第209話 仮面の存在

「エリュシオンの歴史って、何が絡んでいたの?」

「簡単に言えば、今のエリュシオンという大きな国ができるまでの道のりかな。もちろん、ここまでの大きな国を作るには何百年も費やしてる。そこで、度々出てくる、いわゆる名家と呼ばれるものがあったんだ。」

「サリアのアルテミス家みたいな感じ?お母さんと、その先のご先祖様が続けてきた世界、今はセレスティア家のアンジュ王女が治めてるような。」

「そんな感じだね。エリュシオンの場合その名前が……アトラース家だったんだ。」


ガタンッ!

サリアは驚きのあまり、足をテーブルにぶつける。


「だ、大丈夫かい!?」

「痛っ、それよりミラさんが何か関係してるの!?」

「可能性は大きい。彼女はまだ若いから、実質的にそのご先祖様たちだろうけど、エリュシオンが完成するまでにはアトラース家が大きく絡んでいる。」

「なるほどね、確かにミラさんは今の所出会った巨神族とは違う部分があるよね。……あっ、でもミラさんって確か人族と巨人族のハーフだったような?」

「そうなのかい!?僕としたことが、聞き逃していたよ。」



ノエルはさらに何か思い巡らせているようだ。



なぜなら、この世界においてハーフというのはとても数が少ない存在、国を超えて仲の良い種族というのはあまり存在しないのだ。


「それで、他には何が書かれてたの?」

「大きく書かれてたのはもう1つだけ、っていう言葉だね。」

「なんかかっこいい響きだね、必殺技みたい!」

「あははっ、確かにそういう類のものかもしれないね。ただ、その先の部分は切り取られてて僕も答えは知らないんだ。」

「そうなんだ、じゃあミラさんをクロくんたちに連れてきてもらって、そこで答え合わせすればいいね!」


ゴクンッ。

2人は食事を終え、これからのことを考える。


「あの図書館は、クロくん達にも一緒に来てもらう方がいいと思うんだ!情報量が多すぎて、サリアの頭じゃパンクしちゃうよ。」

「そうだね、4人で情報を探してみようか。」

「ちょっと!そこはしっかり、サリアの頭なら平気だと思うけど?ってフォローが必要だと思います!」

「あ、ああ、すまない、そのまま受け取ってしまった。」

「油断大敵だよ、女の子の反応は男の子にとって生物みたいに大切にしてもらわないと!」



そこでノエルは一瞬考えた。



サリアは女の子?で通して良いのかと。



だが、あまりにも危険な賭けと判断し口にするのを辞めた。



「じゃあ、少し町に住んでる人から話聞いてみようか!巨人族もエルフほどじゃないけど長生きだから何か情報あるかも!ミラさんのこととか、エリュシオンのこととか!」

「そうだね、資料よりも人の声の方が正しいこともあるだろうし、行ってみようか。」

「じゃあ、ノエルくんお会計お願いね!」

「ああ……って、2人に内緒にするなら僕持ちなのかい!?」

「えー、ダメ?」


サリアが子犬のような目で見つめる。


「はぁ、分かったよ、助けてもらったお礼にはちょうどいいかな。」

「ノエルくん優しい!じゃあ、先に外で待ってるね!」


スタッ、スタッ。

サリアは先に外に出る。


そしてノエルがお会計を済ませていると、


「お兄さん達、うちらの戦士を助けてくれた人だろ?」

「え?あ、まあ、大したことはしてませんが、そうなるんですかね。」

「ありがとうね。あんた達が来てくれなかったら、うちらの大切な仲間が、この町が危うかった。私たちが生きてるのは、あんた達のおかげさ。」

「そんな、大袈裟ですよ。僕たちは、依頼されてそこに向かっただけでーー。」

「それでもだ。たくさんの命を、あんた達は救ってくれた、それはもっと誇りに思っていいんじゃないかい?まあ、助けられた側のうちらが言うことじゃないかもしれないがね。」


スッ。

ノエルは1枚の紙を手渡される。


「これは?」

「話聞いてた感じ、大食いの人がいるんだろ?これ、夜に貸切にできるチケットだ。費用は少しもらうが、命の恩人にお礼をさせておくれ。その分、大量に食材は仕入れとくからね!」

「……ありがとう、ございます。」


ノエルは忘れかけていた。


仲間だけじゃない、普通に暮らしてて誰かに感謝されることを。


そして、この心が暖かく癒されるような感覚を。



少し遅れて、ノエルも外に出る。



「ごちそうさま!ノエルくん!んっ、なにそれ?」

「このチケットに日にちを書いて出しておけば、その日の夜を貸切にしてくれるらしい。僕らの話を聞いてて、くれたんだ。」

「本当!?じゃあ、2人の秘密じゃなくなっちゃうけど、ちゃんと来ようね!」

「ああ、もちろんだ。」


そして、2人は町を歩き情報を集めていた。



2時間ほど経過したところで、公園のベンチで休憩をしていた。


「少しずつ、この町については分かってきたね。」

「そうだね、けどエリュシオンのことはまだあまり分からない、僕たちも外に出たほうがいいだろうか?」

「そうだね、どうしようかなー。」

「そうだ、サリアリット、1つだけ話しておきたいことがあるんだ。」

「ん?なに??」


ノエルがサリアを真っ直ぐみる。


「クロウガルトの仮面についてだ。」

「仮面について何か知ってるの!?」

「いや、知ってるってほどのことではないんだが、仮面には種類があるようなんだ。そこに書かれていたのは、獅子、狼、鷹、猪、麒麟、そして烏。」

「それって、クロくんがあの時顔につけてた。」

「ああ、これが何を意味するのかは分からない。けど、秘密の力に関係はしてると考えてる。ただ、クロウは血のホワイトデイで生き残った、数少ないオールドタイプ。種族が違うのに、力を使える理由がまだわからない。」

「そうだね、クロくんにも聞いてみようかーー。」



突如、2人で話してた場を遮るものが現れる。


ダダダダダッ!

遠くから、全速力で走ってくる巨人族が。


「おーい!俺たちの英雄さん!もう1度助けてもらえねえか!」

「ど、どうしたんですか!?」

「と、隣の町に大量のモンスターが攻めてきたらしい、俺たちの仲間も戦ってるが、槍を持ったニューマンもいるんだよ!」

「槍を持ったニューマン?……まさか、それって!?」


ズザッ!

2人はすぐさま走り出す。


はたして、2人の頭に浮かんだこととは。

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