第210話 新しい戦士

スタタタタッ。

サリアとノエルは全速力で報告のあった町に向かう。


被害を受けているのは、ここから数キロ離れた町。


モンスターの出没はないわけではないが、今回は規模が違うとのことで助けを呼びにきたらしい。



「サリアリット、槍を持ったニューマンって予想できるのは。」

「うん、1人しかいないよ。ここはエリュシオンだから、ニューマンがいる時点で珍しい、そして今回のミラさんの事件といい、彼女なら付いてきてても違和感ないよ。」

「てことは、やっぱり。」

「リィンちゃんが戦ってるんだ。ミラさんとジュールさんから修行を受けてるはず、約1ヶ月くらいだとは思うけど彼女のような努力家なら戦えるくらいには成長してても何の不思議でもない。」


スタタタタッ。

さらに2人はスピードを上げ町に向かう。


「もし、リィンさんだとしてここまでどう来たのだろうか、ミラさんが連れていたとか?」

「その可能性もあるね、それでどこかで逸れたとか。もし一緒に今もいるなら、あの男の人が教えてくれたはずだし。」

「そうだね、死神と呼ばれてる人を見逃すことはないだろうね。」

「うん、だからこそ今は少しでも早く辿り着かないといけない、ノエルくん!さらにギアをあげるよ! 憑依セカンド交代チェンジ!」

「了解! 力の解放パワーブースト!」


バゴーンッ!

さらに2人は力を解放し、町へとただ一直線に走る。





ここは、サリア達が向かう町。


そこでは、巨人族があらゆるモンスターと対峙していた。


サーベルウルフなど、弱い個体もいるが、見たこともない大きな強い個体なども存在している。


少しずつ戦える者も減り、押されつつある。



そこで、1つの声が響き渡る。


「みんな聞いてください!敵の攻撃は、南側に集中しています!北側は私が受け持ちますから、南側の守りを固めてください!」

「おいおい、女の戦士1人でどうにかなるレベルじゃねえぞーー。」

「だからです!だから、ここにいるみんなでやればいいんです!まずは南側を完全に鎮圧する、その後に北側を抑えられれば、あたし達の勝利です!」

「わ、分かったが、無理はするなよ!」

「もちろんです、ありがとうございます!」


この声の主は、リィンであった。


スタタタタッ。

巨人族はリィンを残し、南側に全員走る。




「グルゥゥ!」

「シャァ!!」

ぱっと見10体はモンスターが目の前に。


それでも、リィンは怖気付くことはなかった。


(あたしが全部倒せたらいいけど、流石に厳しい。だとしたら、確実に倒せるモンスターから狙う、そして大型のモンスターは避けることに専念。集中するんだ、1秒とも油断は許されない。)


チャキンッ。

リィンは槍を構える。


「ガルゥ!!」


サーベルウルフが単騎でリィンに襲いかかる。


「ふぅ、教わったことを表現するだけ、あたしならできる! 赤龍セキリュウ昇龍波ショウリュウハ!」


ズンッ!

ドゴーンッ!

槍の突きと共に、衝撃波が生まれサーベルウルフを倒す。


「よしっ、この感覚、このまま突き進む!」

「ガァ!!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

複数のモンスターがリィンに襲いかかる。


それをうまく躱し、危険な攻撃は避けることに専念、狙える時は攻撃に移る。


リィンらしい、頭を使う戦い方をしていた。


「次は、ここだね! 橙龍トウリュウ破龍槍ハリュウソウ!」


ザッ!ザッ!ザッ!

槍の連撃が、さらに1体のモンスターを倒す。


「ガァ!」

「くっ!」


ガギーンッ!

大型レッドパンサーの爪撃が、リィンを弾く。


「反応は間に合ってる、でも1人じゃ現状維持が精一杯。あの人たちが戻ってくるまで、10分は確保しないと。スタミナ戦だね!」


ズザッ!

ガギーンッ!

モンスターの攻撃をいなしつつ、なんとか耐えるリィン。



「ガァー!!」

「背後を取ったからって、隙なわけじゃないよ!」


シュンッ!シュンッ!

リィンは太ももの装備に付けられていた、投げナイフを投射。


そして、


赤龍セキリュウ昇龍波ショウリュウハ!」


ズンッ!

グサッ!

投げナイフを加速させるように衝撃波を放つ。


「ガゥゥ!!」


ドタンッ!ドタンッ!

レッドパンサーは足に刺さったナイフにもがき苦しむ。


「よしっ、でも浅いーー。」

「シャァァ!」

「数が多いよ、もう!」


ガギーンッ!

更なるモンスターの攻撃をなんとか弾く。



それから5分程経過しただろうか。



リィンにも疲れが出ていた。



それもそのはず、数が1体でも多いだけで本来は辛いのに、今の敵は8体。


「はぁ、はぁ、まだ、負けられない!」


ドゴーンッ!

リィンが気を入れ直すと、背後から爆発音が。


「えっ!?敵の増援!?」

「グルァ!!」


リィンが気を取られた瞬間を、レッドパンサーは見逃さなかった。


鋭い爪が、リィンに迫る。


「しまっーー。」


その距離、30cm。




その時、



「なーに、うちらの仲間に手を出してくれてんのや!! 肆のシノマイ友の協奏曲フレンズコンチェルト!」


グルンッ!

ジャギンッ!ジャギンッ!

ブーメランのように投射されたダガーが、レッドパンサーの足を切り裂く。


「グギァァ!!」

「っ!?今なら!」


ズザッ!

リィンは怯んだところに畳み掛けるように、


橙龍トウリュウ破龍槍ハリュウソウ!」


ザッ!ザッ!ザッ!

槍の連撃が、レッドパンサーを襲い、地面に素材となって落ちる。


これで残り7体。



「さっきのダガー、もしかして!?」

「おう、久しぶりやな、リィン嬢!」

「サリアさ……いえ、エリカさんですね!」

「おっ、分かってくれるか、嬉しいやないか!」

「それなら皆さんも。」


ズザッ!

モンスターはさらに威嚇をする。


「確かに、レイヴァー全員いるで。ただ、訳あって今は別行動中や、この戦い終わったら合わせたる!」

「ありがとうございます!今回は、あたしだってやりますよ!足を引っ張ったりしません!」

「ふっ、そんな心配元からしてへんわ!ほんなら、行くで!リィン嬢!」


エリカとリィンの共闘が始まった。

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