第244話 王国の騒ぎ
サリアとノエルは、王国近くのカフェから様子を伺っていた。
城の周りは兵士がたくさん配置されており、猫1匹入ることも困難に見える。
そして、彼らの重装備がノエルは気になっていた。
「巨人族は、あんなに重装備をして王国を守るのだろうか?」
「どういうこと?あの装備に何か変なところでもある?」
「いや、考えすぎかもしれないが、王国の外に配置される人たちの階級は正直高いものではないと思う。なのに、彼らはまるで王が付けていてもおかしくない程頑丈な装備をしている。」
「そうか!そのお金はどこから出ているのかってことだね!」
「そう、なんであの装備をさせる必要があるのかも気になる、どうにか隙をついて中に入り込まないとだね。」
2人は兵士の動きを注視していた。
すると、動きが生まれた。
軽装備の兵士らしき人が門兵に何かを伝え、門兵は駆け足で王国の中へと入っていった。
そして、周りの兵士も慌て始めそわそわと動き始める。
「何か様子がおかしいね、今の時間は闘技会が始まって数十分ってところだから、クロくんとミラさんが勝ち進んだってところかな?
「可能性は大きいね、僕たちも店を出よう。」
スタッ、スタッ。
2人はカフェを離れ、近くの木の裏から様子を伺う。
数分後、
「あっ!門兵の人出てきたよ!」
「この位置からでも、焦っているのがわかる程のことが起きてるみたいだ、顔に出ているね。」
「てことは、闘技会じゃない事件かな?」
「どうだろうね、まあとにかくチャンスはありそうだ、もう少し見張ろう。」
さらに観察を続けていると、
「敬礼!」
スッ!
兵士が王国の門に向かって敬礼をする。
その先には、
全身銀色の甲冑を着た、巨人族の男が。
腰には2本の剣が差されており、背中には大斧が。
他の兵士と比べても、明らかに体は大きい。
「なに、あれ?ひょっとして王様!?」
「いや、王がわざわざ防具を着て外に出てくるなんて考えづらい、もし闘技会を見にいくのだとしても、護衛が馬車に乗せて連れていくのが上等だ。」
「だとしたら、この王国の隊長さんとかかな?」
「その線が濃厚だね、だとしたら王国内はかなり手薄になるな……サリアリット、見てくれ!」
ズザッ、ズザッ。
大柄な兵士を先頭に、約100名の兵士が闘技場の方へと向かう。
全身フル装備で、まるでこれから戦争でもするかのような佇まい。
「あんなに大勢が、完全な装備で向かってる、クロくん、ミラさん、大丈夫かな?」
「彼らは、今は1人の選手だ。少なくとも、闘技会中に何か手を出すのは考えにくい、その後だとしたら2人の戦闘力はレイヴァーでも1位2位を争うほどだ、心配いらないよ。」
「そうだね、何度も死地を乗り越えたサリア達のリーダーとその大切な仲間だもんね、心配するだけ失礼だね!」
「そういうこと、これで兵士の数は減った、どうにか中に入れないだろうか。」
「だったら、サリアに任せて!」
スタタタタッ。
サリアは瞬足で、城の近くまで走り込む。
そして壁に触れ、何かを感じ取ろうとする。
「なるほどね、そういう構造なら入るには、1番高いところからかな。」
クイッ、クイッ。
サリアはノエルを手招きする。
スタタタタッ。
ノエルもサリアの位置まで走り、
「何かいい方法があるのかい?」
「もちろん!いくよ!」
シュイーンッ!
魔力を体に溜めて、
「捕えろ!
シュパンッ!シュパンッ!
城の壁から壁へ、木の枝が絡まり合いまるでハシゴのように出来上がる。
それは、屋根まで続いていた。
「よしっ!これで登れるよ!」
「確かにそうだけど、なんで屋根まで伸ばしたんだい?どこか途中の窓から入れそうだけど。」
「一応、中の状況を分かる範囲で魔力探知したんだけど、そもそも巨人族が魔力使えないからヒットするはずないんだよね。けど。」
「屋根の方には、何かヒットしたってことかい?」
「そういうこと!だから、何か怪しいってところも含めて屋根から行こうって感じ!」
ズザッ、ズザッ。
サリアが登ろうとすると、すぐに戻ってくる。
「どうしたんだい?」
「いや、ノエルくんに限っては平気だと思うけど、サリアの服装的に下からだと見えちゃうから先に登って欲しいなと。」
「ん?ああ、そういうことか。分かったよ、意外と気にしてるんだねーー。」
「サリアも女の子だよ!」
またしても、ノエルの頭の中に女の子?という疑問が湧いたがしっかりと飲み込み、先に上がった。
そして屋根の上にたどり着き、
「サリアリット、魔力は感知できるかい?」
「うーんとね……え?動いてる?」
「動いてる?てことは、生き物の可能性もあるな。」
「あっ、ちょうどよく天窓があるから、そこから入ってみよう!」
「そうだね、サリアリットは魔力の方も気にかけておいてくれ。」
スタッ。
2人は容易く王国内に侵入できた。
そして、最初に見つけた部屋は、
「図書室、か。」
「サリア達本の部屋にすごい縁があるね。」
「そうみたいだね、少し見てみようか。」
「はーい!」
2人は図書室に入ると、
「っ!?」
ノエルは何かを感じとる。
「どうしたの?」
「いや、誰かに見られた気がしたんだが、気のせいか。」
辺りを見渡しても、誰もいない。
2人は警戒しつつ、図書室を探索し始めた。
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