第199話 抱える物

次の日、朝食を摂り終えたレイヴァーは2班に分かれ行動を開始した。


「じゃあ、2人とも気をつけてね!もし今日中に戻ってこなかったらサリア達も2人を探しに行くからね!」

「ああ、ちゃんと帰ってくるよ。そっちも情報集めは頼むな。」

「お互い、やるべきことをやりましょう。さあ、行きましょう。」


スタッ、スタッ。

クロウとアーシェは外に出て、サリアとノエルはコリントスで情報集めに向かった。



クロウとアーシェは、ミラからもらった地図を頼りに歩いていた。


「ここから後1時間ってところか、何があるんだろうな。」

「ミラさんが過ごしてる町か、身を潜めてる場所とかじゃないかしらね。地理がわからないから、少し聞いとけば良かったわね。」

「けど、それでミラのことに突っ込まれたくないし、今回は仕方なかったんじゃねえか?」

「まあ、それもそうね。……そうだ、私あなたに言わなきゃいけないことがあったの。」

「ん?」


スッ。

クロウは振り返り、アーシェと向かい合う。


「わたし、あなたにこの命まであげたつもりはないのだけど?」

「命をあげた?……あ、ミラに言ったことか。」

「そうよ、確かにあの場ではあの発言は正しかったと思うわ。でも、本当に命を差し出すことになるようだったら、どう責任をとってくれるの?」

「え、あ、えーと、どうするか。何か良い方法あるか?って、俺死んでたら何もしてやれないか。」


コツンッ。

アーシェのチョップがクロウの頭に直撃。


「うぐっ、割としっかり痛い。」

「当たり前でしょ、あなたは私の命を勝手に賭けたんだから、責任はしっかり取ってもらわないと。」

「んー、じゃあ生き残るってのはもちろん約束するし、たまには2人で戦いを忘れて町でも巡るか?俺たち、いつも戦闘では一緒に動くけど、それ以外じゃ2人であまり動いたことないよな。」

「……。」


アーシェは黙り込む。



そして、だんだん体の芯から熱くなってきていた。



(な、なんで、なんで体が熱くなってるの?この感覚は、美味しいものを食べてる時の幸福とはまた違うもの、でも嫌じゃない。2人で町を巡る、何をすればいいのかしら?)


アーシェは顎に手を当て、考え込んでしまう。



「あれ?おーい、アーシェ。」

「っ、あ、ごめんなさい、ぼーっとしてたわ。」

「大丈夫か?熱でもあるんじゃないか?」


スッ。

クロウはアーシェのおでこに触れる。


「っ!?な、なにをするの!?」

「いや、熱があるか確かめとかないとな。この先戦いになったら、しんどい思いをさせることになっちまう。……少し熱いか?それとも魔族はこんなもんなのか?」

「そ、そうよ!魔族は体温が高めなの!だからその手を離しなさい!」


バッ。

アーシェはクロウの手をどかし、息を落ち着かせる。


「そんなに何焦ってるんだ?いつもと様子がおかしいぞ?」

「大丈夫、少し考え事してて頭が熱くなっただけよ、クロウのサポートはできるから心配しないで!」

「そうか?無理はするなよ、もし辛かったら背負ってやるからな。」

「だから、気にしないでって言ってるでしょ!ほら、早く行くわよ!」


スタッ、スタッ、スタッ。

アーシェは足早に目的地に向かう。



(はぁ、はぁ、心臓に悪いわ、なんでこんな気持ちにならなきゃいけないの?この気持ちはなに?サリーが言ってた恋なの?すごく熱くなるし、焦ってくるし良いことないわ。)


スタッ。

アーシェを追いかけてきたクロウが、アーシェの肩に手を乗せる。


「大丈夫、無理を通してでもアーシェは守る、絶対離れない、約束だ。俺は、アーシェの命も俺の命と平等に大切なんだ、失わせたりしない。」

「っ!?」


アーシェの顔がさらに赤く火照る。




アーシェの頭はいろんな気持ちでパンク寸前。



その時、


「っ、この先みたいだぞ、ミラの指示した場所は。」


クロウはミラが指示して来た場所を、その良い視力で見つけたようだ。



「え、あ、そうね、行きましょうか。」



アーシェは少し安堵したような表情で、クロウの後を追う。


(私の背負うものは、あなたの想像を絶するもののはずよ。それでも、あなたは着いてきてくれるの?……いや、あなたなら本当に着いてきてくれそうね、バカがつくほど優しいから。だから、答えは聞かないでおきましょ。)


そして数十分歩くと、ボロボロの集落が見えてきた。



「なんだ、ここは?町っていうより、廃村だな。」

「元々はコリントスのような町だったんじゃないかしら?建物があったような場所もあるし、人工的に作られた道もあるわ。」

「確かにそうだな、でも壊されてからかなり日が経ってるな。誰か住んでる様子もねえし……んっ、足音だ。」


スタッ、スタッ。

奥の方から、男の巨人族が歩いてくる。



「ここに住んでるとは思いづらいけど、話を聞いてみましょうか。」

「そうだな、おーい!あんた!」

「っ!?な、なんでここに人が!?」


男は急に慌て始める。



「驚かせてごめんなさい、少し話を聞きたいーー。」

「く、くるな!これは俺のものだぞ!」

「ん?なんの話だ?俺たちは、少し話を聞きたいだけーー。」

「嘘つくな!そう言って、何人にも狙われたんだ!くそっ、もうここで


ポトッ。

栓のようなものを抜く音が響き、手には赤い液体の入った筒が。


「何あれ?何かの治療薬かしらーー。」

「いや、何かおかしい、あの赤い液体から嫌な感じがする!」

「くそっ!俺はまだ死にたくない!」


男は、赤い液体が入った筒を、口に近づける。


「待て!それは危険だ!!」


ゴクンッ。

クロウの声は届かず、男は赤い液体を飲み込む。




すると、


ズーンッ!

クロウとアーシェはプレッシャーを感じとる。


「何、この嫌な感じ。」

「あいつからだ、このプレッシャー。何を飲みやがったーー。」


ピカーンッ!

男は顔から光を発する。



そして、



「あ、あれって。」

「仮面?」


2人の目に映ったものとは、いったい。

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