第198話 役割分担
ミラと出会ったクロウとアーシェは、サリアとノエルに伝えるべく怪我人を連れて町に戻っていた。
幸いにも、死人は0。
アーマーゴーレムのことを遭遇した巨人族に聞いたが、これといって出会したことはないという。
モンスターが暴れていると情報が入り、辺りの町から戦士が集められ討伐に向かったところ返り討ちにされたと。
レイヴァーはギルドでサイラスに報告をしていた。
「巨人族がアーマーゴーレムっていう、新生モンスターに襲われていた。そして、それはアテナイでは既に発見されているモンスターであると。そこには、蠢く会という団体が関わってる可能性が高い、これであっているか?」
「ああ、俺たちもあいつらと何度かやり合ってるけど、知ってる情報はそんなもんだ。」
「そして、新生モンスターの中には誘拐された人や罪人が媒体として使われてる可能性が高いわ。もし、最近姿を消した人がいたら最悪を考える必要もあるわ。」
「分かった、情報共有感謝する。それと、世話になった礼だ、近くの食事処と宿をとっておいた。好きに使ってくれ。」
この報告の際、ミラのことは一言も話してはいなかった。
そう、まずはレイヴァーの中で判断したいと考えたからだ。
ギルド長のサイラスに報告を終え、4人は食事に向かう。
「おっ、俺たちの英雄のご到着だ!ほらほら、早く入ってくれ!」
そこには、巨人族の男女が宴会を準備していた。
「すごい歓迎だね、サリア達がここに来たばかりとは大違い。」
「そうだね、これが罠じゃなければいいんだが。」
「ノエルくん、さっきから考えすぎだよ。少しは、目の前のことをそのまま受け入れてもいいんじゃない?悪いことしてるんじゃないんだから。」
「……そうだね。」
スタッ。
4人が席につくと、宴会が始まる。
少し戸惑うレイヴァーだったが、巨人族は命の恩人には誰であってもとことん尽くす、そういった習慣があるらしい。
だからこそ、全滅必須だったアーマーゴーレムから助け出してくれたレイヴァーは歓迎されたのだ。
「すごいな、体も大きいだけあって量も多いし豪快な料理ばかりだ。流石にアーシェも、こんなにあったら戸惑うんじゃーー。」
「ん?はにはいっは?(何か言った?)」
両手に骨付き肉を持ち、モグモグ口を動かしながらアーシェは答える。
「あ、いや、何事にも例外はいるよな。聞き逃してくれ。」
「んっ。あら、そう。それより早く食べないと、無くなっちゃうわよ。」
「アーシェが少し手を止めれば解決することだろ!」
「それは難しい話ね、目の前に美味しい物があったら手が勝手に動いてしまうのが生き物のあるべき姿でしょ。」
「限度があるだろ限度が!」
いつものようなやり取りをしながら、1時間ほど宴会は開かれた。
その後は、疲れを癒すということで全員宿に入った。
部屋に荷物を置き、これからの行動をレイヴァーは話し合っていた。
「まず、明日俺とアーシェでミラと話し合ってくる。そして、次は4人で話す場を作ってもらうように頼んでくるな。」
「クロくん、アーちゃん、そっちはよろしくね。サリアとノエルくんは、もう少しエリュシオンの現状を調べてみるよ。もしかしたら、アトラース家のことがわかるかもしれないし。」
「そうだね、僕は図書館とかを借りれないか明日ギルドに掛け合ってみるよ。」
「お願いね、ここからは役割分担をしていきましょう。ミラのことを調べる私達と、エリュシオンからの信頼を得るために動くサリーとノエルランス。どちらも失敗は許されないわ、気を引き締めましょう。」
そして、話は蠢く会にのことに変わる。
「テーベでも、メイリンが死ぬ前にハーデンの名前を口にしてた。魔族のギルを連れ去ったり、アテナイではゴーレムをたくさん見てる、てことはこの世界中にあいつらは手を伸ばしてるって考えられるよな。」
「その可能性はとても高いね。そして、アーマーゴーレムは強化されていたんだよね、僕たちが時間を浪費すれば相手も強力になってしまう、時間との勝負になるね。」
「かといって、今焦っても何も生まれないわ。まずは目の前のことを1つずつ片付けていきましょう、同時並行でいくつものことを遂行すると、どこかに必ずボロが生まれてしまうわ。」
「じゃあ、これからのことは決まったね!サリア疲れたし、早く寝たい!」
「そうね、今日は早く寝ましょうか。明日からも、大変だものね。」
キィーッ。
4人は2つの部屋に別れる。
同室でベッドに横になるクロウとノエル。
蝋燭の火が、部屋を明るく照らす。
静かな部屋で、眠りにつく前に、クロウは一言だけ話した。
「ノエル、いつでもいいからよ、俺にお前のことをもっと教えてくれないか?」
「どういう意味だい?僕の生まれとかは前に話したはずだけどーー。」
「今のお前は、どこか苦しそうで見てて辛いんだ。誰にでも、秘密の1つや2つはある。けど、秘密っていう鎖がお前を縛り付けて、それが誰かに話すことで楽になれるなら、俺は全て受け入れる。」
「……。」
「知ってるだろ、俺はいつも鎖を引き裂いて戦ってるんだ、だから、俺に千切れない鎖はない、必ず解放する。ここ、重要、記憶したか?」
「……ああ、頭に入れておくよ。ありがとう。」
クロウにノエルの今の顔は見えない。
その時、ノエルの目からは、一粒の涙が溢れていた。
何よりも重たい、さらに全ての感情を乗せた大きい一粒が。
そして、次の日を迎えた。
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