第233話 王国行事

体調の回復に努めて、早3日が過ぎた。


オールドタイプ共通なのだろうか、クロウの回復スピードがとても早いのは承知していたが、ミラの回復も負けず劣らずでかなり早い。


10日間の休みで、戦闘しない前提で動けるくらいだと医者からは言われていた。



だが、このままならあと1週間もあれば問題なく動けるだろうと。



「本当に、クロウさんとミラさんの体はどうなってるんですか?初めは生きてることすら奇跡の状態だったのに、今はもう1人で歩けるくらいに治ってるなんて。」


リィンは少し呆れた顔で2人に話す。


「まあ、やっぱり頑丈なのがオールドタイプの特徴ってことでいいんじゃないか?」

「まあそうだな、その分私たちは魔力を使うことはできない、長所でもあり短所でもあるな。」

「それもありますけど!!あたしが心配してるのは、怪我の治りが早いからってまた無茶をするんじゃないかって方です!」


少しお怒りの声が発せられる。


「も、もちろん無茶はしないさ、キヒや他の皆に心配をかけたくない気持ちはある。」

「俺も同じだ!今回の反省を活かして、こうなる前に対処するしみんなに頼る!それでどうだ?」

「……。」


リィンは黙って2人を見つめる。



クロウとミラは同じことを考えていた。


(この前の説教で、リィンを怒らせると怪我以上にしんどいことがわかってる、もう怒らせたくない。)

(それを理由で話したら、また怒られかれない。心配させたくないのは嘘じゃないから、信じてくれ!)


「分かりました、今日から町の中を歩くことを許可しますが、少しでも危険なことをしてたら……分かってますね?」


鋭い眼光が、2人をさす。


「ああ!任せとけって!」

「ありがとう、キヒ。」


その光景を見てた他3人が感じたこと。



(この先、何があってもリィンは怒らせないようにしよう。)


リィンのおかげで、レイヴァーはさらにまとまりが出たように思える。



少し怯えてる人も何名かいるが。



スタッ、スタッ。

クロウとミラはコリントスを散策する。


「久しぶりに外に出たな、まあこんだけ怪我してたら当然か。」

「そうだな、この体のおかげで生きてられるんだからオールドタイプであることに感謝しないとだな。」

「ミラは、白狼リュコスの力を自由に使えるのか?」

「約2分だけ使えるようになった、初めは10秒も持たなかったよ。力を使いすぎると、体が拒否反応を起こして内部から壊されないかねないから気を付けてる。」

「なるほどな、俺も白烏レイヴンの力を使えるんかな?呼び出し方も分からねえし、心の中にいる感じが今はしないんだよな。」


2人この体のことについて話しながら歩く。


「まあ、焦る必要はないだろう。私もこの仮面を使うのに、5年はかかった。仮面の力がなくても、アレスは私と同じかそれ以上に強い力を持ってる、すぐに使えるようになる必要はないだろう。」

「そうだけどよ、いつ蠢く会が来るかもわからねえ。早めに習得できて損はないよな。て言っても、方法がわからねえんだから仕方ねえか。」


そこで、ミラはエリュシオンの闘技会を提案する。


「そうだ、カバラでは毎年闘技会といって、今誰が1番強いのかを示す1対1の真剣勝負があるんだ。武器は自由、どちらかがリタイアするか審判が戦闘不能と判断するまで決着がつかないシンプルなルールのな。」

「エリュシオンの王国カバラで開かれる行事か、そこだったら国の偉い奴だって出てくるよな?」

「ん?まあ、出てくる奴もいるとは思うが。」

「だったら、真正面から言っても突っぱねられる可能性だってある。なら、闘技会に出て優勝して話すチャンスを取るってのはどうだ?」


ミラは少し考える。


「なるほど、いいかもしれない。ただ、基本的に選手はオールドタイプしか参加できないから、私とクロウが参加することになるな。」

「いいじゃねえか、俺とミラが運よく逆側のトーナメントにいって、決勝で俺たちがぶつかれば時間もいい感じに稼げる。その間に、あいつら4人なら何か情報を掴んでくれるだろ?」

「いいのか?巨人族の戦いだ、もちろんオールドタイプなら出場資格はあるが、かなりのアウェイだぞ。私は、名前を隠してフードでも被れば騙せると思うが、アレスは人族として狙われかねない。」


クルッ。

少し先を歩いていたクロウが振り返る。


「何言ってんだよ、ミラ。俺がそんな簡単に負ける奴だと思ってんのか?俺は既に人族の町から追放されてる、なんなら指名手配すらされてる。そんな奴が、他の国のアウェイ感に呑まれる程やわなわけないだろ?」

「……ふっ、頼もしいな。では、これは1週間後に皆に話そう。それまでに作戦も立てておきたい、どうやってこの国の秘密を暴くかのな。」

「ああ、そうだ、1つ言っておくぜ。」


スッ。

クロウはミラの顔に近寄り、


「決勝であたっても、最後に勝つのは俺だ、よろしくな!」

「ふふっ、面白い冗談だな、負けることは私は嫌いでな、アレスであっても譲れないな。だから、全力でこい。」


2人は戦士としての血が滾っていた。



そして1週間後、皆にこれからの方針を伝える日が来た。

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