第194話 アトラース家とは
「うぐっ、それを知ってどうする?俺たちに協力するか?あいつを殺すことに!」
「それを判断するのは話を聞いた後だ、俺たちはミラを仲間と信じてる。それが覆る事実が出てくるなら、一考の余地はあるぜ。」
「そうか、なら俺の知ってる情報を渡そう。改めて、俺はコリントスのギルド長、サイラス・アガート。アトラース家とは、古くから付き合いのある家柄だ。」
アトラース家……エリュシオンで最強といわれる武力を持ち、国の統治者を決める4年に1回の闘技会では必ず決勝に立つと言っても過言ではない。
それは、血のホワイトデイが起きるまで続いていた。
だが、血のホワイトデイのタイミングで、アトラース家はめっきり闘技会に顔を出さなくなった。
新時代の作り手とすら言われていたのが、ミラ・アトラース。
当時19歳であった彼女は、力はもちろん責任感も強く周りから応援の声も大きかった。
そんな中での突然の闘技会に不参加。
それも一度ではない。
血のホワイトデイから3回連続で出場をしていないのだ。
そこで疑問に思った巨人族達は、アトラース家が住む地域、《《エガレオ》を訪れた。
町はとても賑やかで、活気の溢れる手本のような町であった。
だが、アトラース家はもうそこにはなかった。
誰にも知らせずに、いつのまにか町から姿を消しその後の行方を誰も知らなかった。
それとタイミング同じくして、国の中で巨人族が殺される事件が度々発生していた。
特徴は、過去に闘技会で名を馳せた者、これからの期待の戦士と言われていた者、すでに権力を持っている者。
すでに周りから注目されているものだけが狙われていた。
そこで噂が噂を呼び、1つのものが出来上がる。
アトラースがエリュシオンを壊す死神になっている。
殺された者達は、白目を剥き血を吐いて倒れていた。
エリュシオンになんらかの理由で嫌気がさしたアトラース家が、引き起こしてる事件として国中に手配書が出された。
ミラ、及びミラの両親の3人にだ。
「これが、今この国で起こってることだ。」
「……。」
ギリッ。
クロウは無意識に拳に力をこめる。
それもそのはず、ただの憶測でしかなく証拠がない。
だが、怖いものを見たくないが故に作り出された死神として、ミラが生かされてることに怒りが込み上げていた。
その姿を、アーシェは見逃さなかった。
「クロウ、少し席を外しましょう。」
「いや、俺は大丈夫ーー。」
「大丈夫ではないわ、私が許可しない。ほら、今あなたに氷の魔力を送ってるのに冷たい反応を一切しない、それだけ熱くなってるのよ。」
「……分かった、悪いな。」
「気にしないで、怒りを覚えてるのは私も同じだから。」
ズザッ。
クロウとアーシェがその場をさろうとする。
「あ、おい!まだ話はーー。」
「ここからの話は!」
「僕とサリアリットで詳しく聞かせてもらうよ。もちろん、僕らが知ってる情報を渡すということで。」
「う、うむ。分かった。」
スタッ、スタッ、スタッ。
2人はサイラスと話の続きをする。
キィーッ。
クロウとアーシェはギルドの外に出る。
「悪かった、アーシェ。またお前に助けられたな、どうも最近怒りに呑まれることが多いみたいだ、気をつけないとな。」
「そこはあなた次第のところもあるから、どうにか管理してほしいわね。でも、怒りを覚えるのは当たり前よ、私ですら無意識に炎を出そうとしてたもの。」
「じゃあ、どうやって抑え込んだんだ?俺のことを気にかけてくれてたし。」
「それは、私以上に怒りを露わにしてる人を見たら落ち着くしかなくなるわよ。もう、クロウを、あんな姿には戻したくない。」
スサーッ。
優しい風が2人の髪を揺らす。
「ああ、俺もあの姿になりたくない、これからもっと感情を抑える訓練をしないとな、アーシェたちに迷惑をかけないためにも。」
「それもあるけど、少しは自分のために頑張ってもいいんじゃない?」
「自分のため?」
「そう、クロウはこれまで誰かのために強くなって力を使って、傷ついて、感謝されて、頼りにされて、周りに貢献しようとしすぎよ。少しは、自分のために時間を使いなさい、生きてる限り、自分が自分と1番長く付き合うことになるんだから。」
クロウはアーシェを見つめる。
「……それもそうだな、悪いーー。」
「それも間違えてるわ、私は謝って欲しくてあなたにこんなことを言ってるんじゃない。私がやりたいから、身勝手にあなたを手伝ってるだけよ。」
「ははっ、面白いな、アーシェは。でも、ありがとう。良い相棒に出会えてることを改めて実感したよ。」
「あらっ、今更したの?遅すぎるわよ、何ヶ月同じ暮らしをしてると思ってるの、私のことをもう少し理解してほしいわね。」
「ああ、そのために俺は時間を使う。自分の大切な者に裂く時間は、いくらあっても無駄じゃない。」
ニコッ。
クロウはアーシェに微笑みかける。
「何恥ずかしいこと言ってるの!ほら、わかったら戻るわよ!」
ザッ。
アーシェはギルドに体を向ける。
その頬は、かなり赤くなっていた。
すると、話を終えたサリアとノエルが合流したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます