第214話 リィンの思い

3人は、カバラの町を出てコリントスへと歩いていた。


その間、約20分。



まずはクロウたちと合流し、これからの動きを一緒に考えることにした。


「クロくん達、リィンちゃんが来てるの見たら驚くよね!しかも、エリカと共闘までしたなんて話したら直ぐにでもレイヴァーに合流してほしいってなるよ!」

「そうだね、僕たちの中で1番頭の回転が良いし、戦い方も誰よりも洗練されてる。冷静に周りを見れるし、絶対に必要な戦力だ。」

「そうですかね、皆さんに比べたらまだまだあたしの力は不完全ですし、ご迷惑をおかけする可能性もーー。」

「いいんだよそんなこと!サリアだって、この前みんなにすごい迷惑かけちゃったし、クロくんとかアーちゃんだって完璧な人じゃないよ?むしろ、完璧な人間なんて存在しないってサリアは思うな。」


サリアは先頭を歩きながら静かに話す。


「完璧な人間が仮にいるんだとしたら、それは完璧だと思い込んでる人だと思うんだ。生きてく上で、なんでも完璧にできちゃう人がいたら、逆に怖いもん。」

「そうだね、だからこの世界の人は未来の人達に思いを託してる。そうやって、歴史ができてるんだからね。」

「お二人とも……ありがとうございます、少し気が楽になりました。」

「じゃあ、クロくんたちと合流したら王国を目指したいね、ミラさんもいたらいいな!」


スタッ、スタッ。

3人はコリントスに近づいて行く。



そんな中、リィンは考えていることがあった。


(もし、ミラさんが死神だとしたらレイヴァーの皆さんはどうするんでしょうか。もちろん、何か理由があるはずですし、嘘の情報かもしれない。けど、迷いは必ず生まれる、その時あたしに出来ることってなんだろ。)





リィンは修行をつけてもらってた時の事を思い出す。



赤龍セキリュウ昇龍波ショウリュウハ!」


バゴーンッ!

槍から衝撃波が生まれ、目の前の練習用カカシを壊す。


「うん、リィンさんの動きもスムーズになってる、それに槍に力も乗せられてるね。この短期間ですごい成長だよ!」


ジュールがリィンを褒めていた。


「本当に、キヒの基礎はもともとできてたとはいえ、オールドタイプの動きを体に覚え込ませることができた。それに柔軟に対応し、ここまでの動きが出来ればレイヴァーに引けを取らないだろう。」

「ありがとうございます、ジュールさん、ミラさん。おかげさまで、この槍も手につくようになりました。」

「ただ、護身用に腰のナイフは持っておいたほうがいいね。ダガーをサリアさんが使えるから、少し学べば槍が手から離れた時に戦えるよ。」

「それと、これは私からの提案なんだが、投げナイフも仕込んではどうだ?アレスもそうだが、遠距離戦を魔法が使えない人は苦手とする。その分、投げナイフがあればこれから先役に立つと思う。」

「分かりました、それでいこうと思います!」


そうして、修行を仕上げに入り、ミラに同行してエリュシオンに入った。




それから数日後、今に至る。



(あたしの戦いは、2人のアドバイスで成り立った。決めるのはあたしじゃない、レイヴァーの総意で決めるってクロウさんならいうはず。なら、適切な情報を、的確に渡すのが、あたしの役目かな。)


「リィンちゃん!町が見えたよ!」

「まだ遠いけどね、ゴールが見えただけで少し疲れが取れる気がするよ。」

「あ、分かりました!すぐそっちにーー。」



次の瞬間、



バゴーンッ!バゴーンッ!

3人の耳に、大きな爆発音が響き渡る。



「なんだ!?爆発!?」

「それもかなりの音です、距離も近い。ここから、西の方角です!」

「嫌な風が吹いて、周りの植物たちが怯えちゃってる。行ってみよう、クロくんならそうするはず!」

「サリアリットに賛成だね、もしかしたらクロウガルト達も来てるかもしれない!」

「分かりました、行きましょう!」


タタタタタッ。

3人が走って爆発音の方へ走る。




「ちっ、なんでこんなにゴーレムがいるんだよ! 空の光ソラノヒカリ三式サンシキ日輪ニチリン!」


ズザッ!

ジャギンッ!

2刀の上段斬りが、ゴーレムの右手を傷つける。


クロウ達は、爆発が響いていた場所で戦闘を行っていた。



爆発が起きたのは、かなり小さい町。


クロウたちがたどり着いた時には、人がおらずゴーレムが複数体暴れていた。


辺りの家や壁は壊され、見るにも耐えない状態。



「氷つけ!凍て付く光フリーズレイ!」

参の光サンノヒカリ覇王の咆哮レグルス!」


ヒュイーンッ!!

バキキキッ!

バゴーンッ!

アーシェが足を氷漬けにし、ミラがその上から回転斬りで倒す。


「これで何体倒した?」

「3体のはずよ。けど、まだ10体はいそうね。」


ドスンッ、ドスンッ。

クロウたちの前には、まだ多くのゴーレムが。


「なんでこいつらがここにもいるんだよ。蠢く会は、何を考えてんだ!」

「もしかしたら、本人も近くにいるかもしれないわ。早めに決着をつけましょう。」

「それじゃあ、サリア達も必要になるよね!」


ズザーッ!

クロウたちの後方から、サリア達も合流する。


「ナイスタイミングだサリア!って、リィン!?なんでここに!?」

「まさか、1人でここまで来たんじゃないわよね!?」

「クロくん、アーちゃん、落ち着いて!詳しくは後で話すとして、リィンちゃんは重要な戦力だよ!だから、今からは!」

「ミラさんとリィンさんを含めた僕たち6人で動くことになるね。これまでで最大級の戦力だ。」

「なら、何も心配いらねえな!」


ズザッ!

6人は武器を構える。


「クロウさん、やっと隣に立てるんですね。」

「待ってたぜ、リィン!俺たちの頭脳として、よろしくな!そんじゃあ、迅速かつスマートに、やってやろうぜ!」

「了解!」


これまでで最大級の戦力を保持したレイヴァー。


その先に、あるものとは。

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