第170話 2人の関係

「驚かれないとは、私はすでに疑われていたということですわね。いつからでしょうか?」

「僕が話させてもらうよ、最初は出会った時さ。」

「あら、そんなに初めから。」


スタッ。

メイリンは王女が座っていた椅子に座り、4人の方を向く。


「あなたがお話ししてた、ソーマのことについてです。僕たちは、アテナイで戦ったエルフのことをお話ししましたが、あなたは行方を知らないと言っていました。」

「それが何か?」

「サラミスの人も知らなかった、ましてや、テーベの中心であるセレスにだけ、しかもあなたの耳にだけ行方をくらましたという情報が入るのはおかしい、そこで僕は疑い始めました。」

「へえ、あなた頭がキレるわね。」


さらにノエルは話を続ける。


「もう一つは、サイレスホースを倒した時の報告の際です。あの時、僕たちをこの国から遠ざけたかったのは、あからさまに気付きました。」

「まあ、そうでしょうね。あなた方は色んな意味で危険だと思っていましたから。」

「そうですか、僕も気づいたんですよ、報告の際にあなただけ動揺してなかったことに。」

「なんですって?」


メイリンの顔が驚きに溢れる。


「全く表情を変えずに聞いていたんですよ、お話ができないアンジュ王女も、周りの兵士も一瞬動揺していたのに、あなたは知っていたかのように淡々と聞いていた。」

「そうだったかしら、私は驚きすぎて顔に出なかっただけだと思いますが?」

「そうでしょうか?僕の目にはあなたの顔がニヤついているように見えてましたよ。」

「そんなことするわけないじゃないですか、あなたのお仲間の、エリカリットさんの捜索もしていたので頭がいっぱいだったんです。」


ズザッ!

話に割り込む形でクロウが話し出す。


「なあ、あんた。今なんて言った。」

「はい?ですから、エリカリットさんの捜索をーー。」

「エリカのこと、なんで知ってるんだ?」

「何をおっしゃいますか、そこにいる方のお名前ではありませんかーー。」

「サリアの名前は、サリアリット・アルテミスだよ、エリカリットはサリアが探してる存在、あなた達には一度も口にしてない名前だよ。」

「……ははっ、つい余計なことを言ってしまいましたわね。」


バゴーンッ!

突然周りから木の根が生え、城の扉があったところを塞ぎ、部屋から出られないようになる。


「名前が似ていて間違えてしまうのですよ、サリアリットとエリカリット。まあ、もうそんなこと考える必要はありませんわ。」

「そんなことだと。てめえ、もう一度同じこと言ってみろ、その首と体がつながってると思うなよ。」


ゴッ!

クロウから殺気が立つ。


スッ。

その姿を見たアーシェが、そっと背中に手を添える。


「クロウ、少しだけ落ち着きなさい、あの時と同じことになりかけてる。」

「う、わ、悪い。また呑み込まれるところだった。」

「安心しなさい、あっち側にあなたをもう連れてかせないわ、それに。」

「それに?……っ!?」


スッ。

アーシェの顔をクロウは見た瞬間背筋に嫌な汗が流れた。


「キレてるのは私も同じよ、忘れないで。」

「……ああ、少し楽になったよ。」


ノエルは話を戻す。


「ところで、アンジュ王女様はどちらにいるんですか?」

「さあ、この事態です、どこかに逃げられたのかそれとも……。」

「側近のあなたが王女から離れるなんて、側近失格ですね。その命と同等の大切な存在なはずなのに。」

「あの王女が大切?はっ、笑わせないで!」


ニヤッ。

メイリンは不気味な笑みを浮かべながら話し出す。


「あいつは、言葉を話せないお飾りの王女よ!この国を統治しているのは私、あいつは人形!テーベが安泰だったのを感謝して欲しいくらいよ!」

「言葉が過ぎますね、メイリン。もう一つ聞きます、魔力の貯蔵庫マジックシェルターを作り出したのはあなたですか?」

「そうよ、あれがあれば他国から攻め入られても跳ね返すことができる!使い方は無限大、最高の魔法よ!」

「禁忌を犯すことが、この国で認められてるとは思いませんが。それに、魔力の貯蔵庫マジックシェルターを作るためにあなたはーー。」

「もう分かっているのでしょう!あの中には、邪魔になった存在を素材にしてできてる。もちろん、私のことに気づいた人とかね。」


ギリッ。

ノエルも怒りを露わにする。


「ふざけているのか!人の命をなんだと思ってる!あなたに誰かの命を自由に使う権利なんてない、ましてや、自分のために利用しようだなんて!」

「権利がない?そんなの必要ないわ、私が欲しかったからその贄になってもらったのよ、光栄に思って欲しいわね。」

「この国の神にでもなったつもりですか!あなたは!」

「神ですか、いいですわねその響き、崇めてもらおうかしらね私を。」

「あなたは崇められるべきではない、罪を償うことがあなたのするべきことだ!」


ズーンッ!

突如その空間を大きなプレッシャーが覆う。


「この感覚、間違いない。」

「いやがるのか、そこに!」

「全く、もう少し待てなかったのかしら、ソーマ。」


スーッ。

空を浮かびながら、ソーマがメイリンのそばに立つ。


「よお、久しぶりだなレイヴァー!エリカもそこにいるんだろ、なあ!」

「メイリンと組んでたのか、ゲスなエルフが!」

「そうよ、私の手となり足となり動いてくれてたーー。」

「舐めてんじゃねえぞ。」


グサッ。

メイリンの横腹を、ソーマの左手が突き刺す。


「がはっ、なにを。」

「力をお前はおれに渡した、もう用はない。」

「くそっ、が。」


パタンッ。

メイリンはその場に倒れる。


「仲間割れ、というより元から利用されてたって感じね。」

「さあ楽しもうぜ、おれとお前達のパーティを!」

「招待状のないパーティか、いいぜ、踊らせてやるよ!」


チャキンッ!

レイヴァーは武器を抜き、ソーマと対峙する。


2度目の戦いが、今から始まる。


第32章 完




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第32章まで読んで頂きありがとうございました。


王国の近くでは、未確認のモンスターが暴れており、これをなんとか討伐。

中には、生き絶えたエルフがゾンビのように襲いかかる。

そして、謁見の間に着くとメイリンとソーマの姿が。

ソーマとレイヴァーの戦いは、これからだ。


ソーマとの2度目の戦いが!

エルフ回も大詰めか!?

レイヴァー応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!


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