第243話 ミラの生まれ

拳の響ケンノヒビキ二式ニシキ雷鳴カミナリ!」


グルンッ!

ガゴーンッ!

空高く舞い、1回転したかかと落としが、相手巨人族の脳天に直撃。


その衝撃は、脳だけでなく体全体に響いているようであった。


「うがぁ、あ。」


ドスンッ。

男は倒れ込み、辺りにはその風圧で観客の髪を揺らす。


「け、決着!勝者、アレス!」

「なんということだ!まさに2人のダークホースが現れた!次々と一撃で決着をつけるミリアとアレス、果たして誰がこの結末を予想したか!!」


そう、これは準決勝。


クロウとミラも順当に勝ち進み、ついに決勝で当たることになった。



ここで、1点問題が起きていた。



ここまでの巨人族は、クロウとミラに一撃でも攻撃を入れるどころか、2人の武術を1発受けただけで全員ノックアウト。

予想以上の弱さに、戸惑ってしまっていた。


(やべぇ、またすぐ終わらせちまった、これじゃあアーシェ達とサリア達の時間を稼げてねえじゃねえか、てか、こういう大会に出る奴らはもっと強いんじゃないのか?血の気が多くて有名なんだろ、巨人族は!)


もはや、観客も煽ることをしない。


自分が賭けていた選手たちは、ことごとくこの2人に打ちのめされ、彼らの目的は達成できないことが確定してしまってるからだ。



スタッ、スタッ。

静かに歩きながら、控え室に戻ると。


「また1発で終わらせたな?」

「ミラも同じだろうが、俺たちがおかしいのか?巨人族ってのは、他の種族よりも戦闘に特化してる認識だったんだが、これじゃあエルフの方が強かったぞ?」

「正直、私も予想外だ。10年前の闘技会はもう少し賑わいもあった、強い戦士がいた記憶があるんだが。」

「ミラが出てたのか?」

「いや、私の父上が出ていたよ。私の戦い方は、父上と母上に教えてもらったものでな、かなりの強者と噂だった。」


ハーフタイムで、15分の休憩が伝えられたので、2人は椅子に腰掛けしばし休憩を取る。


「そういや、ミラの父親が巨人族で、母親が人族だったよな?」

「ああ、だから私はハーフの種族、この世界ではかなりレアな存在だな。」

「だからミラは他の巨人族と比べて変わってるのかーー。」

「あっ??」


ギロッ。

大抵の言葉をスルーするミラだが、クロウの余計な一言には反応し目が獅子のように鋭くなる。


「違う違う!変わっているってのは、他の巨人族よりも明らかに強いだろ?それは、両親が理由なのか、それともつけてもらった修行が余程しんどかったのどっちかだと思ってよ。」

「なんだ、そういうことか。だとしたら、後者だな、父上は闘技会で何度もチャンピオンになっている、そんな父上が当たり前にできることを私は教わった。」

「つまり、父親の当たり前がミラの当たり前に繋がってるのか、そりゃあ強くなるのも納得だ。けど、どうやってミラの両親は出会ったんだ?」

「なに、奇跡が巡り合わせてくれたとしか言いようがないさ。」



ミラの父、ライル。

そして母、アレク。


巨人族であるライルは、エリュシオンでも名を知られている戦士であり闘技会だけでなく、ギルドの戦士として活躍をしていた。



とある遠征にて、アテナイの近くまでモンスター討伐と、積荷の護衛のクエストを受けたことがあった。


その際、想定以上のモンスターが現れ逃げ出す戦士がいる中、一歩たりとも引かずに戦い続けたのがライルであった。


何十、何百のモンスターを倒したのかはわからない。


最後の1体を倒したところで、意識を失いその場に倒れ込んだ。



その時、


「各員応急処置を!っ!?この方が1番重症です、私が診ます!」


スッ。

ライラの近くに女性が走り込んでくる。


「脈はまだある、意識レベルは低下してる、大量の出血のせいね、誰か輸血パックを!止血は私がするから、その間に輸血準備して!誰も死なせてはダメ、勇敢な戦士を助けるのが私たちの仕事よ!」


(なんだ、声が聞こえる?女の、声か?諦めよ、我の命は、もうもたない……。)


「絶対に諦めない、あなたは必ず助け戻してみせる!」


そうして、アテナイからきた救護部隊がライル達を治療していった。




数日後、


ライラは目を覚まし、自分が生きていることを疑った。

それほどまでに酷い傷だと、自分でも理解していたからだ。


そして、目を覚ましたライルに、アレクがかけた1つの言葉。


「諦めないことが、今回生きられた結果よ。流石ですね、あなたは粘り強く諦めなかった、おかげで積荷も無事のようです。ありがとうございました。」

「……いいや、やるべきことをしただけだ。」

「それでも、あなたの力で助かった命数多い。だから、


それからというもの、時々ライルはアレクの元を訪れ、アレクもライルと出会えることを楽しみにしていた。


そして、2人は結ばれることとなった。



「こんな感じだな、私の両親は。でも、今は。」

「国に囚われてるってことか、聞いた話じゃ何も悪いことするような人じゃねえ、何か国に裏があるのが正しい予測かもな。」

「そうだな、そうであってほしいよ。」


2人はハーフタイムをしっかり休憩していた。




そして場所は変わり、サリアとノエルの城潜入部隊に移った。

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