第195話 2つの意見

スタッ、スタッ、スタッ。

ギルドから出てきたサリアとノエルが合流する。


「クロくん、もう大丈夫?」

「ああ、落ち着いたよ。心配かけて悪かった、そっちはどうだった?」

「それが……聞いたものをそのまま話すね。」



サリアとノエルが聞いた話は、次のような内容であった。



確かに、これまでに殺されてきた巨人族は何かしらの権力や力を持つ者に限られていた。



ただ、共通点もある。




それが、一緒に落ちてる仮面だ。


形は人それぞれだが、過半数の事件現場で落ちているのが確認されていた。


例えば、ネズミやキツネ、鷲など動物の仮面のパターンが多い。


ただ、それが何なのか、なぜ落ちているのかは現場にたどり着いた人に分かる術がなかった。



なぜなら、仮面を回収しようとすると、光を発して空中に粉々に舞ってしまうのだ。


今の巨人族は、死神のミラが、ひいてはアトラース家が実験体として力のあるものを次々に試していると考えている。



ただし、これも状況証拠から推察したものに変わりない。



つまり、ミラがやったという証拠は何一つないのだ。




「だったら、なんとかしてミラに会うしかないな。テーベの時と同じ、あいつの口から真実を聞こう。俺たちはこれまでに何度も会ってる、話は聞いてくれるだろ。」

「そうね、私たちも命を救われたんだし、これがジュールさんが助けて欲しいって言ってる内容なら、恩返しをするにはちょうどいいかもね。」

「よしっ!それじゃあ、サリア達はまず情報集めをするところーー。」

「本当にそうだろうか。」


ノエルは、とても低く静かな声で話す。


その声に、クロウは敏感に反応してしまう。



「どういう意味だ?何か引っかかる部分があったか?」

「確かに、状況証拠しか残っていないけど、ミラさんなら今回の犯行は実行できると思うんだ。」

「どういうこと?私たちに、ギルド長から聞いた話を鵜呑みにしろっていうの?現場に、ミラの証拠はないのよ?」

「だって、怪しいのは確定だとは思わないかい?」


ノエルと他3人の間に不穏な空気が流れる。



「考えてみてくれよ、確かにミラさんは僕たちを助けてくれた。それは、クロウガルト、君がオールドタイプでフェルナンドさんの息子さんと知ってたからじゃないのかい?」

「俺が父さんの息子だと知ってた?そんなわけあるか、初めて会った時はフルネームを名乗っていない……いや、あいつは俺のことを知ってたな。」

「そうだろ?そして、彼女が出てくるタイミングだ。1回目は、クロウガルトがリィンさんと一緒にいるタイミング、つまり君の力を測るためのものだ。」

「じゃあ、ソーマとラーゼと戦ってた時はなんだと言うの?」

「それも簡単、クロウガルトが自分が殺す対象になるか計っていたんだろう。けど、クロウは何かしらの仮面に取り込まれることなく生き残った、だから今回は見過ごした。理由は、まだ分からないけどね。」


ノエルの言葉に、皆は納得感を覚える。



しかし、クロウは反発した。


「だったら、あいつが俺たちを仲間と言ってたのを疑うっていうのか?ソーマもラーゼもかなりの強敵だった、自分の身を犠牲にしてでも俺のことを測る意味があるか?」

「そこまでは分からない、けど彼女は僕たちの誰よりも強いだろう、だから勝てる見込みがあったのと、クロウガルトには死んで欲しくない理由があるのかもしれない。」

「それが、目に見えるものだけが真実じゃない、光がある場所には必ず影がある、につながるってか?」

「可能性は高い、話すなんて優しいものじゃない、彼女を捕まえる必要があると僕は思うんだ。このまま野放しにしてたら、さらに被害者がーー。」

「待てよ!ミラを捕まえる?ふざけるな、まずは話をするところから始めればいいだろ。全て疑ってかかったら、真実だって見落としかねないだろ!」


クロウとノエルの舌戦が始まっていた。


「確かに、彼女のことは分からないことばかりだ、だからこそ静かにさせて話をする必要がある!僕らから逃げ出そうとするかもしれないんだぞ!それで被害者が増えるかもしれない!」

「ノエルが話してることも、サイラスの話も全て状況証拠だ!誰もミラが殺してるところを見たわけじゃない!」

「次の事件が起きてからじゃ遅いんだ、僕たちは何が何でも彼女を止めなくちゃならない!」

「分かってるよ、確かにミラと話をしなくちゃいけないのは変わらない!けど、あいつが犯人だと決めつけて動く必要がどこにある!」

「そんなの、これまでの行動が彼女を指してるからに決まってるだろ!クロウガルトは、彼女を信頼しようとしすぎだ!」

「ストーップ!!」


サリアが2人の間に割って入り、会話を途切らせる。


「ここで言い合ってても変わらないよ!ミラさんがエリュシオンにいるかもわからないんだから、まずは情報集めるところから!」

「サリーに賛成よ。時間が惜しいわ、私はクロウと、サリーはノエルランスと一緒に動くわよ。見つけたら、一緒にコリントスに連れてくる、私たちが話をするために。」

「なんでそんなに悠長なんだ、彼女はーー。」

「ノエルくん!少し落ち着いてよ!らしくないよ、なんでいつも論理的に解決してくれる人なのに、今回は感情に呑まれてるの?」

「……分かった、探しに行こう。」


スタッ、スタッ。

ノエルは町の外に出ようと歩き始める。


「サリー、大変かもしれないけどノエルランスをお願いね。」

「任せて!多分、本人も気付いてるはずだよ。後は、何か別のものがノエルくんを縛り付けてる。」

「まずはミラだ。アーシェ、サリア、行こう。」


レイヴァーはミラの情報を集め始める。



ミラは、どこにいるのか。

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