第169話 彼女は

スタタタタッ。

レイヴァーは謁見の間までの道をひたすらに走る。


そして、至る所からエルフが襲ってくる。



意思のない、まるでゾンビのような。


「くそっ、数が増えてきてる!謁見の間まで後どんくらいだ?」

「ざっと30mってところかしらね、まあ、その通り道に壁がたくさんいるけど。」

「クロウガルト!このままじゃ、僕たちも無事じゃ済まない。この人たちに、何か対処する指示を!」

「……くそっ、威力を最低限にして気絶させていくぞ、魔法は初級のもの、武器は刃の方を使うなよ!」

「クロくんっぽい命令だね、了解!」


ガギーンッ!

ゴスッ。

クロウとサリアはエルフの攻撃を受け流し、腹や首に一撃入れその場に倒す。


ビリッ!

アーシェは雷の魔法を最小限に放ち、全身を麻痺させる。


ズンッ!

ノエルも敵を翻弄する動きをし、隙を見て顎に一撃入れる。


ドガッ!ドンッ!

タタタタタッ。

なんとか迫り来るエルフを対処しながら先に進む。


「少しは進みやすくはなったけど、数がもっと増えてる。特に、後方から追ってきてるエルフをどうにかしないと。」

「動きを止めればいいのよね、なら私に任せて!クロウ、サリー、少しの間私をカバーして!ノエルは前方のエルフを任せるわ!」

「何か作戦があるんだな、任せろ!」


ズザッ!

ガギーンッ!

もはや手ではなく、口で引き裂きに飛び出してくる。


「おいおい、こいつら犬みたいになってるぞ!」

「犬ならまだ可愛いよ、サリアには獰猛な獅子にすら見えるけどね。」

「俺たちの背後に50人はいるな、外の奴らはなんともなかった、てことはあえてコイツらは動かせるようにさせられてたってことか。」

「そうだと思うよ、クロくんが犯人をぶん殴るって言ってたけど、サリアも気が済むまで殴るからよろしくね!」

「ああ、後悔させてやろうぜ!」


ガギーンッ!

飛び込んでくるエルフを、サリアはダガーで弾き飛ばす。



そして、


「準備OK!2人共下がって!」

「よしっ!」


プクプクプクッ。

床から薄らと水が沸いてくる。


「呑み込め!大波ビッグウェーブ!」


チャポンッ。

後方のエルフの足元には、10cmほどの水が生まれる。


続けて、


「そして、 止まれ!感電ボルト!」


ビリリッ!

パチパチッ!

水を上を電気が走り、後方のエルフを痺れさせる。


「さすがアーシェ!って、こっちまで水が流れ込むんじゃねえか!?」

「そこは、これよ! 上がれ!岩壁ウォール!」

「こっちは保険で! 壊せ!根の侵攻ルーツバスター!」


ゴゴゴゴゴッ。

地面から土の壁が生まれ、その後ろに木の根が生え崩れないように交差して支えるように作り出される。


これで、今の場所より下がる事は出来なくなった。



「なるほどな、そんな方法があるなんてよ。」

「これくらい頭を使わないと、うちのリーダーに任せていては先が思いやられるからね。」

「遠回しに俺がバカだって言ってるよな?」

「こんな時に漫才してる場合じゃないよ!先に進むよ、2人とも!」


サリアの合図とともに、4人は再び走り始める。


スッ、スッ。

可能な限りエルフは避けて、危険な存在だけ気絶させていく。


「なあ、このエルフは操られてる可能性もあるのか?」

「ゼロじゃないわ。こんなに複数の個体を、蘇生魔法で動かしてるのは正直考え辛いの。死体を人形のように操る魔法の方が、ある可能性は高いかもね。」

「ならまだ希望が持てるな。こいつらが本当に無理やり生き返させられて、止めるにはなんてことになったら、可哀想だ。」

「……クロウ、もしもの時はーー。」

「分かってるよ、俺だけ逃げるつもりはない。こいつらにやらなきゃいけない時は、俺も必ず遂行する。」


ギリッ。

その決意の固さと、犯人に対する怒りに目が鋭くなっていた。


「あなただから心配ないかもしれないけど、一応言っておくわね。気合い過ぎないで、この事件はあなただけのものじゃないわ、これは


スーッ。

心なしか、少しクロウの表情が柔らかくなった。


「ああ、アーシェには俺の気持ちも見通されてる気分だ。ありがとう、助かった。」

「どれくらい一緒に長くいると思ってるの、リーダーのことは大概分かるわ。」

「約束させられたもんな、

「い、今はそんなこと思い出さなくていいの!ほら、部屋が見えてきたわよ!」


少し赤くなりながら、アーシェは指差す。



その赤さは、走った疲れからくるものでないのは間違いなかった。




入り口まで数メートル、壊されたのか、歪んだ状態で置かれていた。


「ノエル、俺とお前で扉をぶち開けるぞ!」

「了解、いくぞ!」


バゴーンッ!

2人が蹴り飛ばし、中に入る。



すると、そこには暗い空間と、静寂が。


さらにあることに気づく。


「エルフが追ってこないよ?」

「ここの中には入れないのか、入らせないのかってところね。」


ピカーンッ!

突如、部屋の明かりがつき4人は目を細める。


「誰だ、そこにいるのは!」



コツッ、コツッ。

奥から一つの影が。



「お待ちしてました、レイヴァーの皆様。」

「やっぱりあんたかよ、メイリン!」

「いろいろ聞かせてもらうわよ、今回の事件について。」


出てきたのは王女の側近、メイリン。



彼女の企みとは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る