第208話 エリュシオンの歴史
「落ち着いてよノエルくん!ここで騒ぎを起こしたら、サリア達の頑張りが無駄になっちゃうよ!」
「ふぅ、ふぅ……。すまない、感情的になってしまった。」
「ノエルくん……今日はもうこれくらいにしない?外でご飯でも食べようよ!サリア、甘いもの食べたい!」
「え、だがまだ調べ物が全然終わっていなーー。」
「甘いもの食べたい!」
ガシッ。
サラダはノエルの手を無理やり引き、外に連れ出す。
「わ、分かった!分かったから!」
「分かればよし。じゃあ、ノエルくんは何食べたい?」
「え、甘いものでいいかな。」
「それはサリアが食べたいものだよ!ノエルくんが食べたいものを、サリアは聞いてるの!どれだけ美味しいものでも、食べたい気持ちがなかったら勿体無いじゃん。」
「……それじゃあ、パンが食べたいかな。塩味の効いた。」
「よしっ!じゃあ、2人の条件に当てはまるお店を探そう!」
スタッ、スタッ、スタッ。
サリアはノエルの前を歩く。
(ノエルくん、今まで見たことないくらい取り乱してた。あの状況からすると、ダウンタウンが存在してることが引っかかってるみたいだった、何があったんだろう。)
サリアはノエルを気遣って、図書館から連れ出した。
いや、それよりも怖かったのだ。
ノエルがノエルじゃなくなりそうで。
「あっ、このお店なんてどう?」
スッ。
サリアが指差す先には、パフェや焼きたてのパンの匂いが広がるお店が。
「うん、ちょうど良さそうだね、ここにしようか。」
「賛成!」
ガチャン。
2人は店に入り、席に着く。
そして、メニューの中からサリアはフルーツパフェ、ノエルは塩焼きにされた肉が挟まれたバーガーを頼む。
少しの間、沈黙が流れる。
それを破ったのは、ノエルの方だった。
「さっきはすまなかった、サリアリット。場所もわきまえずに取り乱してしまって。」
「そんなそんな!謝ることじゃないよ!誰にだって感情は存在するんだから、ノエルくんだって怒ることはあっていいんだよ。」
「……ありがとう、今後は、もっと気をつけるよ。」
「気をつけるのも大事だけど、楽になる方法を考えるのも忘れないで!1人じゃ解決できないことは、みんなで解決すればいいんだから!」
「……うん、そうだね。」
ノエルの表情に少し余裕が生まれる。
そうこうしてると、頼んだ料理が運ばれてくる。
「いただきます!」
2人は早めの昼食をとり始める。
「うーん!甘いアイスに、酸味の効いてるソース、フルーツもたくさん乗ってていいこと尽くし!」
「良かったね、幸せそうな顔だ。」
「はいっ!」
スッ。
サリアはスプーンに乗せた、少し多めの量のパフェをノエルに向ける。
「えっ?」
「早く食べないと崩れちゃうよ!」
「いや、でも、悪いよ。」
「いいから、食べて!」
ガスッ。
ノエルが口を開け終わるや否や、スプーンが突っ込まれる。
「うぐっ、あ、美味しい。」
「だよね!こういうのは、みんなで分け合うとさらに美味しいんだよ!」
「なるほど、あ、じゃあ。」
スッ。
ノエルも紙に包まれたバーガーをサリアに向ける。
「あ、ありがとう!そのまま持っててね!」
ガブッ。
サリアもバーガーを一口。
「こっちも美味しい!良いお店見つけたね!あっ、でもアーちゃんたちには内緒にしとこうね、なに言われるか分からないし!」
「……ふふっ、そうだね。特に、アーシェリーゼはここの食材を食べ尽くす可能性だってあるね。」
「そうそう!だから、これは2人の秘密!」
「秘密……か。懐かしいな。」
ノエルは少し暗い表情になる。
「どうしたの?もしかして、スプーンが刺さった!?」
「いや、そうじゃないよ。ただ、兄さんとのことを思い出したんだ。」
「ノエルくんは次男だよね?確か、お兄さんは……。」
「蠢く会のホルム兄さんだ。いろいろあって別々の道を歩んでるけど、元々は同じ目標を持ってたんだ。」
「同じ目標?」
クイッ。
サリアは首を傾げる。
「ああ、僕たちは世界を知ることが、知らないことを学ぶのがとても大好きだった。図書館にもよく通ったし、外にも出てた。」
「へぇー、意外とアウトドアな部分もあったんだね!」
「意外かい?まぁ、それも昔の話になってしまったけどね。今は、僕と兄さんは敵同士、次出会うことがあったら、戦わなきゃいけない存在。」
「……それって、2人が望むことなのかな?」
ノエルに優しく尋ねる。
「それは、僕たちは求めるもの、目標が違ってしまっている。なら、戦うしか道はない。」
「本当にそれだけかな。サリアはそう思えないんだ、だって、2人とも自分の意思で今を生きてるんだよね?だったら、話し合って理解し合う事もできるんじゃないかな?」
「……それは流石に楽観的すぎではないかな。蠢く会は、許されないことをしている、つまり罰を受けなくちゃいけない。だから、倒さないといけないことに変わりはないーー。」
「罪を犯しても、そこで終わりじゃないよ。誰だって、間違いを犯してしまう、その中には許されないほど大きな間違いもあるかもしれない。けど、やり直す資格はみんな平等だと思うよ。」
ドクンッ。
ノエルの心臓が大きく響く。
サリアの言葉を聞いて、自分の視野が狭いと痛感したのだ。
「なるほど、さすがサリアリットだね、年の功ってやつかな。」
「褒められてる気があまりしないけど、今回は許す!で、2人はどんな目標を立ててたの?」
「うん、僕と兄さんは世界を暴く。簡単に言えば、血のホワイトデイの本当の意味を調べてたんだ。そこに辿り着く前に、エリュシオンという国の歴史が少し絡んできたんだ。今回の、ダウンタウンのことも同じように。」
ノエルが話そうとしてること、それはいったい。
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