第239話 闘技会へ

準備を終えた6人は、宿の外に集まる。


「それじゃあ、ここからは3班に分かれるぞ。俺とミラは闘技場、アーシェとリィンは会場近く、サリアとノエルは王国内。」

「ええ、みんな気をつけて。何が起きてもおかしくない状況、自分の命を最優先で。」

「うん!じゃあ、闘技会終わった後にまたこの宿で会おうね!」


スタッ、スタッ。

6人は3班に別れ、自然に決めたルートで動き出した。




まずは、クロウとミラの闘技会参加組。


「アレス、体はもう万全か?」

「ああ、やる気も相まって最高の状態だ!」

「では、あえて聞こう。白烏レイヴンを使いこなす事はできそうか?」

「……。」


ミラの質問にすぐ答えられない。


もちろん、先日の戦闘で自分の中の存在である白烏レイヴンとは分かり合えた、だが、それを使いこなせるかどうかは別の話だ。


体を乗っ取られる可能性もある、次暴走したら帰ってこれる保証はどこにもない。



だが、クロウの答えは決まっているようだった。


「まだ分からない。けど、これは俺の力だ、俺の力を俺が使いこなせなくてどうする、どんな手を使ってでも俺の力として使ってやる。」

「良い意志だ、だが、今回の闘技会で必要になるかはわからない、気負いすぎるなよ。」

「そうだな、まあ、決勝でミラと当たるまではいらないものだといいぜ。」

「私なら、始まって仮面を使わせる前に行動不能にさせるがな。」

「それじゃあダメだろ!俺たちに注目を集めさせるんだから、長く戦わねえと!」


ポンッ。

ミラは手のひらを叩く。


「そうだった、ならますます難易度は上がるな。」

「忘れてたのかよ、ポンコツ扱いするぞ?」

「そうしたら、この斧が黙っていないが?」

「その脅しは怖すぎんだろ!」


これから闘技会で命を賭けた戦いに臨むような2人には見えなかった。



そうこうしているうちに、闘技場まで辿り着いた。



ドーム状の建物に、中からは既に歓声が聞こえてきている。


この時間であれば、余興が始まっている時間だ。



「立派な建物だな、こん中で生死をかけた戦いが行われるのか、エリュシオンの文化って面白いな。」

「勝てば、この国で名を知らないものはいなくなる、つまりどんな職にでも何にでもなれるようなものだ。」

「なるほどな、そこでもしオールドタイプの人族が優勝したらどうなるんだろうな。」

「分からん、まあ気にするな。特例が生まれたら、それはそれで面白い。」


スタッ、スタッ。

2人は受付を通り、会場に入る


「本日の選手の方々、お配りした番号を確認し、各部屋にお入りください!」


闘技会の運営委員のような人が、皆を案内する。


クロウは、そのままクロウとして登録。

ミラは素性を隠すために、という名前で登録していた。


サリアに相談したところ、サリアとエリカのお姉さんみたいだからという理由で、ミリアが採用された。



2人は、壁にかけられているトーナメント表を確認する。


「俺は、aグループみたいだ。」

「私はbグループだな、最初の運勝負は、こちらの勝ちだな。」

「ああ、まずは決勝に俺たちが残る、それが最初の任務だ。待ってるからな、ちゃんと来いよ!」

「誰にものを言ってる、アレスこそヘマするなよ。」


コツンッ。

2人は拳を合わせて、各部屋に入った。



クロウの入った部屋には、多くの巨人族が集まっていた。

この部屋では、クロウだけが異種族であるようだ。



ギロリッ。

明らかに歓迎されていない視線で、クロウは注目を集める。


(まあ、歓迎されないのは予想通りだけど、ちょっかいをかけてこないでくれればいいな。余計な問題は起こしたくない。)


スサッ。

近くの椅子に、クロウは腰掛ける。



すると、


「おい、そこの小さいの。」

(ちっ、やっぱり絡まれるか。)

「なんだ?」

「その小さい体で、俺たちに勝負を挑むのか?粉々になる前に、帰った方が利口だと思うぜ、お坊ちゃん。」

「忠告ありがとうな、だけど、小さいやつは小さいなりの戦い方があるんだ、あんたらに通用するか試させてくれよ。」

「ふんっ、威勢はいいな。せめて初戦突破くらいできることを願っててやるよ。」


ドスンッ!ドスンッ!

声をかけてきたのは、3mはあるだろう巨大な男。


背中にハンマーを引っ提げ、筋肉で体が覆われてるように見えた。


「はははっ!こいつと当たれるやつはラッキーだな、余裕で2回戦に行けるぞ!」


周りの男も、クロウのことをバカにする。



だが、クロウは自分の力を測れない巨人族達に呆れていた。


(はぁ、いくら力を抑えてるとはいえ敵の力量も測れないオールドタイプの集まりか、本当に闘技会にでるようなメンバーなのか?)


クロウは疑問に思いつつも、時は過ぎついに闘技会が始まろうとしていた。


合計64名、32名ずつのグループに分け、両グループの1位が決勝で当たる。


さあ、クロウとミラの役割を全うする時が来た。

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