばされたゴミが直撃する。


その跡は、凹んでいた。



それだけ、戦闘の激しさを物語っていた。


「アレス、そんなものじゃ私を倒せないぞ!」

「それはこっちのセリフだ!1回目の時の方が強かった気がするぜ、衰えたんじゃないか?」

「はっ、言ってくれるな、年下が!」

「若さの力を見せてやるよ!  獣の声ケモノノコエ二式ニシキ獅子の重撃ネメアー!」


スッ!

ガゴーンッ!

大剣のジャンプ斬りが、地面を削る。


言うまでもないが、2人は全力を出している。



そして2人は感じていた、




ここで全力を出すには、狭すぎる。


周りにも被害を出しかねないと。



ガギーンッ!ガギーンッ!

2人の戦いは遅くなるどころか、さらにギアが上がってるように思える。


その光景は、一部の人の心に響いてるようだ。



「あの戦い、あの雰囲気、昔見たことある。確か、アトラース家の人たちが活躍してた時だ。」

「アトラース家?それって、死神の一家だろ?噂じゃ、もう誰も生きてねえとか。」

「そうなのか?俺は1番若いやつだけ生きてるって聞いたぞ。」


観客は、昔の話でガヤガヤし出す。




だが、その音を掻き消す衝撃が。


ドゴーンッ!

ザザザザッ!

闘技場内に、全身重装備をした兵士が流れ込んできた。


「なんだ、闘技中に入ってくるとは礼儀の知らん奴らだ。」

「まあ、礼儀なんて気にしてねえんじゃねえか、こいつらから感じられるのは、殺気だけだ。」


2人は武器を下ろし、兵士たちを見る。


「貴様ら、アレスとミリアの2人を国家追放者として捕縛する。抵抗をするのなら、殺しても構わないと通達されている、賢い選択をするように。」

「なんだかな、俺たちはどこ行っても追放されるな。これも何かの縁か?」

「そんな縁はお断りしたいな。さあて、アレス、どうする?」

「そんなの、決まってんだろ。こいつらを蹴散らして、指示してる黒幕を聞き出す!ただ、絶対に殺すなよ。」

「ふっ、了解した。私たちの真剣勝負の邪魔をしたのだ、覚悟はできているであろうな!」


ガギィン!

クロウとミラは武器を納め、拳を構える。



兵士達が闘技場に乱入してきた理由とは、いったい。

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