第207話 2人行動
一方、クロウとアーシェを見送ったサリアとノエルは、コリントスでアトラース家についての情報を集めていた。
ギルド長にノエルが交渉すると、町を自由に歩くことと図書館の利用を許可してくれた。
そして、2人は図書館に向かっていた。
「ノエルくん、人との交渉本当に上手いね!さっきも、サイラスさんは判断を迷ってるようだったけど、手に入れた情報はギルドの成果として報告するってことで解決させたし、サリアには考えもつかなかったよ!」
「ありがとう、この力を褒められることがあるとは思わなかったよ。口が上手いだけじゃ、何もうまくはいかないからね。」
「そんなことないよ!少なからず、ノエルくんは力も持ってる、回転の速い頭と強い敵とも戦える力はノエルくんが努力したから手に入ったものだよ!」
「サリアリットは、周りを元気にさせるのが上手だね。一緒にいるだけで、なんか救われるような気がするよ。」
「やっぱり、ノエルくんは何かに苦しめられてるの?」
ズザッ。
途端にノエルは歩を止める。
「なんで、そう思うんだい?」
「だって、クロくんとかアーちゃんと違って、ノエルくんは心から笑ったところ見たことないんだもん。一緒にレイヴァーになって行動して、結構時間経ってるよね?サリア達に話すのは、不安?」
「……みんな、優しいんだな。他人の僕に対してそんなに気にかけてくれるなんて。」
「他人じゃないよ、家族だよ?」
「えっ?」
ノエルはキョトンとした顔でサリアを見つめる。
「忘れちゃったの?レイヴァーは、1つの家族なんだよ!本当の家族じゃないけど、互いに支え合ってどんなことも乗り越える。そして、追放されたことすら忘れられる場所にサリア達がなる。」
「そんなことが、本当に可能だと思うのかい?生まれも育ちも、全く違う4人なんだぞ?」
「出来るよ、サリア達なら。だって、今まで何度不可能に思われそうなこと達成してきた?レイヴァーを家として使うことは、不可能じゃない。これは、断言できるよ。」
「……そうか、もう少しだけ時間をくれないか、クロウにも似たようなことを言われてね、だから必ずみんなに自分のことを話す。その準備の時間を、もう少しだけでいいから欲しいんだ。」
「OK!焦らなくていいよ、サリアはエルフ、誰よりも長生きするからそれまでに教えてね!」
タッタッタッ。
サリアは軽快に走り出し、図書館に向かう。
(……兄さん、僕は、変われる場所ができた。兄さんは、変わりたくてあの姿になったの?あの時、救われた顔はしてなかったと思うんだ、僕たちの約束は忘れてしまったのかい。)
ノエルも、考えことをしながら図書館に入る。
キィーッ。
2人は図書館に入ると、
「すごーい!たくさんの本だね、テーベよりも多いんじゃないかな?」
「まあ、巨人族用に作られてるから少し取りずらいね。」
「そういう時は、こう!」
ザザザッ!
地面からしれっと枝を生えさせ、自分の足場を作り本を取る。
「便利だね、植物魔法は。」
「ノエルくんは光魔法使いだよね、サリア達ってすごいよね、アーちゃんがたくさん使えるとはいえみんな違う属性魔法使いが集まってる!」
「確かにそうだね、おかげで戦いに困ることはあまりないね。サリアリットも、植物魔法と無属性魔法、近接はクロウガルトがスペシャリストだからね。」
「やっぱり、この4人は完璧だね!まあ、欲を言えば回復魔法使える人とか、力が強い人とがいたらさらに強くなるけどね!」
「ここにさらにメンバーが入ったら、収拾つかないよ。」
サッ、サッ。
2人は本を読み漁っていく。
すると、ノエルが手にした本に気になる部分が。
「サリアリット、これを見てくれ。」
「なになに?」
「1年前のこの国のリストだ。……人の名前がずらりと並んでいるね、ここにアトラースのことが書いてあれば。」
「うーん、特には書いてなさそうだね。……けど、なんだろこの並び、同じ苗字の人が並んでる部分が多いような。」
「これって、全部子供達の名前だ!」
ノエルは、本に書いてある法則性を見つけ出す。
「見てくれ、ここに載ってる人は最近産まれた人たちだ、しかもここを見てくれ。」
ノエルはページの右下を指す。
そこには、
ダウンタウン統計人数。
と書かれていた。
「ダウンタウンって、確か家のない子供達がたどり着く場所っていう……けど、なんでエリュシオンにそんな人が。確か、エリュシオンは富国で貧困はないって聞いたことがーー。」
「やっぱりそうだったのか、くそっ!」
ノエルが怒りを露わにする。
その姿は、今まで見たことのないもの。
「ど、どうしたのノエルくん?」
「これが載ってる時点で、国は国民に対して嘘をついてる。だとしたら、ミラさんのことも嘘の可能性は高い、それに外面だけ気にする国にはろくな奴はいない。だから、僕の家はーー。」
「ノエルくん落ち着いて!」
ガシッ。
サリアがノエルを抑える。
周りから、視線を集めていたからだ。
ノエルが怒りを露わにした、その理由とは。
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