第134話 協力要請

スタッ、スタッ。

クロウとアーシェもミリアの家へ辿り着く。


ガチャッ。

ドアを開けると、


「来たか、残りのレイヴァー。人手が少し欠けていてな、医務室に人はいなかったのではないか?」

「そうだったよ、だから俺が治療した。というより、人手が足りてないってどう言うことだ?」

「この町も、モンスターの退治で出払っているんだ。最近この近くも荒れてしまったからな。」

「どういうこと?私たちが来た時には、そんな多くのモンスターはいなかったわよ。」


ズザッ。

テーブルの上にマップが広げられる。


「この近くのマップだ、サラミスはここ、そして、多くの同胞が退治に向かっているのがこの森だ。」

「話を聞いた感じ、サリア達が来るまでにモンスターが暴れ回ってるみたいなの。サリア達も一度戦った、森の騎士、ブラックマンティスが。」

「ブラックマンティスって、ナウサの森にいたあのモンスターか?」

「そう、それが今暴れ出してしまってるみたいなの。原因は分からないし、町も襲われてる。だから、サリア達がきた時も警戒してたからさっきみたいになってしまったって。」

「けど、僕は一つ許せないことがある。不幸の姫アンラックプリンセスだからって射ったエルフは、確実にサリアリットを殺そうとしていた。何故そんなことをした?今回の暴走の主犯だとでも思ったのか?」


スーッ。

少し冷たい、嫌な風が部屋の中を流れる。


「それは、そこの魔族の女が言った通りだ。私たちは、考えることを怠っていた、怖かったんだ。真実に迫ることが、自分を苦しめるんじゃないかって。」

「なんでそうなる?真実を知らなくちゃ、対策だって打てない。じゃないと、出てくるモンスターを倒して犠牲も出てを繰り返す、最悪のパターンに入るぞ。」

「それでもだ!長年全ての災は、サリアリット・アルテミスのせいだとされてきた!それを、私たちの心の支えにしていた、そしたらターゲットが目の前に現れた、君ならどうする?」

「決まってんだろ、そいつを問い詰めるね。殺しちまったら、俺は、どんなことでも、たとえ自分が辛い現実でも受け止める、だから真実を知りたい。」


グッ。

ミリアの手に力がこもる。


「綺麗事だな、自分が傷つくことを率先して手にしようとするバカがどこにいる!どんな生き物も、保身のために全ての力を使うのが定めなんだよ!!」

「それはお前が勝手に決めつけた考えだ!他のやつにその考えを押し付けるんじゃねえよ!」

「うっ、若造が!長く生きたものにしかわからない苦しみがあるんだよ!たかが数十年しか生きてないくせにーー。」

「生きた年数なんて関係ないよ!クロくんも、アーちゃんも、ノエルくんも、そしてサリアも、真実を知るためにこれまで旅をしてきた。もちろん、手に入れた情報は良いものばかりじゃなかった、けど、

「……くそっ、変な奴らを招いてしまったな。なら、一つ証明してきてくれるか、ブラックマンティスが暴れている理由を。」


ギリッ。

自分を否定され、苛立ちを含んだ視線がレイヴァーに向けられる。


「君も、なかなかふざけたこと言ってるのわかってるかい?こっちは、何も争う気がなくテーベに入った。けれど、君らは何の躊躇いもなくサリアリットを貫こうとした、君の要求だけを飲むのは、そっちに都合が良すぎないかい?」

「ならば、お前達は何を求める。」

「そうだね、アンジュ王女への謁見を許可する手続きをしてもらえるかい?僕らの目的は、ソーマを調べること、そしてアンジュ様にサリアリットのことを伝えることだからね。」

「……分かった、本当に解決できるのであればなんとかしよう。だが、失敗したらお前達はテーベを荒らす犯罪者として排除する。私たちの過去からの教えも、全て捨てるのは難しいからな。」


レイヴァーは顔を見合い、軽く頷く。


「いいぜ、ブラックマンティスの暴走の原因を探ってやるよ。俺たちの力ってのを見せられるし、もしかしたら俺たちの脅威になるかもしれねえ、だけど、そっちも約束は守れよ。」

「ああ、解決を確認次第、手続きを進めよう。」

「暴れてる場所はここだけなの?他の場所もあれば教えてもらえる?」

「いいやここだけだ、今まではもっと遠い町の方だったんだが数日前にサラミスの近くにも現れたんだ。期待せずに待っているよ、レイヴァー。」


ガチャンッ。

レイヴァーは外に出る。


「さてと、ハイリスクハイリターンだな、まずは今暴れてるって言う場所に向かうか、もしかしたらソーマが関わってる可能性もあるし。」

「そうだね、それとごめんね、アーちゃん。サリアのせいで、綺麗な手に傷を。」

「何言ってるの、このくらいの傷でサリーを守れるなら安いものよ。まあ、他の2人だったらこんなことはしないでしょうけど。」

「アーシェより俺とノエルの方がか弱いと思うんだけどな。」

「あっ??」


アーシェの怒りの眼差しがクロウに突き刺さる。


「さあて、早く行こうぜ!」

「クロウ、後でお説教ね。」

「あははっ、いつも通りのサリア達って感じだね!行こう!」

「いつも通り過ぎて僕は少し不安だよ。」


スタタタタッ。

レイヴァーはブラックマンティスの発生源にまで向かった。

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