第205話 仮面の正体

「どういうこと、ミラさんはあの仮面をつけた男以外に遭遇しているの?」

「ああ、これまで何度も、それこそここ数年は遭遇している。なぜ近年増え始めたのかは、分からんのだかな。」

「みんな動物のような仮面なのか?そもそも、仮面ってなんなんだ?」

「私も全てを知っているわけではない。今手に入れた情報は、このくらいだ。」



ミラの話によると、


仮面をつけていたのは、巨人族と人族。その中でも、オールドタイプだけのようだ。



血のホワイトデイ以降、アテナイにはニューマンが充満しており、オールドタイプは迫害されていた。

その時に助けを求めて逃げ出した先が、エリュシオンであった。


同じ魔力を持たない者、通じ合うものはあったのだろう。

快く受け入れた巨人族は、オールドタイプの人族とより良い暮らしを築いて行った。



だが、いつからか町が壊滅させられる事件が発生していた。


国の兵士が駆け付けると、辺りには無惨に傷つけられた家々、飛び散る血痕、息をしていない人々。


数少ない生きている人の証言から出てきた言葉。






人の姿をした仮面をつけた化け物が、たった1人で町を壊滅させていったと。


それも、人族のオールドタイプと巨人族、どちらにも同じような仮面をつけた存在が生まれていた。



事件は、王国の近くでも発生した。



エリュシオンの精鋭部隊は、これを鎮圧するために総動員で出動。


そこで見たものは、両手で鎌を持ち、人々を切り裂き、まさしく猛獣と呼ぶに相応しい存在。


その顔には、ワニのような仮面があったという。




国で最強と謳われていたエリュシオン精鋭部隊は、約100人。



死人は出なかったものの、半数以上が怪我を負うほどの被害。


そしてなんとか捕らえた男は、




その場で生き絶えていた。



苦しむ姿もなく、気付いたら死んでいたのだ。




その後も、何度か事件は発生しておりその度に暴れた者の死体と隣には仮面が落ちていた。



「ここまでが、エリュシオンで報告されていた内容だ。」

「町1つを1人で壊滅、確かにあのまま力が増幅していったらあり得ない話じゃないな。」

「そしたら、なんでミラさんは蠢く会を追っているの?彼らもこの事件に関連してるってこと?」

「私も、両親と同じく戦士なのでな、事件が起きると出動していたんだ。そこで私が見かけたのが、黒いローブを着た存在、そして何か赤い液体の入ったものを渡していた。」

「それって、さっき俺たちが見た……。」


クロウとアーシェの頭には、恐怖で怯えながらも赤い液体を飲み込む男の姿が。


「多分、同じものだろう。それから私は、ローブの奴らを探し始めた。まだ情報は掴めていないが、情報を手に入れる先々で奴らは現れた。そして、仮面をつけた人たちも一緒にそこにいた。」

「ミラが言ってたのは、そういうことか。仮面をつけてるやつは倒さなくちゃいけない、町が壊されるから。既に、何件も被害は出てたんだな。」

「ああ、だが気になるのは、クロウ。なぜ仮面をつけたのに、普通に動けるのかということだ。私も、できれば死なせたくない、だから仮面を壊すことに専念した時もあった。だが、結果は変わらなかった。」

「クロウは嘘をついてないわ。クロウの仮面は、黒いカラスだった。さっきの男と同じく、負の感情で溢れかえっていたわ。でも、私とサリーで無理矢理仮面を剥がさせて止めた、そしてクロウは生きた。」


スッ。

ミラは顎に手をつけ考える。


「やはり、まだ分からないことが多いな。仮面のことも、蠢く会のことも情報が足らなさすぎる。もっと調べなくては。」

「それじゃあ、俺達と一緒に行動してくれないか?」


パチッ。

ミラは大きく目を見開き、クロウを見る。


「それは難しい話だ、私は死神と呼ばれてエリュシオンで手配者とされている。それに手を貸したとあっては、レイヴァーも私と同じ追放される存在になる、それは流石に私も辛いことだ。」

「あら、ミラさんは何か勘違いしてるわ。」

「どういうことだ?」

「俺たちは既に、追放されてるんだよ。俺はニューマンの敵、オールドタイプとして、アーシェは元魔王の娘として命を狙われてる、サリアも元は不名誉な異名で国から追われた、ノエルも何か訳がありそうだ。つまり、もう慣れちまってるんだよ。」


ミラの目を見開いた表情が変わらない。


今までかけられたことのない言葉に、動揺しているようだ。


「俺たちに力を貸してくれ、この国を俺は救いたい、蠢く会も突き止めたい、ミラが思うほど俺たちは弱くないぜ?」

「1人で長年努力してきたミラさんなら、数が多い方が効率がいいのもわかってるはずよね。私たちは、同じ目的のもとに今を歩いてる、私からもお願い。」

「……分かった、まずはこの国にいる間は力を貸そう。だが、迷惑になったら言ってくれ、1人になるのは慣れてる。」

「はっ、分かった。」


スタッ、スタッ。

トンッ。

クロウはミラの元まだ歩き、肩に優しく手を置く。


「お前が嫌になるくらい付き纏ってやるよ、俺たちは欲しいものはなんでも手に入れる、1人になる時間はいくらでも与えられる、けど、よろしくな、ミラ。」

「……ふふっ、生意気なリーダーだな、アレスは。」




ミラはクロウ達と一時的に、共に行動することとなった。


そして、もう1つ大きなことがミラから告げられる。

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