第234話 仮面の噂

「王国の闘技会に参加する……ですか?」


1週間後、クロウとミラはこれからのことについて提案していた。


「そうだ、今ここに2人のオールドタイプがいる、大会のルール上私とアレスしか参加資格がない、だが上手く活用すればお偉い彼らが出てくるところで時間を稼げる。」

「そこで、俺とミラが決勝で当たることを願いつつ、みんなには王国で何が起きてるのか調べて欲しい。ミラの話を聞いた感じ、王国の奴らは今閉鎖的で外の人間と話をしてくれるかも不安だ。」

「要するに、クロウとミラさんが闘技会で目立っている間に、王国の中から調べ上げろってことよね。」

「簡単に言ってるけど、僕たちは4人いるからカバーし合える、でも、君たちは2人別行動だろ?かなり危険な方法じゃないかい?」


ノエルは、最もな質問をする。


「そこに関しては、私たちを信頼してほしいとしか言えないな。もちろん、闘技会で犠牲者が出るようなことはこれまでにない、ただ、クロウが出ることでクロウに対するブーイングは生まれるだろう。」

「それじゃあ、クロくんだけ不利なんじゃーー。」

「いえ、それがクロウさんの狙い、ですよね?」


リィンは何かを察したかのようにクロウを見る。


「さすが、小さい時から見てくれてるリィンは察しがいいな。そうだ、俺に対する注目が集まるってことは、その分内側の守りも弱くなるはずだ。なんてったって、他国の存在が王国に迫っている、しかも1人で乗り込んできたと思わせられたら尚更だ。その人族を調べつくすに違いない。」

「その隙をついて、私たち4人で内部調査をすると……ハイリスクハイリターンってとこね。」

「この作戦をどう思う、リィンさん?」


ノエルの問いかけに、リィンは深く考える。



そして、導き出した答えは、


「実行してよい案だと思います。」

「よし、ならーー。」

「ですが、保険を掛けます。クロウさんとミラさんなら負けることは考えにくいですが、もしクロウさんが優勝してその事実を国が総力をあげて消しに来る可能性もあります。」

「確かに、考えられないことではないわね。どうやって対策するの?」

「この中で一番スピードに特化しているのは、サリアさんです。なので、内部調査はアーシェさん、ノエルさん、あたしの3名で、クロウさんとミラさんは闘技会に参加、サリアさんは観客として何か異変が起きた時の対策要員として配置するのが良いと思います。」


リィンは的確に指示を与えていく。


「さすがね、リィンは私たちの特徴もしっかりとらえてくれている。私は異論はないわ、みんなはどう?」


コクッ

他の4人も笑顔でうなずく。


「俺たちの脳が導き出してくれた作戦だ、あとは何か起きたら得意のその場対応でどうにかする。作戦をしっかり立てられたなかでの行動は、正直初めてだ。この6人での初任務、完遂してやろうぜ。」

「了解!」


作戦会議を終え、6人は王国に向かう準備を始める。


クロウは、傷のついた武器の手入れをしていた。


そこへ、


「この前の戦いで傷が増えたか?」


スタッスタッ。

ミラが様子を見に来る。


「少しな、あれだけ激しい戦闘の後だ、折れずに全部持ちこたえてくれたくれたのが奇跡だ。レイの作ってくれた武器だし、こんなにぼろぼろにしたくなかったんだけどな。」

「そういえば、いつだかの大会では伝説の武器素材も優勝賞品にされたらしいぞ。確か、ケラウノスだったか?」

「その名前、レイから聞いたことあるな、伝説上の生き物が残した素材だって。今回の優勝賞品も、期待していいかもな。」

「ならば、入念に準備しないとだな。私の斧も、長く使いすぎて刃がぼろぼろだ。使い方の問題だろうか。」

「ミラの場合はそうかもなーー。」


グリッ。

ミラの足がクロウの足を踏み抜く。


「おっと、すまない、体が勝手に動いて踏んでしまった。」

「そんなわけあるか!ミラは俺をいじめないって信じてたのによ。」

「なんだ、てっきり周りからそういう扱いをしてほしいって頼んでるのかと思ってたぞ。」

「んなわけあるか!それより、エリュシオンの事件が解決したら、アテナイの例の鍛冶屋に行こうぜ、俺たちの命を預ける武器だ、完璧にしておくのが大切だ。」

「私は嬉しい限りだ。ついでに、アテナイの案内もしてくれると助かる。ジュールに少し話は聞いているが、詳しく知りたくなった。」

「任せろ。」


2人は武器を整え終えると、リィンが合流する。


「あっ、お2人ともちょうど良かったです。1点お伝えしときたいことが。」

「どうした?」

「噂ではあるのですが……。」


スッ。

リィンは2人の耳元に寄る。


そして、



お2人の方が仮面の危険性については理解されていると思いますが、念のため気をつけてください。」

「仮面の戦士……蠢く会が出てくるかもな。分かった、ありがとうな、リィン。」


そして、準備を終えた6人はコリントスから出る馬車に乗り、王国に向かった。

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