第196話 襲撃再び
スタッ、スタッ。
クロウとアーシェは、町から出て西の方へ向かう。
アーシェが国から追われてる以上、町に潜んでることは考えづらいと判断した。
「ねえ、クロウ。ノエルランスのことだけど。」
「分かってる、あいつは熱くなってるだけでおかしくなったわけじゃない。巨人族とあいつの間で何かあったんじゃねえかな。」
「そこまで分かってるのに、あんなに言い合いしてたの?理解できないわ。」
「あいつは、何かを背負い込んでる。それは、とても辛いことだ。だからこそ、俺たちに本音で話して欲しい、そのためなら口喧嘩くらいしてもいいだろ?」
「止めるこっちの事も考えなさいよ。ノエルランスの時はともかく、サイラスの時は、あなた怒りに呑まれそうだったわよね。」
「それは……そうだな。もう少し、賢い選択をしないとだな。」
2人は辺りの音や魔力の流れを感じ取る。
「うーん、ここら辺には誰もいなそうだな。てか、エリュシオンはモンスターっていないのか?さっきから生息してる気配すらないぞ。」
「確かに、自分の魔力以外は感じないわ。エリュシオンは魔力を使えない種族だから、私には少し大変な存在ね。」
「そりゃ、俺と一緒に過ごしてるんだから少しは慣れてるだろ?」
「言われてみればそうね、あなたもたまには役に立つわね。」
「たまにって言うな、たまにって!」
ピキーンッ!
2人の体に電撃のようなものが走る。
「なあ、今のって。」
「そうね、大きな揺れと魔力も感じたわ、モンスターの可能性が高い。」
「だよな、いくぞ!」
タタタタタッ。
2人は違和感のある方向へ走り出す。
ここは、クロウたちの位置から少し離れた所。
「くそっ、こんなモンスター見たことねえぞ!」
「がぅぅ!!」
ドゴーンッ!ドゴーンッ!
2体の大柄なものが辺りの巨人族を蹴散らす。
ここにまできてしまった、アーマーゴーレムが。
「くそっ、俺たちよりもでかいだけじゃねえ、あの防具は俺たちの攻撃を全て防ぎやがる!」
「逃げろ!こいつを倒せる力は俺たちにはない!」
「けどっ、町にまでこいつが襲ってきたら何人が被害にあう!」
「だからって、こんなところで死ぬのがわかってる戦いをする必要はないだろ!」
ドゴーンッ!
ズザーッ!
アーマーゴーレムは着実に巨人族を倒していく。
「がぁぁ!!」
「どこから来たんだこいつはーー。」
ドシンッ!
さらに1人の巨人族が吹き飛ばされる。
「や、やめてくれ!降参する、命だけは!」
「がぁぁ!!」
アーマーゴーレムの雄叫びが、辺りに響き渡る。
「い、いやだ、死にたくない、助けーー。」
「がぁぁ!!」
ドゴーンッ!
最後の1人も、アーマーゴーレムの拳で吹き飛ばされる。
巨人族が、アーマーゴーレムに手も足も出ずやられる。
「がぁ、がぁ。」
「がぁ??」
シュンッ!
高速で接近するものが1つ。
「なんで、ここにお前たちがいるんだよ!
スッ!
ガギーンッ!
空高く飛び上がり、大振りな大剣の一撃がアーマーゴーレムをのけぞらせる。
そう、クロウの一撃が確実なダメージを与えた。
「アーマーゴーレム、エリュシオンにまでいるなんて、蠢く会はどこまで広まっているの?」
「全くだ、それにこいつらは俺たちが以前戦ったやつよりも強い個体のようだぜ、迫力が違う。」
「お互い1体ずつ、スピード最優先でやるわよ。怪我してる巨人族も多くいる、いけるわよね?」
「それを俺に聞くか?やるしかないなら、俺たちが無理を通してでもやり抜くしかねえ!信じてるぞ、アーシェ!」
「そっちもヘマするんじゃないわよ、クロウ!」
ザッ!
2人がアーマーゴーレムを1体ずつ対処し始めた。
まずは、クロウサイド。
「がぁぁ!!」
「お前も、あいつらに作り出されちまったのか、くそっ、早く元に戻せる方法を探し出してやるからな。
グルンッ!
ガギーンッ!
横回転した2刀の一撃が、少し後ずらさせる。
「ぐっ、がぁ!!」
ブンッ!ブンッ!
クロウを倒さんと、拳を激しく振り回す。
ズザーッ!
拳が掠れた地面は、少し窪んでいる。
「威力も増してるか、これまでになかったって事は、さらに何か追加して作り出したか、あいつら、ふざけやがって!」
ドクンッ。
クロウは自分の中で膨張する怒りを感じ取った。
(だめだ、怒りに呑まれるな。俺は、こいつらを殺したいんじゃない、解放するんだ。あの時聞いた声を、ゴーレム達全員が同じ気持ちでいるなら、解放してやるのが俺の務めだ。俺は、力を持つ1人の戦士だ、感情を操れ、取り込まれるな!)
「すーっ、はぁー。たくよ、この力とは長い付き合いだけど、扱いづらさはピカイチだな。けど、これが俺の持つ最大の強さ、活かすのが俺のやるべきこと!」
「がぁぁ!!」
「今解放してやるからな、待ってろ!」
ズザッ!
ガギーンッ!
クロウとアーマーゴーレムの戦いは、激しくなりはじめていた。
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