第231話 頼りになる者
クロウが目を覚ましたことは、次の日の朝にみんなに報告された。
サリアには涙ながらに迎え入れられ、ノエルには呆れられながらも笑顔で歓迎され、リィンにはひどく叱られた。
だが、誰1人クロウが帰ってこないとは考えてなかった。
これでレイヴァーおよび、リィンとミラも無事生還、勝利とは言い難いものだが次に繋げられる、いや、繋げなくてはいけない戦いだった。
「ジィー。」
「ゴクンッ。ガリガリッ。」
普段と変わりない宿屋での風景。
だが、
朝ごはんを食べていた6人の中で、明らかに食事に集中できていない人が1人。
「どうしたのアーちゃん?初めて箸が進んでない姿見たよ?まだ体調が悪い?」
「あ、いや、完全とは言えないけど平気よ。ありがとう、サリー。」
アーシェはクロウを見つめていて、食事に集中できていなかったのだ。
もちろん、クロウも違和感を感じ取っていた。
(なんだ?アーシェが今までにないくらい俺を睨んでる?けどなんでだ、昨日のことか?一旦謝るか?いや、理解していない謝罪は逆効果だ、どうすればいい?何が正解だ?)
クロウも食事に集中はできていなかったが、何が正解かもわからなかったため、出来るだけ意識せずに食事を終えた。
そして、ミラがこれまで集めた情報を全員に共有し始めた。
「まず、謝らせてくれ。レイヴァーを、エリュシオンで起きている事件に巻き込んでしまったことを。」
「別に謝る必要はない、俺たちは俺たちの意思で首を突っ込んだんだ、誰もミラを責めちゃいない。」
「そう言ってもらえるなら助かる。まずは、私が知っている仮面のことについて共有させてほしい。」
その昔、
今の国、アトランティスを作り上げた過程で必ず出てくる名前がある。
それが、
そこには、合計6体の存在が記されている。
獅子、狼、鷹、猪、麒麟、烏。
その中の烏は、クロウのアレス家が。
狼は、ミラのアトラース家が継承している。
現状、他の4体を継承した家柄は分からなく、死亡したという説も流れている。
では、この力は何なのか。
現段階で分かっているのは1つだけ。
継承者は、神と呼んでいるこの存在を自分の内側に飼っている。
サリアとエリカのような無理やり作り出されたものではない。
クロウとミラが付けている、指輪が本人に干渉しているのだ。
もちろん、指輪を外すことはできる。
だが、1度嵌めることが出来た者は、外したとしても指輪の神と対話できる状態にある。
クロウの場合は
ミラの場合は
他の存在は、ミラも知らない。
それを知るため、そして行方不明な両親を探すために今日まで旅を続けている。
「これが、私の知る仮面についてのことだ。私も、1度この力に翻弄され、自力で押さえ込むのに山1つを壊しかけた。」
「それでも1人で抑え込むなんて、ミラさんすごい!」
「まあ、本当にこの使い方が正しいのかは分からないがな。全ては、私の両親が知っている、だから探し出さなければならない。」
「ということで、私たちはミラさんの行動を手伝おうと思うの。私とクロウは了承してるけど、3人はどう?」
アーシェが3人に問いかけると、
「サリアは問題なし!」
「僕も賛成だよ、周り回って僕たちの利益になる。」
「あのー、あたしも入ってるのですか?」
リィンはそーっと手を挙げ質問をする。
それもそのはず、まだ正式にレイヴァーに入るのか決まっていなかったから。
だが、他4人の返事は決まっていた。
「当たり前だ、この事件を解決するのに絶対にリィンの力が必要になる。相当ミラとジュールに指導されたんだろ、動きが俺たちと遜色ない。その努力の結晶でできた頭脳と力、俺たちに貸して欲しい。」
「……ありがとうございます。」
スッ。
リィンは俯いて返事をする。
その様子を見て、少しざわつく。
「あ、あ、リィンちゃん、嫌だった?」
「嫌なわけありません、ですが、これが夢なんじゃないかって思ってしまって。憧れだった皆さんの中に、あたしが入っていけるなんて。」
「何を今更言ってるの?私は、リィンが嫌と言わない限りいつか必ず引き入れようと思ってたわ。あなたの人間力は私たちの誰よりも高い、そして努力の天才。そんな逸材を、見逃すほど愚かではないわ。」
「そういうことだ、リィン。俺たちには、お前が必要なんだ。簡単に言えば、リィンは俺たちの脳だ、脳が指示しやすいように俺たちは力を発揮する、そうやってこれからは一緒に生きていこうぜ。ここ、重要、上書きしたか?」
「……はい!これから、よろしくお願いします!」
リィンは正式にレイヴァーの一員となった。
これで5人体制、ミラも一時的に同行してくれるので6人で動くことになる。
「では、脳担当からお知らせです。クロウさん!ミラさん!お二人の怪我は相当のものです、いつ傷が開いてもおかしくありません!なので、これから10日間は宿に缶詰にします!」
「えっ!?そんなに時間かけなくてもーー。」
「あら、早速脳に逆らうのかしら、うちのリーダーは?」
「っ、わ、分かりました。」
「もちろん、こそこそ2人で抜け出したりしたら説教じゃ済まさないのでそのつもりで!」
リィンは明るい笑顔で、怖いことをさらっと言う。
クロウもミラも、逆らうことは危険だと察し素直に言うことを聞いた。
そして、他4人は買物や情報収集のため外に出た。
クロウとミラは、宿の広間で休憩していた。
「なあ、アレス。レイヴァーのリーダーは君だろ?キヒに変えるのはどうだ?」
「確かに、それがいいかもな。あいつの指示は的確だったし、逆らえない怖さを感じた、後で相談だな。にしても暇だな、なあミラ、お前の過去の話してくれないか?」
「なんだいきなり?そんなためになる話はできないぞ。」
「でも、1人で背負い続けてるものはあるだろ?」
クロウの鋭さに、ミラは目を見開いて驚く。
「鋭いな、やっぱりリーダーはそのままでいいかもな。」
「褒め言葉として受け取るよ。で、俺に話せることはないのか?」
「そうだな、なら私が死神と呼ばれる理由、聞いてもらえるか?」
ミラの異名の意味が、ついに明かされる。
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