第247話 協力者

スタッ、スタッ、スタッ。

蠢く会のメンバーらしき人を見つけたアーシェとリィンは、人混みをかき分けながら突き進んでいく。


「ここに蠢く会がいるのは予想していましたが、まさか堂々と出てくるなんて。」

「それだけ、今回の作戦はあいつらにとっても大きい物なんだと思うわ。だとしたら、ここで止めておかないと後々厄介なことになりかねない。」

「そうですね、まずは捕まえて話を聞き出さないと!」


ザッ、ザッ。

巨人族が多くいることもあり、道は広いはずがとても窮屈に感じられる。


だが、国民を傷つけるわけにもいかないのでなんとかすり抜けていく。



すると、


ズンッ!

蠢く会のメンバーに向かうところで、複数人の巨人族に行く手を遮られる。


「え、ちょっと、すみません!あたしたちこの先に用があるんです!通してください!」

「だめだ、この先は誰1人通すわけにはいかない、さあ引き返せ。」

「何言っているの、この国が危険な目に合うかもしれないの!だから私たちを通して!」

「国が危険な目?幸福になっていくの間違いだろう。」

「あなた達、いったい何を言って……。」


アーシェの中に、1つの疑問が生じる。

確証なんてない、しかし可能性は十分にあった。


「あなた達、蠢く会とグルってわけね。」

「えっ!?アーシェさん、いきなり何を。」

「蠢く会?そんな名前、聞いたことないな。誰か、聞いたことあるやつはいるか?」


ブンッ、ブンッ。

周りの男たちは首を横に振る。




ただ、奥に隠れている1人の巨人族の男が動揺したのをリィンは見逃さなかった。


「一番奥にいる、肩に青いバンダナを巻いているあなた、今何で動揺したのですか?」


スッ。

リィンは、動揺した男を指さす。


「ん?俺か?何言ってやがる、知りもしないことを聞かれて戸惑っただけさ。」

「本当に知らないのですか?蠢く会が、この国に何をしようとしているのか。」

「知らねぇよ、あいつらが何しようたって関係ないからな。」

「そうですか。……やっぱり、何か知っているんですね。」


リィンは鋭い目つきで男を睨む。


「はぁ!?だから、俺は何も知らないってーー。」

「ではなんで、蠢く会が複数人だとわかったのですか、あたし達はあなた方の後ろにいる人に用があると言っただけです、複数人だなんて一言も言ってないですよ。」

「なっ!?いや、でも、会って名前がつくなら複数人いるかもしれないだろ!」

「この一瞬でそこまで考えられたのに、そんなに焦るなんてそれこそ気になるわね。間違いなく、あなたの後ろには1人しかいないわ、それにその言い方だと他の蠢く会も来ていそうね。」


ズンッ!

先頭の巨人族が、しびれを切らし斧を地面に叩きつける。


その音は、周りの一般人を震え上がらせるのには十分だった。


「だから、蠢く会だのなんだの関係なくてめえらは通さねえって言ってるんだよ!」

「あなた、こんな町中で武器を抜くなんてどういうつもり?私達は、戦う意志はないわよ。」

「てめえらが全く動こうとしないからな、力ずくで動かしてやろうって話だよ!」

「こんなところで武器を振り回したら、どれほどの被害が出るか予想できますよね!あたし達は向こうの人に用事があるだけでーー。」


シュンッ!

リィンの視線に気づいたのだろう、黒いローブの人間がその場から姿を消す。


「アーシェさん!ローブの人が!」

「ちっ、流してしまったわね。あなた達の作戦成功ってところかしらね。」

「さあて、なんのことだかな。お前たちと話してる時間がもったいない、早く失せな。」

「ええ、用無しに時間割くほど私たちも暇じゃないわ、行くわよ、リィン。」


スタッ、スタッ。

2人は巨人族達と距離を取り、再び闘技場近くに寄る。


「アーシェさん、あの方達は協力者ということでしょうか?蠢く会は、勝手に人族だけだと思ってたんですが、違うんですかね?」

「協力者かどうかは少し疑問ね、単純に利用されてるだけな気がするわ。けど、それによって何かしらの恩恵は受けられてる、幸福になるってワードも気になるわね。」

「ということは、王国の人達なのでしょうか?けど、ギルドと王国は仲が悪いはず。」

「分からないことだらけね。とりあえず、蠢く会もこの近くにいるようだから、私たちで探し出すわよ。」

「わかりました!」


2人は、その場から消えた蠢く会の者らしき正体を追った。




そして、ここは闘技場内部。



いよいよ、クロウとミラの決勝戦が始まろうとしていた。

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